新型コロナウイルス感染症の影響で売上が減少してしまった中小法人・個人事業主向けに「事業復活支援金」の申請が開始されています。前回、同様の給付金として「持続化給付金」が展開されましたが、不正受給が相次いだことから、今回必要書類や手続きフローが厳格化されています。
本稿では、必要書類や手続きフローについて分かりやすく解説していきます。
- 1.事業復活支援金の概要
- 2.申請期間・給付上限額
- 3.給付要件
- 4.給付額の計算と注意点
- 5.手続きのフロー(全体)
- 6.「事前確認」手続き
- 7.必要な書類と注意点
- 8.特例による申請
- 9.自治体による上乗せ支援(参考)
- 10.まとめ
1.事業復活支援金の概要
事業復活支援金は、新型コロナウイルス感染症の影響で事業売上が減少してしまった中小法人・個人事業主に対して現金を支給する制度です。補助金と異なり、要件に該当する方で期限内に申請された方は基本的に給付がされるものになります。申請手続きはオンライン(インターネット経由での申請)となっており、必要書類をPDFや画像データにして添付する必要があります。なお、申請サポート会場では補助スタッフによるオンライン申請のサポートを受けることができます。
2.申請期間・給付上限額
事業復活支援金の申請期間は2022年1月31日から2022年5月31日までとされています。そして給付上限額は売上減少率に応じて次の表のとおりになっています。※中小法人の年間売上高は後述する基準月を含む事業年度の売上高を指します。
3.給付要件
事業復活支援金の主な給付要件は次のとおりです。・「自らの事業判断によらずに」とは、自主的な休業や時短営業が影響しての売上減少は給付対象外となります。
・「新型コロナウイルス感染症の影響」とは、売上減少がコロナ感染症と無関係な場合は給付対象外になることを指します。なお、本支援金の申請時には、次の9つの理由から該当する影響を選択することが必要になります。(この9つの理由のどれにも該当しない場合はコロナ感染症の影響による売り上げ減少ではないという判断になります)
今回売上減少の対象月は2021年11月~2022年3月となっており、オミクロン株の急拡大による影響を受け、今年1月、2月の事業売上が減少してしまっているケースも多いかと思われます。
・本支援金は事業の売上が減少してしまった方に対する支援金となっています。そのため、サラリーマン等の給与が減少したといったケースは給付対象外となります。
・なお、ダブルワーク等で雇用による給与収入がありつつ、個人事業主として事業売上がある場合も、本支援金の対象となります。
4.給付額の計算と注意点
事業復活支援金の給付額の基本的な計算方法をご説明します。まずは、次の表のように、11月~3月までの各売上を入力していきましょう。
用語の定義
・「基準期間」表のX・Y・Zの3つの中からどれか1つの期間を選択・「基準月」基準期間の中から、売上減少率の比較を行う月を選択
・「対象月」2021年11月~2022年3月の5カ月間の中で、基準月と同じ月を選択
売上減少率の確認
「基準月の売上」→「対象月の売上」の減少割合を確認します。表の例)205,000÷512,000=0.40(40%) →減少割合は60%(1-0.40)
この売上減少率によって、給付要件を満たすか、そして給付上限額が決まります。
給付額の計算式
※例は上の表のサンプル金額をもとに計算基準期間、基準月(対象月)の選択によって計算結果が変わるため、表にまとめた上で期間・月を選択するのが給付額算定でのコツとなります。
留意点として、自治体などから休業や時短営業の協力金を支給されている場合や、持続化給付金を支給されている場合は、売上額の計算が有利にならないように加算または控除をする必要があります。
また、白色申告の場合は毎月の売上額が確定申告書類から判明しませんので、年間事業売上合計を12で割り、平均月額を算出して上記の表に記入して計算します。
なお、2020年・2021年に開業された方も後述する新規開業特例を用いることで、本支援金の対象となる可能性がありますが、その場合計算方法は上記基本的な計算式と異なります。(詳細は申請要項に記載がされています)
5.手続きのフロー(全体)
事業復活支援金の手続きの全体フローは次の表のとおりになります。なお、申請内容に不備があった場合は、事務局より登録した連絡用メールアドレス宛に不備連絡が入り、指示に従って修正申請をする必要があります。
6.「事前確認」手続き
事前確認手続きは、前回施策の「持続化給付金」にて不正受給が相次いだことを踏まえて実施されることになっています。事前確認手続きでは、次の5項目の確認を主に行っています。
①本人確認
②形式的に書類が揃っているかの確認(実質的な審査は行いません)
③事業を実施しているかの確認
④コロナ感染症の影響を受けているかの確認
