通信販売における特定商取引法に基づく表記とは?注意が必要な3つのポイント
法務


ネットショップやオンラインストアなど、ECサイトを運営する上で特に注意が必要な「特定商取引法」。他社サイトのヘッダーやフッターの部分に記載があるのを見たことがあるのではないでしょうか。
通信販売や訪問販売など、特定の取引類型が特定商取引法の対象になっており、この法律に基づく表記を掲載しなければなりません。

今回は、通信販売の特定商取引法に基づく表記における注意点についてご説明します。

この記事の目次

1.表示事項は扱う商品によって変わる?

通信販売における表示事項は、必ず表示するものと、扱う商品により追加しなければならないものがあります。まずは、必ず表示するものを見ていきましょう。

a.事業者の氏名(名称)、住所、電話番号


法人・個人問わず、活動の本拠を表示する必要があります。
定めはありませんが、対応可能な時間帯を合わせて記載しておくことが望ましいです。

b.商品の価格と送料等


商品の販売価格については、各商品ページにて表示があれば省略することができます。 一方で、送料やその他消費者負担のある費用は明記しておく必要があります。
記載がない場合、表示価格に送料が含まれると推定されますので、トラブルの原因になります。

c.支払方法・支払時期、申込の有効期限


選択可能なすべての支払い方法と、その時期を表示します。

d.商品やサービスの提供、権利移転の時期


注文時から消費者が利益をうけるまでに要する期間・期限を表示ます。

e.申込の撤回、契約解除に関する規定・特約


通信販売にはクーリングオフの適用がありませんので、事業者が別途特約を設けることができます。特約については厳密にガイドラインが定められていますので、次章でご紹介します。

以上が、すべての通信販売における表示事項です。
続いて、取り扱う商品に応じて記載しなければならない特別表示事項をご説明します。

f.(電子情報処理組織を利用する場合)代表者または責任者の氏名

g.(ソフトウェアを販売する場合)動作環境

h.(反復継続して売買契約を結ぶ場合)その販売条件

i.(限定商品等を取扱う場合)その販売条件

j.(カタログ販売を行う場合)カタログの価格

k.(メールで公告をする場合)メールアドレス


以上の特別表示事項は、該当する場合例外なく省略できませんので注意しましょう。 記載ヌケ・モレがあった場合は罰則の対象となります。

2.返品特約を定める場合の注意点

返品特約の表示に関するガイドラインの中で、「顧客にとつて見やすい箇所において明瞭に判読できるように表示する方法その他顧客にとつて容易に認識することができるよう表示すること」と定められています。
従って、消費者トラブルや行政処分等を避けるために以下の対策を取る必要があります。

a.表示箇所・表示サイズの工夫

商品ページや申込画面、別途個別ページを設けるなどして、容易に消費者の目に留める工夫をする必要があります。また、表示サイズについては12ポイント以上の文字と例が挙げられているため、これを下回る文字サイズを使用する際は色文字・太文字等を使用するなどして表示しましょう。

b.返品特約であることの明示

商品ページ等に記載する場合、それが返品特約に係るものであることが明確に区別できる必要があります。したがって、「返品に関する事項」等の表題を掲げたうえで記載するなどの対策が求められます。

c.商品ごとに異なる特性の明確化

商品ごとに異なる返品特約を設ける場合は、それらを明確に区別して表示する必要があります。「下着類、飲食料品等、購入後価値が極めて低下するものは返品不可」など、対象商品の外延が不明瞭であるものは不適切であり、消費者トラブルを招く恐れがあります。
明確化の具体例:飲食料品(サプリメントを除く)は返品不可 など

d.初期不良など契約内容不適合の特約

種類又は品質に関して契約の内容に適合していない場合にあっても責任を負わない等の特約をする場合に限り、明示することが必要です。記載がない場合は、返品特約によるのではなく、民法・商法の一般的原則によって解されることになります。
返品に応じる場合でも、盛り込んでおくとよいでしょう。

3.前払式通信販売の通知について

商品やサービスを提供する前に、消費者から代金の全部または一部を受ける通信販売を「前払式通信販売」といいます。特定商取引法では、これに該当する事業者に承諾等の通知義務を求めています。
通知の内容や方法が厳密に定められているため、申込完了メールでは不足している場合が多く、場合によっては行政処分の対象となりますので注意が必要です。

a.通知の内容

・申込みの承諾の有無
・代金受領前に申込みの承諾の有無を通知しているときには、その旨
・事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
・受領した金銭の額
・金銭を受領した年月日
・申し込みを受けた商品とその数量など
・承諾するときには、商品・権利の移転時期


b.通知の方法

原則として、書面での通知が求められます。
メールでの通知を行う場合は、

①あらかじめ消費者に対して手段と内容を示す
②その承諾を得る

ことが必要です。

c.通知の時期

この通知は“遅滞なく”行わなければなりません。
通知の手段により解釈に差が生じますが、2~5営業日以内に実施されていれば問題ないでしょう。
近年も、前払式通信販売における通知の実施がなされていない事業者が散見されますので、改めて確認する必要があります。

まとめ

通信販売は事業者と消費者が顔を合わせずに契約が成立する取引形態であることから、厳格な制限が設けられています。トラブルなく運営を続けるために、そして安心して消費者がサービスの提供を受けられるようにするために、特定商取引法に基づく表記について改めて確認してみましょう。
また、特約を定める場合には専門家に相談するか、作成後にリーガルチェックを受けることをおすすめします。お気軽に弊所までお問い合わせください。

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