IT業界出身の行政書士が解説する「IT関連契約書はここを見落とすな ! 」 〜秘密を守る編〜
法務

この記事の目次
こんにちは。IT業界で約30年実務経験してきた行政書士の岸上です。
IT/インターネット関連の契約書は、知的財産(特許、著作権、商標など)を扱うことが多いため、一般の物品の売買契約書や不動産の賃貸契約書とは少し違った内容を盛り込む必要があります。

IT業界で営業/マーケティング職として実際に数多くの契約に携わってきた行政書士が、具体的なビジネスの内容を踏まえて、さらに法律家としての視点から様々なIT関連契約書のチェックポイントを解説します。今回は「秘密を守る」編です。

秘密保持契約書(NDA、対外向け)とは


ビジネスを始める際、最初に締結すべき契約が秘密保持契約書です。 ビジネス交渉を行うにあたっては、どうしても自社の秘密を相手に開示しなければならないケースが多々あります。 そのような場合は、相手方に自社の秘密を守ることを義務付ける秘密保持契約書を締結します。

秘密保持契約書を締結せずに秘密情報を開示した場合は、相手方が情報漏洩をしても不正競争防止法等で保護されないおそれがあります。なお、相手方からの要望により双方の秘密を保持する内容にすることもあります。


秘密情報の特定


何が秘密情報であるかの定義をします。またどのような方法で提供されるかも規定します。開示側は広く、受領側は狭くしたいのが当然ですので、立場によってよく吟味する必要があります。

秘密情報の特定はどのような方法で提供されるのか規定すること




秘密保持の範囲


開示された情報をどこまでなら使用してよいかを決めます。会社全体なのか、特定の人だけなのか、あるいは関係する第三者にも開示していいのか等を規定します。通常は当事者間で合意した目的の範囲を考慮して規定します。もちろん目的外の使用は禁止します。

開示された情報は「会社全体」なのか「特定の人だけ」なのか、「関係する第三者にも開示していい」のか規定すること




守秘期間


契約有効期間とは別に、秘密情報の保護期間を、契約終了後も一定期間存続させることが一般的です。保護期間が長すぎるのは双方にリスクがあるので、契約終了後2年~5年程度で設定することが多いですが、特に重要というものは「永久に」と規定することもできます。

守秘期間は契約終了後2~5年程度で設定することが多い




秘密情報はどのように特定するのか


秘密情報の特定にあたっては、通常秘密にすべき情報・資料をリスト化するとともに、個々の資料には㊙、「機密」、「Confidential」など秘密情報である旨を明記した上で相手方に開示するようにします。

口頭により、または映像などの視覚的手段により開示した情報については、できるだけ早く議事録などの文書化により、秘密保持義務を負うことをお互いに確認しておくことも重要です。


秘密保持契約書(社員向け)


NDAは企業間での秘密情報漏えい対策ですが、自社の従業員から秘密情報が漏えいするケースは少なくありません。 そこで従業員との間でも秘密保持誓約書を交わしておこくことが必要です。

実際には就業規則に秘密保持の内容を規定しておくケースも多いですが、より従業員に意識させるためには、入社時、退社時や他社とのプロジェクトに参加する時などに個別に締結するのが望ましいです。 秘密保持契約書と同様に、これを締結していないと従業員が秘密情報を持ち出しても不正競争防止法等で保護されないおそれがあります。


秘密情報の管理体制も必要


従業員と秘密情報保持誓約書等を締結しても、会社側に日常的に秘密情報を管理する体制ができていないと法律上保護されないケースがあります。 具体的には、何が秘密情報か特定していなかったり、だれでも秘密情報にアクセスできるようになっている場合などは管理されていないとみなされる可能性が高くなります。

会社側に秘密情報を管理する体制ができていないと法律上保護されないケースがある




不正競争防止法で保護される「営業秘密」とは


企業が秘密として管理している技術、ノウハウ、顧客情報、販売情報などは、一般的に「企業秘密」と呼ばれますが、その内、不正競争防止法で規定される要件を満たすものが「営業秘密」です。

「営業秘密」と認められるためには、秘密管理性、有用性、非公知性の3要件が全て満たされていることが必要です。そして、他者が「営業秘密」を不正に取得、使用、開示した場合には、民事的、刑事的な保護を受けることができます。 民事的には、民事訴訟において差止請求、損害賠償請求、信用回復請求を求めることができ、刑事的にも被害者からの告訴によって刑事罰(懲役、罰金)の対象になる場合があります。


まとめ


IT関連契約書についてご不明な点がある場合は、行政書士等の専門家にご相談されることをおすすめいたします。 ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 行政書士東京きしがみ事務所 岸上 隆一のページ

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