内部統制の意義と具体的な施策について
法務

この記事の目次

1.内部統制の意義

内部統制とは、適法かつ効率的な事業運営を行うことを目的として、組織全体が遵守すべき社内ルールや仕組みのことをいいます。
内部統制ときくと、大企業が行うべきものと捉えられる方が多いですが、中小企業、ベンチャー企業においても以下の理由から重要といえます。

中小企業やベンチャー企業の場合、一部の従業員に業務が集中するため、架空取引、簿外取引、横領等の不正行為が生まれやすい環境にあります。


中小企業やベンチャー企業の場合、慢性的に人材不足の状況にあることが通常でしょう。



ただ、人員が充分ではないにしても、社内規程を作成し相互監視することにより、効果的な対策を行うことも可能です。
内部統制が構築されていれば、不正が防止できるというだけでなく、企業として信用度が増すことにつながります。そのため、融資や出資を受ける際にも有利に働くことが期待できるでしょう。
今回は、内部統制を実現するために、具体的に何を行うべきかについて紹介したいと思います。

2.行うべき具体的な施策

内部統制を実現するために、主に下記のような社内体制を整備して、これを運用・監視していく必要があります。
各体制の構築には、少なくとも担当人員の確保・組織化(指揮系統の整備)、運用ルール(社内規程)の整備等が必要となります。
以下、各項目について簡単に紹介したいと思います。

①経営管理体制(取締役会の開催・議事録作成)

中小企業やベンチャー企業の場合には、そもそも取締役会を開催していないという企業も珍しくありません。しかし、役員会議は開催していることは多いでしょう。そのような役員会議もいくつかの手続きを経ることで取締役会として扱うことが可能です。具体的には、招集通知の送付、採決、議事録作成を行うことになります。

取締役会を開催することにより、役員相互の情報共有・相互監視が可能になりますので、事業運営にとってもメリットはありますし、対外的な信用向上にもつながります。

②稟議制度(業務分掌規程・稟議規程)

業務分掌規程および稟議規程を設けて、各社員の権限を明確にすることで、責任の範囲を明確にすることが可能です。権限を超える職務を行う必要がある場合に備えて稟議規程を整備し、規程に従った運用を行うことで、不正行為が行われにくい環境となります。
今日では稟議に関するフローは処理速度向上のため電子化すべき業務といえます。そのため電子化に向けた体制整備が必要となります。

③業務管理(業務フロー・マニュアル・業務規程の作成)

まずは社内の業務フローチャートを作成し、各業務特有のリスクを可視化することが重要です。リスクには、意図的な不正、不注意によるミス、盗難紛失、情報漏洩など多種多様なものが存在します。すべてのリスクを100%回避することは現実的ではありませんので、発生頻度や影響度を加味して、優先度をつけて業務規程やマニュアルにより防止策を講じる必要があります。

④予実管理(予算策定・実績との比較分析)

予算は、中長期の経営計画・事業計画に基づいて策定する必要があります。単なる目標としての金額ではなく、市場環境、法的規制、想定可能なリスク要因、ビジネスモデルなどを踏まえ、達成可能で合理的な計画でなければなりません。

また、月次で予算・実績の対比を行い、乖離が大きい場合(10~30%以上)には差異発生要因を分析し、改善策を検討・実施する、計画・予算の見直し要否を検討するなどの対応を行う必要があります。このような作業を繰り返すことにより、精度の高い予算を策定できるようになります。

⑤決算制度(経理)

今日では、ビジネス環境が変化するスピードが早く、月次決算を迅速に行い、分析結果をすぐに月次予算に反映させることが重要となります。業務規程等を整備し、人材教育が重要となります。

⑥内部監査(運用状況の監視)

内部監査とは、社内の業務フローの自主点検が主な目的になります。
業務規程等が遵守されているかどうかや、効率的なフローとなっているかどうかを定期的にチェックして、改善策を検討します。
内部監査は、部門以外の従業員が行うことが多く、そのため、担当部門とは異なる視点で点検・チェックすることになります。

ただ、内部監査も会社の利益に貢献しなければならないことに業務部門とは変わりはありませんので会社利益を阻害しないように運用する必要があります。

3.まとめ

有効な内部統制を構築するには、専門的な人材を育成する必要があるため、一朝一夕には行うことはできません。だからといって、外部委託やコンサルタントに丸投げするべきではありません。

まずは明確な目標や計画を立てて、少しづつ体制を構築し、実務に即して修正していく必要があります。


この作業によりノウハウが蓄積し管理体制が自然と構築されることになるはずです。

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