営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)と農地転用許可制度
法務


営農型太陽光発電とは、農地に支柱を立てて上部空間に太陽光パネルを設置し、太陽光を農業生産と発電とで共有する(シェアリング)取り組みです。農業と再生可能エネルギーの導入・活用を両立させることができることから、農林水産省は相談窓口を整備するなど、積極的に推進しています。

営農型太陽光発電設備を設置するための農地転用許可件数も、初めての申請があった2013年から増加の一途を辿っており、令和2年度では全国で新たに779件(農林水産省調べ)の許可がなされています。累積件数では3,474件の申請が許可されていることになります。(ただし、都道府県によって許可件数にばらつきがみられます。)

営農型太陽光発電は、農地の有効活用と再生可能エネルギーの普及に寄与するものとされていますが、取り組みが始まってからまだ10年に達していません。成功事例が紹介されている一方、パネル下部の農地で適切な営農が行われていないケースなどの課題も見受けられるようです。

この記事では、営農型太陽光発電の特徴とこれを実施するために必要な農地転用などの許可申請について解説します。また、再生可能エネルギーの普及に向けた規制改革の流れの中で、農地転用許可制度などの運用がどのように変わっているのかについても言及したいと思います。農業経営者や発電事業者の皆様にとって、有益な情報提供になれば幸いです。

この記事の目次

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の特徴

営農型太陽光発電は営農と発電を両立させるということが前提となっており、原則的に、その地域の平均的な単収と比較しておおむね2割以上減収しないことが必要とされています。これを担保するために、年に1回の報告義務があり、営農に著しい支障がある場合には、設備を撤去して農地に復元しなければなりません。

営農型太陽光発電という取り組みは、そもそも農業経営者の収入の向上のためにあります。農地に支柱を立て、農地の上部空間を活用することによって、作物の販売収入に加え、売電による継続的な収入や発電電力の自家利用などによる農業経営のさらなる改善が期待できる手法として導入されたものだからです。

ですので、野立ての太陽光発電設備とはまったく違って、農業に対する強いコミットメントが求められる手法であるといえるでしょう。日照に制限がかかる環境の中で、8割以上の単収を維持することは簡単なことではないと考えます。先行事例などに基づき、事前にしっかりした営農計画を立案することが肝要です。

また、営農型太陽光発電設備の導入にあたっては、野立てのものと比較して設置コストが高いことが特徴として挙げられます。(ランニングコストを含めた事業期間中の収支については、営農型の方が有利であるといわれています。)融資などの支援策については、農林水産省がガイドブックを出しています。相談窓口の記載もありますので参考にしていただければと思います。

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)のための農地転用許可申請

千葉県匝瑳市の大豆畑 (千葉県匝瑳市の大豆畑:農水省のガイドブックより)

営農型太陽光発電事業を始めるにあたっては、農地に関する手続きと発電に関する手続きを並行して進めていく必要があります。農地についての手続きとは農地法や農振法(農業振興地域の整備に関する法律)上の手続きであり、発電に関する手続きとは、電力会社に対する電力系統への接続の申し込みや経済産業省に対する事業計画認定申請のことを指します。この記事では農地に関する手続きについて解説します。

農地の上部空間に太陽光パネルを設置するためには、その支柱部分について農地法4条または5条の許可申請を行う必要があります。ここでいう4条または5条申請とは、農地の一時転用のための申請です。自己が所有または賃借している農地に支柱を立てる場合には4条申請、他人の所有する農地を購入または賃借する場合には5条申請となります。

また、5条申請を行う際には、支柱を立てる部分の農地転用申請とは別個に、上部空間のパネル部分について区分地上権(または区分賃借権)を設定する必要があります。区分地上権とは、工作物を所有するため地下または空間に範囲を定めて設定される地上権のことをいいます。この区分地上権を設定するためには、農地法3条の許可を受けなければなりません。農地の権利移転に該当するからです。

