取引先に迷惑をかけずに再生・廃業する「私的整理」とは?~中小企業の事業再生等に関するガイドラインの公表~
法務


この記事の目次

1. 私的整理のメリットは「取引先に迷惑をかけないで済む」こと

コロナ禍やそれ以外の環境変化で事業が立ち行かないという会社様において、家族、従業員、取引先のことを考えると、破産手続が頭をよぎるということもあろうかと思います。経営者という立場は、立ち行かなくなった際には孤独で大変かと思います。

しかし、事業が上手くいかなかったとしても、金融機関の理解を得て、私的整理手続を用いれば、取引先に迷惑をかけることなく、会社は破産せずに、また、経営者保証ガイドラインを用いて、経営者も自己破産せずに、再チャレンジすることが可能です。

特に、経営者の皆様にとって、「取引先に迷惑をかけないで済む」ことは重要ですね。
そのような場合、ぜひ、私的整理をご検討ください。

2. 中小企業の事業再生等に関するガイドラインの公表について

2022年3月4日、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」が公表されました。
経営改善に取組む中小企業者が難局を乗り切り、持続的成長に向けて踏み出していくためには、債務者である中小企業者と債権者である金融機関等が、お互いの立場をよく理解し、共通の認識の下で、一体となって事業再生等に向けた取組みを進めていくことが重要という趣旨で、ガイドラインの形で示されたものです。

特に、第三部には私的整理手続の在り方について具体的な定めがおかれたことは大きなポイントと考えられます。以下、当職が経験した私的整理手続の事例をご紹介いたします。

3.事例

以下、当職が経験した私的整理の事例の一部をご紹介します。

(1)小型機械を製作する会社について、長年、リスケジュールを続けて、何とか耐え忍びながら事業を継続してきたところ、コロナ禍で計画通りに売り上げが伸びず、一時は民事再生や破産を検討しましたが、スポンサーによる支援を受けて、事業を譲渡し、私的整理によって、金融機関と協議の上で、会社も破産せず、また、個人も破産せず、しかもご自宅とともに、破産した場合よりも多くの財産を残すことができました。

(2)小さな印刷会社がありましたが、出版不況の折に、もともと経営改善を行いながら、金融機関には利息だけを支払っていた中で、コロナ禍も重なり、資金繰りが厳しくなったしまったことから、会社の事業を譲渡し、私的整理によって、金融機関と協議の上、会社も破産せず、個人も破産せずに済みました。この方も経営者保証ガイドラインに基づいて、ご自宅を残すことができました。

(3)プラスチック成型の製作を事業とする会社についても、同様に、資金繰りが思わしくなく、金融機関に相談して、経営改善計画に基づいて、利息だけの返済を続けていましたところ、コロナ禍による環境変化に耐えられず、私的整理を検討しました。幸いにも、スポンサーが見つかり、会社の事業を譲渡し、私的整理により、金融機関と協議・同意を頂き、会社も破産せず、個人も破産せずに、ご自宅を残すことができ、ご家族とともに同様の生活を続けることができています。

4.最後に

事業が立ち行かなくなった場合も、すぐに破産と考えるのではなく、「私的整理」という選択肢を思い出して下さい。
冒頭にも記載しましたが、新しいガイドラインもでき、私的整理は法的整理の前に検討すべき重要な選択肢です。また、経営者保証ガイドラインを用いて、経営者も自己破産しない方法もありますので、ぜひご検討ください。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。

※関連記事:
『会社・個人ともに破産せずに、事業もご自宅も残す方法をご存じでしょうか?』
『【廃業時も破産を避けられる!】~廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方の公表~』

記事のキーワード*クリックすると関連記事が表示されます

メルマガ登録(毎週水曜配信)

SHARES LABの最新情報に加え、
経営に役立つ法制度の改正時事情報などをお送りします。