テレワークで活躍中のクラウドサービスとは
経営


新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークを導入する企業が増加しました。在宅型のテレワーク等では、クラウドサービスの利用が重宝され、その利用によってテレワークが成立をしているといっても過言ではありません。
今回は、日常的に既によく使われているクラウドサービスについて、改めて知識を深めるべく、ご紹介を致します。

この記事の目次

1.クラウドサービスとは

クラウドサービスとは、ネットワークに接続されたコンピュータ資源である計算能力、記録装置、情報システム等を、ネットワークを介して必要なときに必要な分だけ利用することが出来るサービスをいいます。

クラウドサービスは、クラウドサービス事業者が管理するコンピュータ資源に、インターネットを介してアクセスし、複数の企業等が当該資源を部分的に利用していくパブリッククラウドサービスと、企業等が自組織内で管理するコンピュータ資源を、自組織の各部署や関連会社等が部分的に利用していくプライベートクラウドサービスの2つの形態に大別することが出来ます。一般的にクラウドサービスとは、パブリッククラウドサービスのことです。

クラウドサービスは、従来のように企業等が自組織内でサーバ等の構築や運用をするオンプレミス環境とは異なり、サーバ等を自ら保有する必要がありません。

2.クラウドサービスの分類

クラウドサービスには、クラウドサービス事業者が利用者に提供する資源の範囲によって、SaaS、PaaS、IaaSという分類があります。
SaaS、PaaS、IaaSの順に、クラウドサービス事業者が提供する資源の範囲が小さくなります。つまり、この順にクラウドサービス事業者がセキュリティ確保に責任を持つ範囲が小さくなり、その分、利用者がセキュリティ確保に責任を持つ範囲が大きくなります。

①SaaS

SaaSは、電子メールやスケジュール管理、文書作成等のソフトウェアレベルの機能を提供するサービスです。利用者はソフトウェアが提供する各種機能を、すぐに利用することが出来ます。 テレワークにおいてはSaaSを活用する場合が増えています。これは、通常の企業等のシステムは、自組織内向けにサービスを提供することを想定して構築されており、インターネット経由でサービスを提供するためには、インターネット対応のための大規模な改修を実施する必要がありますが、SaaSで提供されるサービスを利用することで、この改修を大きく抑えることが見込まれるためです。
メールサービス、チャットサービス、オンライン会議サービス、ファイル共有サービス等がSaaSにより提供され、多くの企業が利用をしています。

②PaaS

PaaSは、データベース、開発フレームワーク等のアプリケーションを開発や実行するためのプラットフォームレベルの機能を提供するサービスです。利用者はプラットフォームが提供する各種機能を使って、必要なアプリケーションを開発する必要があります。

③IaaS

IaaSは、サーバや記録領域等のハードウェアレベルの機能を提供するサービスです。利用者は、提供されたハードウェアを利用するため、自分でOSをはじめとする必要なソフトウェアを導入する必要があります。

3.クラウドサービスをテレワークに活用するメリット

テレワークの導入検討に際して、クラウドサービスを活用することで、システム構築や管理に関する課題に対して、下記のような点で有効であると期待されています。

①セキュリティ管理対象の軽減

オンプレミス環境でシステムの導入や運用を行う場合は、物理的セキュリティ、OS等のソフトウェアの脆弱性管理といった多くの点について担当者が適切に管理し、統制する必要があります。 一方で、クラウドサービスでは、情報やデータ、アカウント情報、アクセス権等の管理を適切に行うことが出来れば、アプリケーションレベル以下の領域の管理負荷を軽減することが可能です。

②システム導入の迅速性

オンプレミス環境に新たなシステムを導入する場合、既存システムとの互換性や、ネットワーク環境の再設計が必要になることから時間を要する場合があります。 一方で、クラウドサービスでは、HTTPS等のWeb技術を基本としたサービスが中心であるため、多くの場合、既存システムに大きな変更を加えることなく、速やかにシステ ム導入が出来ます。
また、クラウドサービス上でシステムを構築する場合、オンプレミス環境と比較して、サーバやネットワーク機器等を物理的に調達し構築する時間を大幅に削減できるため、その点からも迅速なシステム導入が可能です。

③システム拡張や縮退の容量柔軟性

オンプレミス環境に新たなテレワーク向けのシステムを導入する場合、あらかじめ利用者数や通信量等を予測して、需要に該当する仕様に適合した製品や通信回線を選 定する必要があります。

予測より実需要が大きかった場合には、システムの追加や大容量のものへの更改が必要になります。これを回避するために、将来需要等の安全率を見込んだ容量の製品や通信回線を導入することが通常行われており、コストも余分にかけざるを得ません。

一方で、クラウドサービスでは想定外の需要が発生した場合、容量の上限を気にすることなく拡張が出来ます。また、クラウドサービスでは、利用途中での容量の縮退や、短期間だけの利用にも対応がしやすいという特徴があります。

④ 運用コストの低減

クラウドサービスは、クラウドサービス事業者によって大量のサーバ等を集中的に管理するため、一般的にスケールメリットが働くことから、その構築や運用に係るコストがオンプレミス環境より割安になります。また、運用監視のための人員についても削減することが出来る場合があります。

4.クラウドサービスに必要なセキュリティ対策

テレワークにおいて、クラウドサービスを活用する場合には、セキュリティ確保の観点から下記の点について考慮する必要があります。

①クラウドサービスやクラウドサービス事業者の信頼性確認

クラウドサービスには、機密性のある情報を保存する場合や、安定したシステム稼働を前提にした業務で利用する場合等が想定されます。そのため、情報を預け、システム運用の一部を担うことになるクラウドサービスやクラウドサービス事業者について、その信頼性を確認することが重要です。

②クラウドサービスのセキュリティ責任境界の確認

クラウドサービスには様々なサービスが存在し、クラウドサービス事業者と利用者との責任の境界はサービス間で一様ではないため、利用するサービスごとに自組織が担うべき責任範囲を確実に確認することが重要です。

③情報の重要度定義とクラウド保管情報の管理

クラウドサービスは、インターネットを介してアクセスすることが前提となっているため、インターネットを介した攻撃を受けるリスクがあります。業務で取り扱う情報の機密レベルを定義するとともに、クラウドサービス上で取り扱うことができる機密レベルを定め、クラウド上の情報を適切に管理することが重要です。

④適切なアクセス制御の実施

ファイル共有サービスを提供するクラウドサービスにおいて、アクセス制御設定に不備があり、誤ってインターネットに機密情報を公開してしまうことがあります。適切な利用者のみがアクセス出来るようにするとともに、設定可能であればIPアドレス制限等により、アクセス制御を強化することが重要です。

⑤厳格な認証情報の管理と認証手法の強化

上記のように、適切な利用者のみがアクセスできる設定を実施していたとしても、正規の利用者のアカウント情報を窃取して、クラウドサービスへ不正アクセスを試みる攻撃が増加しています。そのため、各利用者が用いるパスワードを厳格に管理するとともに、パスワード漏えい時に備え、多要素認証等の強力な認証手法の活用を検討することが重要です。

5.まとめ

上記のように、クラウドサービスの活用はテレワークに様々なメリットをもたらす一方で、より一層のセキュリティ対策が必要となります。上手に利用をすることで、企業の就業環境の向上に繋がります、ご参考になさってください。
ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。

記事のキーワード*クリックすると関連記事が表示されます

メルマガ登録(毎週水曜配信)

SHARES LABの最新情報に加え、
経営に役立つ法制度の改正時事情報などをお送りします。