さらに、事業地が農振法における農用地区域(通称「青地」といいます。)である場合、農地法に基づく許可申請に先立って農振除外の申出(申請)を行い、農用地区域から外しておく必要があります。この農振除外申出は年に1,2回の受付しかされていない場合がほとんどですので、事業を開始するまでにかなりの時間がかかることを覚悟しておくべきでしょう。

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)と規制改革

静岡県静岡市のキウイフルーツ圃場 (静岡県静岡市のキウイフルーツ圃場:農水省のガイドブックより)

政府は、2050年のカーボンニュートラル社会の実現のために、規制改革などの政策を総動員し、再生可能エネルギーの導入を一層促進するとしています。この方針を踏まえ、内閣府において、「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」が開催され、その中で農地転用許可制度や農業振興地域制度について、意見や要望が寄せられました。

これらの要望に対して、農林水産省は、「再生可能エネルギー設備の設置に係る農業振興地域制度及び農地転用許可制度の適正かつ円滑な運用のための関係通知の整備について」(令和3年3月31日)という通知を出して、基本的な考え方を述べています。2点ほどご紹介します。

1.農用地区域からの除外と農地転用許可手続の迅速化について

農業振興地域整備計画の変更及び転用許可に係る手続の迅速化を促進するため、「農業振興地域整備計画の変更に係る事務手続等の迅速化について」を発出し、市町村、農業委員会及び都道府県に対し、農用地区域からの除外に係る希望を早期に把握すること、除外が可能か否かを速やかに判断すること、また、法定手続に先立って関係者と調整を了しておくこと等について、具体的な方法を例示しつつ、取組をお願いしているところである。

また、同通知においては、① 都道府県は、農用地利用計画の策定又は変更に係る同意協議について、事前調整も含めた標準的な処理期間を設定すること ② ①を踏まえ、市町村は、農業振興地域整備計画の変更手続に要する期間について、市町村の広報誌やホームページへの掲載等により、広く周知することについても要請しており、手続の透明化に向けた取組も推進している。

2.一時転用許可の可否の統一的な判断について

都道府県知事等は、一時転用許可事務について、営農型通知の取扱いに即して自ら基準を定めて運用することが望ましい。

ア 一時転用許可の可否の判断
都道府県知事等は、自ら定めた審査基準に即して、当該都道府県内で統一的に取り扱われるよう農業委員会に周知することが望ましい。また、一時転用許可の判断や事務処理について、地域ごとのばらつきは、できるだけ生じないことが望ましいことから、都道府県知事等は、農業振興地域制度及び農地転用許可制度の実務担当者を、国が実施する農地転用許可制度等に係る研修会や国と地方の協議の場等に積極的に参加させるなどにより地域的なばらつきの解消に努めること。

イ 申請書の添付書類の取扱い
一時転用許可申請書の添付書類は、農地法施行規則で定められており、また、「農地法関係事務処理要領の制定について」において、具体的な取扱いを示しているところであるが、特に、「その他参考となるべき書類」については、許可申請の審査をするに当たって、特に必要がある場合に限ることとし、印鑑証明、住民票等の添付を一律に求めることは適当でないこととしているところであり、都道府県知事等は、申請者に過分の負担を課すようなことがないよう努めること。

ウ 農業委員会の対応
都道府県知事等は、管内の農業委員会による相談対応や一時転用許可申請書の受付対応等について、農業委員会ごとに差異が生じないよう、制度の周知や指導助言に努めること。

まとめ

野立ての太陽光発電設備の設置を目的とした開発が、固定価格の低下などの理由でひと段落している現在、営農型太陽光発電事業は国の後押しもあり、堅調に伸びています。

ただし、営農型太陽光発電での農地転用申請は、通常の申請よりも求められる資料も多く、農業委員会との折衝にも時間がかかります。営農計画書の作成に関しては、農業の知見も必要とされます。また、土地所有者、発電事業者、そして営農者という三者が関係する複雑な権利関係が生じるため、農地法についてどのような申請が必要になるかの判断も難しいかもしれません。

営農型太陽光発電に伴う手続きにお困りの事業者様におかれましては、一度当事務所にご相談いただければと存じます。

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