この新しいビジネス、許認可が必要ですか? ~グレーゾーン解消制度と規制のサンドボックス~
法務


福島県の特定行政書士、佐藤勇太です。この記事では、「グレーゾーン解消制度」と「規制のサンドボックス制度」について解説します。どちらの制度も、これから新しいビジネスを始めようと考えていらっしゃる事業者様に役立つものと思います。最後までお読みいただければ幸いです。

この記事の目次

新しいビジネスに行政法による規制は追いついているのか?

日本国憲法においては、職業選択の自由が認められ、営業の自由もその中に含まれるものとされています。しかし、事業者が新規に事業を始めようとするとき、または事業の規模を拡大しようとするときには、行政庁による許認可が必要となるケースが多いのが現実です。また、日本には約2000の法律が存在しますが、そのうちの1900ほどが行政法であり、そこには営業の自由に対する様々な規制が定められています。

一方、21世紀におけるテクノロジーの進歩は凄まじいものがあり、人間が生きる世界は現実の空間にとどまらず、バーチャルな空間にまで拡大しています。バーチャル空間の中では、ブロックチェーンの技術を用いた取引が既に始まっています。また、リアル世界の中でも、自動車の自動運転など、これまでに想定していなかった技術が開発・実証され、新たなビジネスが興りつつあります。もちろん、テクノロジーの進歩とは関係なく、新しいビジネスモデルを構築する事業者様もいらっしゃるでしょう。

そこで考えていただきたいのが、こうした新しいビジネスに対する法規制はどうなっているのか、という問題です。おそらく現実の変化に法律の整備が追いついていないケースもあるでしょう。そうした場合、自社が始めようとしている新ビジネスが適法なのか、あるいは何らかの許認可が必要なのか、という問題に直面することかと思います。法律の未整備という理由で不利益を被ってしまったら大変です。

もちろん、関係する行政機関に問い合わせるという方法もありますし、弁護士や行政書士に相談するという方法もあります。しかし、既存の法令が想定していなかったようなビジネスを始めようとする場合、「グレーゾーン解消制度」と「規制のサンドボックス制度」という2つの制度を知っておくと非常に便利です。

グレーゾーン解消制度について解説

事業者が、既存の法令が想定していない新しい事業に取り組む場合には、その事業が法令に基づく規制の適用対象となるかどうかが明確でない場合があります。グレーゾーン解消制度は、そうした場合に、具体的な事業計画に即して、規制について規定する法令の解釈とその法令の適用の有無を、あらかじめ確認することができる制度です。

この制度は、2014年に施行された「産業競争力強化法」に基づいて設けられたもので、新規事業のボトルネックになり得る法規制の有無をあらかじめ明らかにすることで、事業者のイノベーション創出を促すことを目的としています。これを活用することによって、事業者は安心して新事業をスタートさせることが可能になります。申請の流れは次のようになります。

1.事前相談

事業者は、新たに実施しようとする事業の内容と確認したい事項を整理し、事業を所管する省庁に相談する。事業を所管する省庁は、規制を所管する省庁から、明確かつ分かりやすい回答が得られるようにサポートする。

2.規制の解釈及び適用の確認の求め

事業者は主務大臣(事業所管大臣及び規制所管大臣)に照会書を提出し、回答を求める。

3.主務大臣による確認及び通知

照会書の提出から原則として1か月以内に、確認の結果が事業者に通知される。回答の内容は公表される。

これらの一連の手続きを通じて、例えば事業者が照会した新しいビジネスが許認可の規制を受けないと判断された場合には、許認可を取得する手続きを経ることなく、ビジネスを実施できることが明らかになります。

規制のサンドボックス制度について解説

規制のサンドボックス制度とは、IoT、ブロックチェーン、ロボットなどの新たな技術の実用化や、プラットフォーマー型ビジネス、シェアリングエコノミーなどの新たなビジネスモデルの実施が、現行規制との関係で困難である場合に、これら新技術等の社会実装に向け、期間や参加者を限定することなどにより現行規制の適用を受けずに、事業者の申請に基づき主務大臣の認定を受けた実証を事業者が行い、実証により得られた情報やデータを用いて規制の見直しに繋げていく制度です。

この制度においては、事業者は、サンドボックス(砂場)の内側という限定的な範囲ではありますが、現行の法規制を受けずに新しいビジネスを試みることが可能になります。例えば、許認可が必要な可能性がある場合であっても、新しいビジネスを前に進めていくことができます。そのため、グレーゾーン解消制度よりも一歩進んだ規制改革の取り組みだといえます。

新しいビジネスの実証(新技術等実証という。)を実施するためには、新技術等実証の内容、実証において分析を行う規制法令の内容などを記載した認定申請書を作成し、主務大臣に提出して、認定を受けなければなりません。手続きの流れは次のようになります。

1.事前相談
事業者は、実施しようとする実証の内容を整理し、政府一元窓口(内閣官房に設置)に相談します。相談を受けた政府一元窓口は、実証が適切に行われるよう、実証内容を確認し、申請をサポートします。

2.事業者による新技術等実証計画の認定申請書の提出

3.主務大臣は見解書を新技術等評価委員会に送付し、意見を聴取

4.主務大臣による認定書の交付または認定しない旨の通知

5.(認定の場合)事業者による新技術等実証の実施

6.主務大臣への終了報告


その後、新技術等実証で得られたデータをもとに、規制所管大臣は規制の見直しを検討することになります。

規制のサンドボックス制度は、2018年に施行された「生産性向上特別措置法」に基づき、規制改革を推進していく制度で、Fintech、ヘルスケア、モビリティ、IoTなどの多様な分野で、23計画142者が認定を受けています。(2022年6月現在)

まとめ~規制改革と行政手続~

日本において生産性が向上しない要因として、あるいはスタートアップ企業が伸びない要因として、行政法による規制の多さと行政手続の煩雑さが語られることがあります。行政手続を仕事としている私であっても、そのように感じることは多々あります。押印が廃止されてもさほど困ることがなかったように、現実として不要な規制や手続きは存在します。

また、テクノロジーの進歩もまた、規制改革を後押ししています。最近の規制改革の議論では、「常駐性・常勤性」や「目視」の緩和が取り上げられることが多くなっています。つまり、その場所に有資格者などがいなくても、テレビ会議システムを使えば同等の効果が期待できますし、工事現場などでは、ドローンを利用することによって、より正確な点検ができるということです。これらの規制は近い将来に大きく緩和されていくでしょう。

この記事では、事業者が新しいビジネスを開始しようとする際に、そのビジネスモデルを前に進めていく手法として2つの制度をご紹介しました。ウチの会社には関係がないと思った方もいらっしゃるかと思いますが、頭の隅にでも入れておいていただければと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

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