任意後見制度について~安心して日常生活を送るために~
法務


福島県の行政書士、佐藤勇太です。少子高齢化が急速に進行する日本では、私たちが生活するうえでの様々なリスクが生じています。認知症になり、判断能力が低下することによって、希望していた生活ができなくなってしまうというリスクがその典型の1つです。

認知症になってしまうと、自分の判断で病院に入院したり、施設に入所したりすることが難しくなってしまいますし、築いてきた財産を有効に活用することができなくなるおそれもあります。そのようなリスクから本人を守るための制度が成年後見制度です。

成年後見制度には、法定後見と任意後見の2つの制度があります。法定後見は、本人の判断能力の低下後に、親族などが家庭裁判所に申立をすることによって後見が開始されます。判断能力が低下した後に行いますので、法定後見は事後的措置だといえるでしょう。

一方、任意後見は、(本人の)判断能力があるうちに、(本人が)将来の代理人を定め、判断能力が低下したときに備えて任意後見契約を公正証書で作成し、将来に備える制度です。法定後見と比較すれば、こちらの制度は事前的措置だといえます。それでは、任意後見についての概要を一緒に確認してみましょう。

この記事の目次

任意後見契約の締結と発効

任意後見制度が始まったのは今から20年ほど前で、「任意後見契約に関する法律」(1999年)がその根拠法となっています。この法律の理念は、自己決定の尊重にあり、この理念を実現するために制度設計がされています。

任意後見は契約によって行われるものであり、この契約は公証人が作成する公正証書でなければなりません。任意後見契約が締結された場合、法定後見が開始されないという重大な効果が伴いますので、本人の真意の確認のため、公証人の関与による確実な方式によることになります。

任意後見契約の内容については、違法・無効な内容でなければ、法律の趣旨に反しない限り、自由に取り決めることができます。自己決定の尊重という法律の理念がここにも表れています。なお、実際には、日本公証人連合会が提供しているひな型をもとに検討することになるかと思います。

任意後見契約は、将来の任意後見人や親族などが、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立て、家庭裁判所がこれを選任することによって効力が発生します。任意後見監督人とは、文字通り、任意後見人が適切に職務を行っているかを監督する人のことで、弁護士・司法書士などの専門職が選任されます。

本人が自分で選んだ信頼している任意後見人ですが、預貯金等を勝手に使ってしまうようなことがないとも言い切れません。そこで、そのような不正行為が起こらないようするために、制度設計がされているといえるでしょう。

任意後見人の資格と職務

任意後見において、本人は、判断能力があるうちに、将来自分のために「財産管理」と「身上監護」を行う人(任意後見人)を自分で選ぶことできます。ここは、家庭裁判所が選任した人が後見人となる、法定後見との大きな違いになります。

任意後見人に特別な資格は必要なく、親族関係のまったくない人でも、契約の相手方となることが可能です。もちろん、行政書士に依頼することも可能です。(参考:一般社団法人コスモス成年後見サポートセンター)

任意後見人の仕事の1つが、本人の「財産管理」をすることです。自宅等の不動産や預貯金等の管理、年金の管理、税金や公共料金の支払いなどがこれに該当します。

もう1つが、「身上監護」と呼ばれるものです。要介護認定の申請等に関する諸手続、介護サービス提供契約の締結、介護費用の支払い、医療契約の締結、入院の手続、入院費用の支払い、生活費を届けたり送金したりする行為、老人ホームへ入居する場合の体験入居の手配や入居契約を締結する行為などがこれに該当します。

任意後見制度利用に関する注意点

注意が必要なのは、任意後見人の仕事は、自分でおむつを替えたり、掃除をしたりという事実行為をすることではなく、あくまで介護や生活面の手配をすること(法律行為をすること)に限られるということです。(一切の事実行為をしてはならないと禁止するものでもありません。)また、手術などの医療行為に対する同意権もないとされています。

また、任意後見人には、本人の法律行為をなかったものとする「取消権」が与えられていないことは、任意後見契約前に十分に検討しておかなければなりません。この点、法定後見における後見人には、この「取消権」が与えられていますので、本人が行った売買契約などを取り消すことが可能です。

任意後見は法定後見に優先しますので、任意後見契約が有効である限りにおいては、法定後見は開始されることはありません。任意後見が発効している最中に任意後見を終了させるには、本人の利益を守るため、特に必要な場合に限られるとされています。この仕組みも本人の自己決定の尊重という理念を反映しているものと思われます。

まとめ (安心して日常生活を送るために)

単身世帯の増加

2000年 2020年 2040年(予測)
全体 27.6% 35.7% 39.9%
65歳以上 約13% 34.0% 40.0%

(総務省の調査より)

(生涯)未婚率の上昇

男性 女性
1990年 5.57% 4.33%
2015年 23.37% 14.06%

(総務省の調査より)

2つの表をご覧になれば分かるように、日本では単身世帯が増えており、20年後には4割の世帯が単身世帯になると予測されています。未婚率も急上昇しており、自分の身体的・精神的能力が衰えた際に世話をしてもらえる子どもがいない方が急激に増えていくものと予想されます。

安心して日常生活を送るために、そして、尊厳のある死を迎えるために、自ら備えなることは大切なことです。使うことのできる社会資源はすべて活用して、最期の日まで、健やかな毎日を過ごしていただきたいと思います。この記事で紹介した任意後見制度も、数ある選択肢の1つとして検討していただければ幸いです。

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