⑤給付要件などを理解されているかの確認
≪留意点≫
事前確認では、支援金手続きの審査を行うわけではありませんので、事前確認が完了したからといって確実に支援金が支給されるというものではありません。
事前確認を実施する機関として、金融機関や商工会/商工会議所、 税理士、行政書士などの中から約55,000団体が国に登録されています。事業復活支援金の申請をされる方は、事前確認登録機関に対して事前確認の予約をしていただき、事前確認手続きを行う必要があります。
※参考:事前確認機関の検索
なお、一時支援金または月次支援金を受給したことがある方は、その時に事前確認手続き行っているため、今回の事業復活支援金での事前確認手続きは不要です。
そして、事前確認機関に登録されている機関と「継続支援関係」にある場合は、事前確認手続きの中の確認項目が一部省略されます。
≪継続支援関係とは≫
事前確認登録機関と事業者(法人または個人事業主)との間で継続的な取引関係があることを指します。
具体的な例としては、
・事前確認登録機関である税理士と顧問契約を結んでいる
・事前確認登録機関である商工会に加入している会員である
・事前確認登録機関である金融機関から事業性融資を受けている
などが規定されています。
上記具体例に当てはまる事前確認登録機関がある場合は、まずは当該機関で事前確認手続きを予約いただくことをお勧めします。 (継続支援関係がある場合、帳簿書類の有無確認を省略出来たり、電話での質疑応答での確認で済むなど事前確認手続きが簡略化できます)
継続支援関係の機関がない方は、事業復活支援金ホームページの事前確認機関検索から登録機関に対して直接予約を取る必要があります。
事前確認手続きの方法は「対面」と「Web会議形式」が認められており、Web会議を活用することにより、より柔軟な手続きを行うことが可能になっています。(Web会議形式を対応可としている機関に限ります。)
7.必要な書類と注意点
事業復活支援金の申請や事前確認の際に必要となる主な書類と注意点を解説します。留意点
①本人確認書類・マイナンバーカードは表面のみ添付し、裏面の個人番号は添付不要です。
②確定申告書類の控え
・確定申告書類の控えは基準期間によって必要な年度が異なります。
・確定申告書類の控えには、税務署の収受日印が押印されているか、受付番号が記載されている必要があります。
(e-TaxやID/パスワード方式によってインターネット経由で確定申告をされた方は、受付番号が確定申告書控えのページ右上に記載されているか、受信通知画面に受付番号が記載されています。)
郵送によって確定申告書を提出している場合、市役所等の特設窓口で確定申告書を提出している場合などで、収受日付印の押印も受付番号の記載もどちらもないケースがあります。その場合は、確定申告書を提出している税務署にて「納税証明書(その2 所得金額用)」を取得する必要があります。
(税務署で発行される納税証明書は数種類あり、必要なのは「その2 所得金額用」になります。また、市役所で発行される納税証明書は市税等の納税証明のため、事業所得の金額が判明せず利用できない可能性が高いため、税務署にて取得するようにしてください)
③売上台帳
④売上にかかる通帳
⑥売上にかかる領収書等
・⑥の領収書に該当する1案件の入金履歴(④)及び売上台帳(③)の記載の紐づきが確認できるように、それぞれの該当箇所にラインマーカーを必ず引くようにしてください。(ラインマーカーがない場合、申請不備となります)
・ラインマーカーで引いた1取引分の売上額の数字が一致しない正当な理由がある場合は、その理由を付箋等を用いて簡単に記載してください。
・現金取引をしており、通帳への売上入金がない場合は、事業復活支援金ホームページから「基準月の売上に係る請求書・領収書等又は通帳等の提出が不可能であることの申立書」を印刷して、通帳が提出できない理由を記入し、通帳の代わりに提出してください。
事業復活支援金の申請後には事務局による審査があります。膨大な量の申請の中で、審査員の方がスムーズに審査を行い、なるべく早く支援金の支給が行われるよう、審査員にとって分かりやすい申請をするよう心がけましょう。
8.特例による申請
事業復活支援金の申請に関して、2022年2月18日から特例申請の受付が開始されています。表の他にも、事業承継特例や法人成り特例、罹災特例などが設けられています。
2019年以降に開業したものの、今冬のオミクロン株の急拡大を受け売上減少の影響が生じた事業者の方も支援金が給付される可能性があります。
また、既に事業復活支援金の申請が終わっている事業者の方で、当初の対象月の売上減少率が30%以上50%未満だったが、その後の対象月で50%以上の売上減少が発生してしまい、給付算定額が高くなる方については、差額分を追加給付する申請が可能となる予定です。