石綿(アスベスト)解体工事に必要な報告・届出について
法務


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なぜ、今、石綿(アスベスト)が問題となっているのか?

石綿は天然に生成した極めて細かい鉱物繊維で、熱、摩擦、酸やアルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという性質を持ち、しかも安価であるため、昭和30年頃から使用が一般化しました。「奇跡の鉱物」とも呼ばれ、工場・ビルから一般住宅まで様々な建築物に広く使用されました。しかし、石綿を吸い込んでしまうと、中皮腫や肺がんなどの健康被害が発生することが次第に明らかになってきました。

石綿を含む建材を使用して建築物を建築することは、現在においては全面的に禁止されています。しかし、昭和の時代、石綿の有害性が明らかになっていなかった時代に建築された建築物の解体工事が、令和の今になって年々増加しています。その数は令和10年頃にピークになると言われています。このような状況の中、令和2年に大気汚染防止法が改正され、石綿解体工事に対する規制がこれまで以上に強化されることになりました。

石綿解体工事の規制の目的は、解体工事に従事する作業員や現場周辺の住民などに健康上の被害を及ぼさないことにあります。そのため、石綿を空気中に飛散させないことが工事を行う上での絶対条件となります。(これは、解体工事に限らず、産業廃棄物となった後の収集運搬や処分についても同様です。)それでは、実際に必要になる手続について解説していきたいと思います。

大気汚染防止法に基づく事前手続について解説

1.事前調査

まずは、解体しようとする建築物に石綿を含む建材(特定建築材料と呼びます。)が含まれていないか、特定建築材料が含まれている場合には、それがレベル1~3のどれに該当するのかなどを調査します。この調査は解体工事の元請業者が行いますが、令和5年10月1日以降は、一定の資格を持っている人しかできなくなります。一定の資格者とは、建築物石綿含有建材調査講習を修了した者、または令和5年9月30日以前に一般社団法人日本アスベスト調査診断協会に登録された者のことです。

先日、この資格を取得された事業者(解体業者)から当事務所に問い合わせがありました。「特定建築材料を廃棄物として収集運搬するためには特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可が必要なのか」というものでした。資格を活用し、事前調査から解体、そして収集運搬までを自社でやれるようにしたいとのことでした。このように、法改正があると新たなビジネスチャンスが生まれることがあります。

2.都道府県知事への報告

解体工事の元請業者は、事前調査を行ったときは、遅滞なくその結果を都道府県知事に報告しなければなりません。この規定は令和4年4月1日から適用になっています。そして、この報告は石綿事前調査報告システムを利用して行うこととされています。報告対象となる工事は、石綿の有無によらず、以下のいずれかに該当する場合です。

1.解体部分の延べ床面積が80㎡以上の建築物の解体工事
2.請負金額が税込100万円以上の建築物の改修工事
3.請負金額が税込100万円以上の特定の工作物の解体または改修工事
4.総トン数が20トン以上の船舶(鋼製のものに限る)の解体又は改修工事


ところで、皆様はGビズIDをお持ちでしょうか。
石綿事前調査報告システムを利用するためにはGビズIDにより事前にアカウントを作成する必要があります。このシステムに限らず、今後多くの行政手続は紙ではなくオンラインでの手続に移行していきます。例えば、建設業許可申請も令和5年からのオンライン化が決まっています。GビズIDを取得することは事業者にとって必須となる時代が来ることは間違いがないことでしょう。

3.都道府県知事への作業実施の届出

事前調査の結果、レベル1、レベル2の特定建築材料が使用されている建築物であることが判明した場合、上記の報告とは別に、工事を開始する14日前までに都道府県知事への書面での届出が求められることになります。

レベル1の建材とは「吹付け石綿」のことをいい、レベル2の建材とは、「石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材」のことを指します。どちらも飛散性の強い建材なので、作業方法などに強い規制がかかることになります。

この届出は作業方法などを記載して行いますが、都道府県知事は、届出の作業方法が作業基準に適合しないと認める時は、元請業者に対して計画の変更を命じることができるとされています。
作業方法については、環境省からマニュアルが出ているのでこれを参照するとよいでしょう。

※参考:
建築物等の解体に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル

大気汚染防止法以外の法律による届出について解説

ここまでは、最近になって法改正があった大気汚染防止法に基づく手続について解説してきましたが、建築物の解体などを行う場合には他の法令に基づく手続も存在します。
労働安全衛生法、石綿障害予防規則に基づく労働基準監督署への届出と建設リサイクル法に基づく都道府県知事への届出です。

1.労働安全衛生法、石綿障害予防規則における計画届

労働安全衛生法では、建築物の解体などの工事で生じる石綿粉じんが作業環境を著しく汚染し、労働者の健康に重大な影響を及ぼすことを防止する観点から作業場内での基準などが定められています。
そして、以下の内容の作業を実施する際には、14日前までに、労働基準監督署に計画届を提出しなければなりません。

1.建築物、工作物または船舶に吹き付けられている石綿の除去、封じ込め、または囲い込みの作業
2.建築物、工作物または船舶に張り付けられている石綿が使用されている保温材、耐火被覆材等の除去、封じ込めまたは囲い込みの作業


ただし、この計画届は先に紹介した石綿事前調査報告システムを利用することで、大気汚染防止法に基づく都道府県知事への報告と同時に行うことが可能となっています。行政手続のデジタル化が少しずつ進行していることがうかがえます。

2.建設リサイクル法に基づく都道府県知事への届出

建設リサイクル法は、解体工事などでの分別解体と廃建材の再資源化を目的として、以下の工事を発注する工事発注者(施主)に対して、都道府県知事に対する事前届出を義務づけています。

1.延べ床面積が80㎡以上の建築物の解体
2.延べ床面積が500㎡以上の建築物の新増築
3.請負代金が1億円以上の建築物の修繕模様替え(リホームなど)
4.請負代金が500万円以上の工作物の工事(土木工事など)


また、この法律では、他の建築廃棄物の再資源化を妨げないように、石綿含有建築材料は、原則として他の建築材料に先がけて解体を行い、分別しておくことが定められています。

まとめ

最近法改正があった大気汚染防止法を中心として、石綿(アスベスト)解体工事に関係する事前手続について解説してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。
法改正によって、事前調査の結果を報告しなかったり、適切な作業方法で石綿の除去を行わなかったりした場合には罰則が設けられるようになりました。行政側が本気で対策を講じていることが分かります。
建設業や産業廃棄物処理業に係る事業者の皆様にとって有益な情報提供ができたとしたら、これに勝る喜びはありません。

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