この記事の目次
1,経営が厳しい中で、社長が残したいモノとは
昨今は、新型コロナ禍だけでなく、ウクライナ紛争、円安、インフレ等々の理由で経営が厳しいという中小企業も多いと思います。「果たして、このまま会社を継続ができるのか?」と悩んでいる社長においては、このまま自力で経営できるかどうか?という点はもちろんでしょうが、「事業」「従業員」「取引先」「個人資産」等々の残したいモノが頭をよぎるはずです。
事業継続が難しい企業において、事業を救うことができるか否かは、迅速に円滑な事業譲渡を行い、スポンサー企業による支援を受けることができるかにかかっているように思われます。
また、円滑な事業譲渡のためには、できるだけ会社の信用を傷つけない「私的整理」をとること、そして、社長個人のためには、「経営者保証ガイドライン」を活用することが肝心です。
2,私的整理の中で事業譲渡を行うメリット
私的整理とは、法的整理によらずに、債務者と債権者との間の合意によって行われる債務整理の手続を指します。私的整理は金融機関のみを対象債権者とする秘密裏の手続ですので、取引先を巻き込んで裁判所に申し立てる法的整理よりも、私的整理の方が事業価値毀損の程度が小さく、再建の可能性も高まります。また、私的整理の中で、事業譲渡を内容とする事業再生計画案を作って金融機関の同意を得られれば、「事業」を残し、結果的に「従業員」「取引先」を残すことが可能になります。
さらに、経営者保証ガイドラインに基づく社長の保証債務の整理も併せて私的整理を行うことも可能であり、自宅を残すことができたり、破産よりも多くの資産を残すことが可能になり得ます。
つまり、私的整理の中で事業譲渡を行えれば、「事業」「従業員」「取引先」「個人資産」等々の社長が残したいモノを残すことができるのです。
3,事例
以下、最近、当職が経験した私的整理の事例をご紹介します。ある小型商品を製作する会社について、コロナ前に経営改善計画を策定して、「これから業績回復が望める」と思った矢先にコロナ禍になってしまい、資金繰り状況が一気に厳しくなりました。
そのような中、社長はまさに、「事業」「従業員」「取引先」「個人資産」等々を残したいと考え、スポンサーを探索したうえで、私的整理手続の中での事業譲渡を選択し、金融機関と協議の上で、会社も破産せず、また、個人も破産せず、しかもご自宅を残すことができました。
4,最後に
経営が厳しい中でも、社長は「事業」をはじめとして、色々と残したいモノがあるはずです。その際には、すぐに破産と考えるのではなく、「私的整理」という選択肢を思い出して下さい。2022年3月4日、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」が公表され、私的整理は重要な選択肢の1つです。また、経営者保証ガイドラインを用いて、経営者も自己破産しない方法もありますので、ぜひご検討ください。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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