役所から要求されたその書類、法令に基づくものでしょうか? ~許認可申請に必要な書類について~
法務


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許認可申請に必要な書類を紛失したらどうする?

許認可の際に役所から要求される書類には、相談の余地があるものとないものがあります。法令によって提出が義務づけられている書類は免除されることも他の書類との代替を許されることもありません。国会で決定された法律、そして法律の委任を受けて制定された政省令が求めている書類ですので、これは必ず提出しなければならないものです。

一方、役所が提出を求めてくる書類には、法令上の根拠がないもの(法令に具体的に書かれていない書類)もあります。代表的なものが、申請者が許認可の要件を満たしているかどうかを確認するための書類です。

また、理由書や顛末書(始末書)、誓約書といった補足の書類の提出が要求されることもあります。これらの書類に共通するのは、申請者が役所に対して述べたこと、約束したことを、文書として残しておく性質の書類だということです。

許認可の要件を確認する書類については、書類が現実に存在しているならば問題はないでしょう。理由書などの書類については、新たに作成するものですので心配の必要はありません。しかし、前者について、廃棄してしまったり紛失してしまったりした場合にはどうしたらよいのでしょうか。

この記事では、提出が要求されている書類が手元にない場合の対処法を、具体的な事例をもとに解説したいと思います。

手引に記載されている確認書類について解説

当事務所では、農地転用の許可申請や建設業許可申請などの業務を依頼されることが(今のところ)多いのですが、申請書類の書き方や添付する書類などは、許可権者である行政庁が作成した手引を参照します。

手引は事業者向けのマニュアルといった位置づけであり、そのマニュアルに従うことで申請業務がスムーズになりますので、私たち行政書士も基本的には手引どおりに申請書類を作成し、添付書類を揃えていきます。

ところで、手引とは事業者向けのマニュアルだと説明しましたが、これをもう少し掘り下げて考えると、手引とは、許認可の要件と要件に該当するかどうかの判断基準が示されているものだといえます。そして、許認可の要件は、通常は法令で規定されています。許認可の要件は、手引の中で次のような形で記されています。

例えば、建設業許可の要件の1つとして、常勤役員等が、建設業法施行規則第7条第1項の基準を満たすものであることという要件があります。建設業法施行規則第7条1項の基準とは、以下のようなものです。

(1)常勤役員(個人である場合はその者又はその支配人)のうち、1人が次のいずれかに該当すること
 1 建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること。(以下省略)


これが建設業許可の要件の1つであり、要件は法令(建設業法施行規則)に明示されています。

次に、許認可の要件に該当するかどうかの判断基準です。手引の中では、「○○という書類を提出すること」と表現されています。つまり、要件が満たされているかどうかの確認書類が指定されているのです。

事例に即していえば、常勤性を確認するものとして、健康保険被保険者証の写しなどを、法人における役員等の経験を確認するものとして、登記事項証明書又は閉鎖した役員欄の謄本などを提出するようにと具体的に記載されています。

そして、健康保険被保険者証があれば常勤性を満たすことを認定し、登記事項証明書などで役員経験が5年以上あることが分かれば、その期間法人の役員をしていたことを認定するということになります。

ただし、これらの確認書類は、法令に基づかないものも多いので、場合によっては他の書類で代替できることもあります。要は、法令で規定された許認可の要件が満たされていることが、書類として疎明(証明)できればよいのです。

役所は前例を重んじるので、特例を認めてもらうことは難しいかもしれません。役所の側から提案があることもまずないでしょう。しかし、確認書類が現実にない場合には仕方がありません。代替できるような書類がないか、行政書士にご相談いただければと存じます。

定款を紛失してしまったらどうする?

ところで、許認可申請においては、法令を根拠として要求される添付書類があります。具体的な事例として、農地転用の許可申請に必要な添付書類をみてみましょう。
農地法施行規則第10条2項の規定です。

2.令第1条の規定により申請書を提出する場合には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
 一 土地の登記事項証明書
 二 権利を取得しようとする者が法人である場合には、その定款又は寄附行為の写し
 三 権利を取得しようとする者が農地所有適格法人である場合には、その組合員名簿又は株主名簿の写し(以下省略)


実務の中で少なからず遭遇するのが、会社の定款がないという問題です。会社設立の際に必ず作成し、公証人の認証を受けているので存在しないはずはないのですが、現実として紛失してしまうことはあります。この場合、どういった対処をすればよいのでしょうか。

この場合、役所に相談しても定款の提出を免除されることはありません。代替するような書類でもよいと言われることもないでしょう。ですので、他の方法を考えることになります。定款を紛失してしまった場合の対処法は、その会社が設立後どれくらい経過したのかによって異なります。

1.会社設立後5年以内の場合

このケースですと、設立登記を行った法務局に登記申請書の閲覧を申請するという方法があります。登記申請書およびその付属書類(定款など)は、利害関係を有する者がその事由を示して、利害関係と事由が相当な場合に閲覧が可能になります。

2.会社設立後20年以内の場合

会社設立の認証を受けた公証役場に対して、公証役場が保存している定款及びその付属書類の謄本の請求をすることができます。会社設立後、20年以内の場合にはこの方法が使えます。

3.会社設立後20年を超えた場合

設立後20年を経過してしまうと、公証役場で保存している定款などは廃棄されてしまいます。ですので、このケースは定款を再作成するという対応をする他に方法はありません。

定款を再作成するというと、面倒で時間と費用がかかりそうだと考える方が多いかと思いますが、会社設立のときのような厳格な手続があるわけではありません。最新の登記事項証明書(登記簿謄本)に合わせて定款を作成し、株主総会の承認を受ければよいのです。社内での手続がきちんと行われれば問題はありません。

まとめ

事業者が許認可申請を行う場合、多くの書類の提出を求められますが、その書類の提出が何を根拠として要求されているのかを理解するのはとても大事なことです。法令に基づくものなのか、許認可の要件を満たしているかを確認するための書類なのか、あるいは行政指導によるものなのかを理解したうえで、適切に対応することが必要です。

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