IT業界出身の行政書士が解説する「IT関連契約書ここを見落とすな ! 」〜製品・サービスを提供する編〜
法務


この記事の目次
こんにちは。IT業界で約30年実務経験してきた行政書士の岸上です。
IT関連契約書について
第1回目はIT業界出身の行政書士が解説する「IT関連契約書はここを見落とすな ! 」 〜秘密を守る編〜
第2回目はIT業界出身の行政書士が解説する「IT関連契約書ここを見落とすな ! 」〜外部に仕事を頼む編〜 を解説しましたが、今回は「製品・サービスを提供する編」を解説いたします。


ライセンス使用許諾契約書、サービス利用規約書とは


ソフトウェア製品やサービスは物品の売買契約とは違い、所有権を購入者に移転させないことが原則です。 購入者は製品やサービスを使用、利用する権利を得るという考え方です。

使用許諾契約書やサービス利用規約には、提供側が利用者にどういう権利を付与し、どのような制限を加えるかを規定します。 製品やサービスの著作権や許諾権は提供側にあり、利用者がその権利を侵害することは禁止する旨を明確にします。 したがって、利用者はこの契約内容に同意しないと製品・サービスが利用できないとするケースが一般的です。

同意の時点


利用者がどの時点で製品やサービスの使用、利用に同意したとみなされるかはそれぞれ異なります。例えば、ソフトウェアは箱のシュリンクラップを破いた時とか、インストールした時に同意したとみなすケースがありますし、ASPサービス(クラウドサービス)では申込情報が提供者に到達した時にする場合が多いです。(売買契約の成立時点とは異なります。)同意の時点によって、返品やキャンセル、課金開始などの対応が変わってくるのが一般的です。

個人情報の取り扱い


ソフトウェアやクラウドサービスの利用にあたって利用者の個人情報の提供を必要とする場合は、個人情報保護のポリシーを規定した方がいいです。実際には、個人情報保護法の規制の対象になるのは一定以上の情報を保有する事業者だけになりますが、昨今の状況からすると、少なくともこのポリシーがない会社の信用度は低くならざるを得ないでしょう。

SLA(Service Level Agreement)は主にクラウドサービスにおいて、提供側が利用者側にそのサービスの内容、提供条件や目標などのサービスレベルを保証する規定です。SLAは、そのサービスのPRポイントや差別化の材料になる一方、免責規定も含みますので、提供側、利用者側それぞれの立場で十分チェックする必要があります。


利用規約をWebサイトにあげておけば有効なのか
Webサイトのわかりやすい場所に利用規約、使用許諾等が表示されており、それを認識しながら取引したということであれば、原則有効と考えられます。ただし、実際には「わかりにくかった」というクレームが発生する可能性もゼロではないので、申込時には必ず利用規約等に同意したことを認識してもらうような業務フローにしておく必要があります。

また、改訂した利用規約等をWebサイトにアップすれば改定前のお客様も拘束できるか、という点について、たまに利用規約等の中に「変更があった場合には予め了承する。」という規定を見かけますが、これは基本的には有効ではありません。変更の内容を知らせずに相手方を同意させようとするのは民法の基本原則に反すると考えられるからです。


販売代理店契約書、OEM契約書とは


製品やサービスを第三者に販売してもらう際の契約です。 どちらも再販売してもらうことには変わりありませんが、OEM契約では製品やサービスを相手方のブランドで販売してもらうものです。 相手方のブランドということは、エンドユーザに対するその製品やサービスの責任はOEM先が負うことになりますので、アフターサービスのみならず供給責任を持つケースもあります。

その分提供価格などは普通の販売代理店よりもいい条件になるのが一般的です。 どちらの形態においても、提供側と販売側の責任分担と提供条件、取引条件に加えて、販売目標や販売促進に関する両者の努力義務などを規定します。


販売代理店の形態


一言で販売代理店と言っても、その形態は「売買型」と「仲介型」に大別されます。「売買型」は、供給者が販売代理店に対して商品等を販売し、販売代理店がその購入した商品等を顧客に販売するという形態です。顧客からの代金回収も販売代理店が行います。

「仲介型」は、販売代理店が開拓した顧客を供給者に紹介し、供給者が顧客と契約を締結して商品等を販売し、販売代理店に対して手数料を支払うものです。顧客は代金を供給者に支払います。 これが曖昧になると、取引実態や会計処理と契約内容にズレが生じる可能性がありますので注意が必要です。


独占/非独占の明確化


販売代理店にとって、当該商品等を独占で販売できるというのは大きなメリットになります。一方、供給者側からすると、その販売代理店に依存してしまうことになるので、できるだけ独占権を与えたくないのが本音です。

しかしながら、全面的な独占ではなく、一定範囲の商品やテリトリーに関してのみ独占というような部分的な独占権を与えることや、一定購入量の定めを遵守する限りにおいて独占とし、それを下回った場合には独占権がなくなるといった定めも可能です。マーケットで有力な販売代理店を獲得したい場合には、そういった条件で交渉していくのも戦略のひとつです。


レベニューシェア契約とは


レベニューシェア契約は、製品やサービスを共同開発した場合や、複数社がそれぞれの技術を持ち寄って新しい製品やサービスを開発した場合などに、売上をあらかじめ設定した比率で分け合うという契約形態です。

クラウドサービスなどInternetを活用してあまり初期投資をかけずに、早くサービスを立ち上げたいケースでよく活用されるモデルです。既存の経営資源を使って新しいサービス、市場を開拓できるメリットはありますが、参加するパートナーとWin-Winの関係になれないとお互いの目的が達成できません。ビジネスモデル自体の有効性と売上計画(回収計画)、役割分担など事前の意識合わせが重要です。


まとめ


IT関連契約書についてご不明な点がある場合は、行政書士等の専門家にご相談されることをおすすめいたします。 ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 行政書士東京きしがみ事務所 岸上 隆一のページ


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