技術顧問契約書でチェックすべき3つのポイント
法務


近年、競合他社との差別化を図るため、社外の「技術顧問」を活用することによって技術力不足やシステム上の課題解決を求める中小企業やベンチャー企業が増加しています。

成功企業のノウハウや、自社の手薄な分野の補完が期待できる技術顧問契約ですが、有効な契約書式や一般的なひな形が未だ確立していないため、自社で契約書を用意するのが難しいという問題が挙げられます。もちろん、顧問契約を結ぶ技術者にとっても、その契約内容は重要です。
今回は、技術顧問契約書の作成・確認するときのポイントについてご紹介します。

この記事の目次

1.顧問契約の報酬料金と形態

顧問契約によるトラブルで最も多いのが、報酬に関するものです。
業種やスキル、形態により相場は大きく変動しますので、今回は着目するポイントをご紹介します。

a.報酬の形態

顧問契約の報酬形態として、以下の3つが用いられます。

①定額報酬制


月ごとに定額報酬が定められている形態です。中~長期にわたって成果を求める場合に用いられます。士業との顧問契約も、この形態が主となっています。報酬額の相場が見えやすいため、様々な顧問契約と比較して検討することができるのが双方にとってのメリットでしょう。

②時間契約型報酬制


いわゆる時給制の顧問契約です。プロジェクト単位での契約や、一部のマネジメントを担ってもらう場合に利用されます。定額報酬制とは異なり、技術者のスキルや経歴により大きく変動することが特徴です。経営コンサルなど技術者が実際に事業所に出向く形での契約に向いています。

③成果報酬制


顧問契約にあたり、担当した業務やプロジェクトで成果が得られた場合にのみ報酬が発生する形態です。固定報酬ではなく、売上額の数%などの変動値を用いるのが通常です。“成果”の基準について事前に時間をかけて協議する必要がありますし、契約書の内容について多重な解釈が生まれないようにする必要があるなど、十分な準備が必要になります。

b.業務範囲の確定と追加料金

業務範囲について、厳格に定めておく必要があります。範囲について両者に解釈のズレが生じると、トラブルの原因になります。プロジェクト単位での契約の場合、その成果に大きな影響を与えかねません。

また、確定した業務範囲外の要素についての追加料金も相談しておく必要があります。これは、あらかじめ依頼をする予定がないものについても定めておきましょう。契約後に報酬の折り合いがつかない、となってしまうことは絶対に避けなければなりません。

2.責任の明確化と契約違反の措置

契約書の目的は、契約内容の明文化だけではありません。契約後の紛争を防止することも、契約書作成の目的の一つです。そのために、責任を明確化することが必要です。

a.責任の明確化

顧問の責任範囲を明確に示しましょう。企業にとって、経営やプロジェクトを左右する一部の権限を顧問に委ねるわけですから、相応の責任(リスク)を負うべきであると考えるのもおかしな話ではありません。

一方で技術者にとって、コンサルや相談業務自体に有益性があるのだから、それ以上の責任は負う必要がないと考える人も多いでしょう。
この点については、報酬額と同様に両者が歩み寄るべきポイントであり、一方の意見に偏るべきものではありません。事前に協議を経た上で策定をすることが大切です。

b.契約違反の措置

顧問の契約範囲である業務の遂行を怠った場合や、報酬の滞納が続いた場合など、両者の目線から契約違反の措置について記載しましょう。
その際、損害賠償の予約や契約の解除についても十分に考慮の上で作成します。
また、通常の契約書同様に裁判管轄についても記載しましょう。

3.顧問契約の期間と終了

a.契約期間

プロジェクト単位での顧問契約を締結する場合、「一定の事業の完了に必要な期間を定める契約」に該当するかどうかという問題が生じます。
結論から申し上げますと、社内プロジェクト等では有期的事業に該当せず、3年(5年)の期間制限を受けることになります。
従って、「プロジェクト完了まで」と終期を不明確にすることはできず、1年単位など、期間を設けて顧問契約を結ぶ必要があります。これは時間契約型報酬制や成果報酬制であっても同様です。

b.契約の終了

1年契約など、その期間が長期にわたるものについては、契約の中途解約や清算方法についても定めておきましょう。

企業側では、経営不振によって支払い不能に陥ったときや廃業を余儀なくされたときなど、顧問契約の残存期間によっては費用負担が大きくなることも考えられます。また、技術者も人間ですから、体調不良などにより契約内容の履行ができなくなることもあるでしょう。そうした場合の契約の中途解約や残余額の清算についての取り決めはあらかじめ行っておきましょう。

4.まとめ

顧問契約は、企業にとっても技術者にとってもメリットの大きい契約です。その一方で、上記のようなデメリットや契約内容の危うさなどデメリットの側面があることを理解しておきましょう。
顧問契約の利点を最大限享受するためには、契約書作成の専門家に相談すると良いでしょう。

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