株主総会議事録、取締役会議事録を電子化するためには
法務


この記事の目次

1.電子署名・電子証明書とは

「電子署名」とは電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)第2条第1項で「デジタル情報(電磁的記録に記録することができる情報)について行われる措置」であって、「①当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること」および「②当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること」のいずれにも該当するものとされています。

「電子署名」「電子証明書」と聞いて、すぐに思いつくのは、マイナンバーカードに格納されている個人の「署名用電子証明書」ではないでしょうか。
確定申告をイータックスで申告した場合、マイナンバーカードを使って電子署名をし、送信した経験のある方も多いのではないかと思います。
電子署名の種類は発行者、作成者によって違います。
マイナンバーカードによる公的個人認証であれば、地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律に基づいて、地方公共団体情報システム機構が発行し、市区町村が交付します。

ICカードに「氏名」「性別」「生年月日」「住所」の情報が格納され、ICカードリーダライタを使用して署名します。
イータックスによる確定申告であれば、スマートフォンをICカードリーダライタに代替することが出来ます。

また、法務省が運営する商業登記認証局発行の「商業登記電子証明書」も、会社・法人の代表者の電子証明書として利用されています。 登記された会社・法人は、その本店(主たる事務所)の所在地を管轄する法務局へ電子証明書の発行申請をすることができます。 インターネット経由でダウンロードすることにより「ファイル形式」で取得できます。

格納されている情報は「商号」「本店」「代表者の資格」「代表者の氏名」「会社法人等番号」「管轄登記所」になります。 その他、電子署名法第3条第3項の「特定認証業務」を行う民間事業者の電子証明書があります。
法務省の商業・法人登記のオンライン申請についてのホームページを見ると、商業登記申請に使用できる電子証明書が列挙されています。

・商業登記電子証明書
・公的個人認証サービス電子証明書
・特定認証業務電子証明書
・官職証明書
・指定公証人電子証明書


「特定認証業務電子証明書」については、「電子署名を行った者を確認することができるものとして法務大臣の定める電子証明書」であり、掲載されていない民間事業者のサービスについては登記に使用できないことになります。

2.従来型の書面の議事録作成方法はどうだったか

株主総会議事録、取締役会議事録は会社法上作成が義務付けられている書類であり、10年間本店に備え置かなければなりません。
定款の変更や役員の重任など、登記申請が必要な際には、法務局へも提出します。
株主総会議事録については、会社法上署名捺印の義務はありませんが、大多数の会社は定款で「議長及び出席取締役」などに署名義務を定めています。

取締役会議事録については、「書面で作成されているとき」は、出席取締役及び監査役はこれに「署名し、又は記名押印」しなければなりません。
「電磁的記録で作成されている場合」は「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置」をとらなければならず、これは「電子署名」です。

3.議事録を電子化するためには

それでは、株主総会議事録、取締役会議事録を電磁的記録で作成し、備置きや登記申請の際に有効な方法で「電子署名」するためにはどうすれば良いでしょうか。

まず考えられるのは、役員全員がICカードリーダライタを用いてマイナンバーカードで電子署名を行う方法です。
また、代表取締役は法務局発行の「商業登記電子証明書」、他の役員は「特定認証業務電子証明書」を取得し、ファイル形式で署名を行うことも考えられます。

第3の方法として、代表取締役は「商業登記電子証明書」、他の役員は法務省のホームページに「その他」として記載されているクラウド型のサービスを利用し、代表者以外の電子証明書を不要とするやり方です。

注意すべきは、書面の署名と電子署名が混在している場合は、どちらの方法でも認められないことです。


4.まとめ

議事録だけでなく、契約書や帳簿、領収書などの様々な会社の文書は、電子化することでメリットがあると言われています。
印紙代やハンコ集めに掛かっていた時間・手間の軽減、テレワークの普及やフローの見直しに伴う効率性の向上などと同じ意味合いで、電子署名による電子化を考えてみませんか?

記事のキーワード*クリックすると関連記事が表示されます

メルマガ登録(毎週水曜配信)

SHARES LABの最新情報に加え、
経営に役立つ法制度の改正時事情報などをお送りします。