この記事の目次
はじめに
2021年に株式市場に新規上場を認められた会社は125社と、14年ぶりに100社を超えました。上場審査は、一回限りの審査で合否が判定されるというものではなく、上場基準に達しない場合には、是正期間が設けられ、一定期間、審査が継続されることになります。
企業犯罪や不適切会計等が多発していることから、上場基準は、年々厳格化傾向にあり、2018年度は、254社が審査されたうち、承認が90社、不承認が46社、その他が継続審査となりました。
そこで、今回は、株式市場に上場するために審査される項目にはどのようなものがあるか詳しくみていきたいと思います。
上場の審査項目にはどのようなものがあるのでしょうか。
上場の審査項目は大きく以下の5つに分けることができます。 もともと上場審査は、投資家に不測の損失が生じることを防ぐために行われます。 そのため、各要件は、いずれも投資家を保護する目的で課される要件となります。
①企業の継続性・修正性に関する基準
②企業経営の健全性
③コーポレート・ガバナンス・内部統制の有効性
④情報開示の適正性
⑤その他投資家保護に必要な事項
①企業の継続性及び収益性
企業は、継続的に事業を営み、かつ、経営成績の見通しが良好なものであることが要求されています。株式会社は、永続的に事業を行うことを想定しています。
上場後に、すぐに事業が廃止されたり、業績が悪化すると、投資家に不測の損失を与えるため、要求されています。
これまでの企業の沿革や、ビジネスモデルの合法性、サービス、商品の特徴、各期の業績、利益計画などが審査の対象となります。
重要になるのが、中期(3〜5年)の利益計画です。
計画の内容が、目標的なものではなく、数値的な根拠に基づいて作成されている必要があります。また、実績との差異がでた場合には、差異を分析し、適宜計画を修正していく管理体制が求められます。
②企業経営の健全性
企業が事業を公正かつ忠実に遂行していることが求められます。上場されると、一般投資家の資金が企業に流入しますので、企業の資金は、一般投資家である株主の資金という側面をもちます。 そのため、資金が社外や一部の株主に流出することを防ぎ、経営陣に対する監視を強化する目的で、役員の属性、能力、独立性等が審査されます。
③企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性
コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され機能していることが求められます。コーポレート・ガバナンス(企業統治)とは、役員による不正を防ぐための役員相互の監視監督体制をいいます。
内部管理体制とは、事業が効率的に運営をできる体制や、従業員によるミスや不正を防ぐための体制を意味し、体制が有効に機能しているかどうかが審査の対象となります。
近年では、過労死自殺やハラスメント行為が社会問題化していることから、審査では、特に労務管理が重要視されるようになっています。
④企業内容等の開示の適正性
企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあることが求められます。投資家は、公開された企業の日々の業績を分析し、将来の業績を予想して株式取引を行います。
そのため、企業の業績情報は、迅速かつ正確に公開される必要があります。
日々の取引が適切なタイミングで、正確に帳簿に記載され、月次決算、年次決算を企業内部で行う体制の有無、能力について審査されることになります。
⑤その他公益又は投資者保護の観点から取引所が必要と認める事項
事業運営に重大な影響を与える係争又は紛争を抱えていないことが求められます。企業が訴訟を起こされている場合には、解決するまで承認が見送られることがあります。実際に多いのが、未払い残業代の請求に関する訴訟です。
未払い残業代は、過去2年分を請求することができますし多くの従業員に対して支払う必要がでてきます。そのため、一時的に多額の資金が流出することになり、企業の財務に影響を与え、業績悪化の一因となります。
まとめ
今回は、株式上場に関する基準の内容の概要をまとめました。上場審査では、どのような目的からどのような審査が行われるかという点が分かったかと思います。
上場審査は、会社の現在に至るまでの成績表をつけるようなものであると考えてください。
将来にわたり、企業が業績を拡大していくためには上場審査で求められる基準は最低限の基準を定めたものと考えることによって、よりスピード感をもって発展していくことにつながるでしょう。
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