IT業界出身の行政書士が解説する「IT関連契約書ここを見落とすな ! 」〜外部に仕事を頼む編〜
法務

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こんにちは。IT業界で約30年実務経験してきた行政書士の岸上です。
前回IT業界出身の行政書士が解説する「IT関連契約書はここを見落とすな ! 」 〜秘密を守る編〜でIT関連契約書のチェックポイントについて解説しましたが、今回は「外部に仕事を頼む編」を解説いたします。


共同開発契約書とは


製品やサービスの開発にあたり、自社以外の企業と共同で開発を行う場合に締結する契約書です。

共同開発契約書の中では、共同事業の目的を明確にしておくことと、双方の役割分担、費用と契約期間を明確にしておくことが重要です。 また成果物(知的財産権)の帰属や使用方法などを決めておかないと、せっかくの成果を全て相手方に実施されてしまうことにもなりかねません。

特に、大企業との共同事業においては大企業側に有利な契約書になっている可能性もありますので十分注意が必要です。


成果物の帰属


共同で開発した成果は基本的には両者のものです。 したがって、契約の内容によっては、相手方も自社単独の技術をベースにした成果物を利用できますし、一方、第三者に共同開発で利用した自社技術をライセンス提供したい場合にも相手方の了解が必要になるケースも発生します。

少なくとも自社単独の技術、ノウハウを共同開発に提供する場合はその部分の権利については明確にしておく必要があります。

自社単独の技術、ノウハウを共同開発に提供する場合はその部分の権利について明確にしておくこと




共同開発のおいしい話には気を付けること


共同開発は自社に足りない部分(資金、設備、ヒト、ノウハウなど)を相手に補完してもらうことによって事業を推進できるという意味で、有効な手段に思えます。しかしながら、相手も同じ立場ですので、相手が自社に何を求めているのかを把握して、共同開発といっても、その部分に関する自社の権利や優位性はしっかりと守る措置を講じておく必要があります。

また、開発投資について、「成果物はお互いで自由に売って回収しましょう」といった話も要注意です。自社と相手の販売力に大きな差があるとしたら、自社は全く回収できない状態に陥るかも知れません。それを避けるため、販売のテリトリーや役割分担などについても予め協議して、自社の回収計画を確実化することに留意しておかなければなりません。


業務委託契約書とは


製品やサービスの開発にあたり、自社以外の企業に業務の全部あるいは一部を委託する場合に締結する契約書です。 契約形態としては、「請負」と「委任(正確には準委任)」があります。この2つの違いは、簡単に言うと「成果物」があるか否かです。

「請負」は成果物に対して対価が発生し、「委任」は受託側のサービス(一般的には労務の場合が多い。)に対して対価が支払われます。したがって、「請負」では成果物の特定、権利(知的財産権)の帰属、検収条件及び瑕疵担保責任などの規定が必要となります。


下請法の考慮


下請法は正式には「下請代金支払遅延等防止法」といい、大企業(親事業者)が下請事業者に対して守らなければならない義務と禁止事項を定めたものです。

簡単に言うと、下請事業者に対する不当な買いたたきや代金減額、支払い遅延といった行為を禁止するものです。 どういう場合が下請法の対象になるかは細かい規定がありますので、実際のケースで確認して下さい。

下請法とは下請事業者に対して守らなければならない義務と禁止事項を定めたもの




個人への業務委託とは


個人に対して業務委託する場合は、実態として労務契約とみなされると偽装請負として違法になります。

労務契約と判断されるにはいくつかのポイントがありますが、一番重要な点は「委託元に指揮命令権がある」かどうかです。 委託元に指揮命令権がある場合は労働契約と判断される可能性が高くなります。


この契約で著作権の譲渡は完了


著作権は、ひとつの権利ではなく、いくつかの権利(支分権と言います。著作権法上は11種類)を束ねたものです。そして、著作者は著作物の創作と同時に、何の方式も必要とせずに著作権を専有します。したがって、著作権の譲渡を受けたい場合は、契約でその旨を規定しておく必要があります。

契約書の文言としてよく見るのは、「本著作物の著作権は、対価の完済により甲に移転する。」といった表現ですが、実はこれでは著作権は完全には移転していません。

支分権の内、「翻訳・翻案権(著作権法27条)」と「二次的著作物の利用における原著作者の権利(28条)」については、契約書に特掲しないと譲渡人に留保されたものと推定されます。これらも含めた譲渡が必要な場合はそれを意識しておかなければいけません。


まとめ


IT関連契約書についてご不明な点がある場合は、行政書士等の専門家にご相談されることをおすすめいたします。 ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 行政書士東京きしがみ事務所 岸上 隆一のページ


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