いまAI契約審査に何が起きているのか
法務


この記事の目次

AI契約審査とは

AI(人工知能)を使って契約書の内容を審査し、契約書の条項が自社にとって有利か不利か、また条項の不備などを指摘するサービスの適法性をめぐって、法務省の見解が令和4年10月14日に発表されました。

産業競争力強化法第7条は、新事業活動に関する規制について規定する法令の解釈及び適用の有無を主務大臣に照会することができ、主務大臣は回答内容を公表するとしています。
今回発表されたのは、AIがレビュー対象の契約書を審査し、その条項の法的リスクを判定し、修正例等を表示するというサービスが、弁護士法72条本文に抵触しないことの確認を求めるという照会に対する法務省の回答でした。

照会内容を少し具体的に紹介すると、レビュー対象の契約書の法的リスクの判定結果や修正例を表示する場合や、留意事項の解説のみ表示する(修正例までは表示しない)場合といった場合分けがされています。

こうしたサービスが弁護士法に抵触しないとすれば、例えば、①これから新規事業を展開するにあたってひな形を作成した業務委託契約書・秘密保持契約書・代理店契約書など、②新規の取引先との取引基本契約書や自社の従業員との雇用契約書を作成した上で、これをAIがチェックしてくれる活用場面が予想されます。

弁護士法72条とは

弁護士法72条は、「弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」と定めており、いわゆる「非弁行為」を禁止するものです。

今回の照会は、法律業務に関するサービスを提供する会社がAIを活用したレビュー機能を提供し、利用者はその対価を支払うという仕組みが、「弁護士でない者」による法律事件に関しての「鑑定」や「法律事務」の取り扱いに該当してしまうのかというものでした。

法務省の回答は

上述のとおり、レビュー対象の契約書の法的リスクの判定結果や修正例を表示する場合や、留意事項の解説のみ表示する場合といった場合分けをした照会がされていますが、法務省の回答は、いずれの場合でも、法律上の専門知識に基づいて法律的見解を述べるものとして「鑑定」に当たると評価される可能性があり、弁護士法第72条本文に違反すると評価される可能性があることを否定することはできないというものでした。

今後の展望

実は、本年6月にも類似の照会に対して法務省の回答が発表されており、当時の照会内容は、今回の照会よりも簡素化されたもので、単に、AI技術を用いて、契約書の記載内容について法的観点から有利であるか不利であるか等の審査結果を表示するというサービスの適否でした。

このときにも法務省は、「AI技術を用いて、当該契約書の記載内容につき、①法的観点から有利であるか不利であるか、②法的リスク、③法的観点から修正を検討すべき箇所及びその修正の文案、④法的観点から留意すべき事項について検討を促す旨、⑤法的なリスクを数値化したリスクスコア、をいずれもユーザーの立場に立ってアプリケーション上で表示する」ことは弁護士法72条本文に違反すると評価される可能性があるとしています。

ただし、本年6月の回答では、「「鑑定」に当たると評価され得るといえる」「弁護士法第72条本文に違反すると評価される可能性がある」といった表現でしたのに対して、今回の回答は、契約書のひな形とレビュー対象の契約書の条項等の字句が異なる部分を機械的に表示するような場合は、「鑑定」に当たるとは言い難いとの表現や、「「鑑定」に当たると評価される可能性がないとはいえない」との表現がされており、本年6月の照会よりも適法である可能性が高いことが窺われます。
今回の回答を踏まえて、適法な枠組みの検討がより進むことが期待されます。

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