ストレスチェック制度から1年半~成果と活かし方を専門家が解説
労務



平成27年12月1日に公布された労働安全衛生法の一部改正により、事業者には労働者のストレスチェックと面接指導の実施等が義務付けられました。(50人未満は努力義務)

先日、労働省調査でこのストレスチェックの実施状況が公表されております。ここで、ストレスチェック制度がどのくらい活かされているのか、検証したいと思います。

この記事の目次

ストレスチェックの実施状況


今回公表された実施状況によると、ストレスチェックの実施義務がある事業場のうち、82.9%で検査を実施していることがわかりました。
事業場の規模別に見ると、1000人以上の会社では99.5%でほぼ実施していることがわかります。50人~99人の会社では78.9%の実施率であり、大企業よりは実施率は下がりますが、それでも8割近い会社で実施できています。
少なくとも、50人以上の企業ではストレスチェックが浸透してきていると言えるでしょう。

準備期間があったとは言え、ストレスチェックの導入は全体的に見て、大きな混乱は無かったようです。
この背景には、時代の流れの中で、社員のストレスの把握が会社にとって重要な問題と捉えられてきた、ということがあると思います。

ここ数年、これまではクローズアップされてこなかったような労働問題について、大企業が問題を起こしてニュースになる、というケースが目立って増えてきました。人々の労働環境問題への関心が既に高くなっていたことが、制度導入のモチベーションにつながったのではないでしょうか。
逆に言うと、まだ実施できていない50名以上の会社については、早急に制度導入をする必要があります。また、努力義務となっている50人未満の会社についても、近いうちに制度導入が義務となる可能性がありますので、その動向は注視していただきたいところです。


面接指導の実施状況


ストレスチェックの対象者のうち、高ストレスと判断されている従業員が医師等との面接を申し出た場合、事業主は面接指導の場を設ける必要があります。

このストレスチェックの対象者のうち、0.6%が医師による面接指導を受けていることが今回の公表でわかりました。企業規模別に見ると、1000人以上の大企業で0.5%、50人以上99人未満の会社で0.8%と大きな相関関係は見られません。中小企業であっても、大企業であっても、一定規模で高ストレスに晒されている方がいることに変わりはないと言えるでしょう。

うつ病については様々なデータがありますが、過去12カ月間にうつ病にかかる割合がだいたい1~2%と言われています。この1~2%がすべて職場によるストレスというわけではないので、ストレスチェックから面接指導すべき従業員を見極める、というプロセスはある程度機能している、と言って良いと思います。


ストレスチェックの活かし方


チェックができたところで、改善ができないと高ストレス社員は増えるばかりです。
改善手法については各会社の状況が違うので一概に「これをすれば大丈夫」という手法はありませんが、おおむね3つのタイプに分類されます。



(1)は、ノー残業デーの実施や記念日休暇などの新設により、長時間労働を強制的に削減させる方法です。
強制力があるので、制度が浸透すれば効果も高いのですが、実際に現場の生産性が上がっていない場合は、どこかでしわ寄せがくることになります。サービス残業や持ち帰り残業が増えたり、制度そのものが形骸化したりする恐れがあります。
これらの制度を取る場合には、必ず生産性の向上や業務の整理などの工夫がセットになっていることが必須条件と言えるでしょう。


(2)は有給休暇取得日数や残業時間を把握して、取得率や残業時間に応じて注意喚起を行う方法です。
助けが欲しい社員にピンポイントで指導できるという点では、効果が高いです。
この対策を取るには、どのタイミングで情報を得るかという運用方法を良く検討する必要があります。
また、問題となる社員の上司の協力も不可欠であることは言うまでもありません。

(1)(2)は「長時間労働」による高ストレスは把握できますが、パワハラなども含めた「人間関係」の高ストレスまでは把握できません。
そこで(3)の方法を取ることになります。

(3)では、座学による集合研修や、パワハラなどを行う社員への個人研修も考えられます。
また、コミュニケーションを活発にするために、感謝を伝える「Thank youカード」を社員同士で配る運用を行っている会社や、会議室の机の形を四角から丸型に変えたというような会社の例もあります。
小さな工夫でも積み重ねることでコミュニケーションが増えて、社内のストレスが減ることもありますので、事業主の方はぜひその方法を考えていただきたいところです。

大事なことは、なぜ高ストレスなのか、という課題の分析です。せっかく高ストレスであることを把握できているのに、対処方法を間違えると事態は改善しません。
ストレスチェックを行った後の課題の分析は、担当者だけではなく、社労士などの専門家も交え、複数の視点から行うことをお薦めいたします。


まとめ


ストレスチェックの実施状況は82.9%の実施、50人以上の会社で浸透した制度になりました。
面接指導の実施は0.6%で、大企業も中小企業も割合はそれほど変わりません。
ストレスチェック後に問題を把握して改善することが大事です。それぞれの会社の実情に合わせて、対策を実施していきましょう。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 社会保険労務士 村田淳のページ

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