【無期転換対応】新たな雇用区分「多様な正社員」導入のススメ
労務



最近では、「多様な正社員」というキーワードを耳にする機会がぐんと増えたように感じます。
従来型とは異なる新たな働き方の実現を目指す働き方改革の中で、そして、有期契約労働者の雇用の安定のために企業が対応すべき無期転換ルール導入の中で、
今、注目されているのが「多様な正社員」という新たな雇用区分です。


この記事の目次

そもそも「多様な正社員」とは

多様な正社員とは、正社員として勤務しながらも、従来の正社員と比べると配置転換や転勤、職務内容や勤務時間などの範囲が限定される労働者のことを指します。
「限定社員」という名称で表現されることもあります。

ざっくりとしたイメージとしては、正社員と非正社員(従来の契約社員やパート・アルバイト)の両方の要素を兼ね備える、新たな正規雇用の形といったところでしょう。
◆ 勤務地限定正社員
転勤するエリアが限定されていたり、転居を伴う転勤がなかったり、あるいは転勤が一切ない正社

◆ 職務限定正社員
担当する職務内容や仕事の範囲が他の業務と明確に区別され、限定されている正社員

◆ 勤務時間限定正社員
所定労働時間がフルタイムではない、あるいは残業が免除されている正社員


有名どころでは、ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリングが、引っ越しを伴う転勤のない「地域正社員」という雇用区分を創設したことが、数年前、ずいぶん話題になりましたね。

参照 : 株式会社ファーストリテイリング「ユニクロ地域正社員募集」

今や多様な正社員制度を導入する企業は増え、正社員といえども従来と比較するとぐんと柔軟な働き方が可能になっています。下記の調査結果によると、調査対象のおよそ半数の企業が、何らかの多様な正社員制度を設けているとのことです。

参照 : 厚生労働省「『多様な形態による正社員』に関する研究会報告書」(企業アンケート調査結果)


「多様な正社員」が“無期転換対応”と“人材確保”のカギに


企業において、なぜ今、「多様な正社員」制度の導入が進んでいるのでしょうか ? その答えを導くキーワードが、“無期転換対応”と“人材確保”です。
無期転換ルールへの対応として、今、企業においては「転換後の労働者をどのような位置づけで受け入れるか」についての検討が進められていることでしょう。

あくまでルールに当てはめるだけであれば、“契約期間の定めをなくして待遇等は従来通り”といった扱いで何ら問題ないはずですが、そもそもこれまで正社員ではない「無期契約」の雇用区分のなかった会社においては、人事制度の再検討を進める必要が生じることになるでしょう。
こうした検討の中で、新たに「多様な正社員」の導入を視野に入れる企業は少なくないようです。

労働者にとっては、単に契約期間が取り除かれるだけの無期契約へ切り替えられるよりも、ワークライフバランスを兼ね備えた形で正社員として安定して働ける「多様な正社員」になれる方が、断然モチベーションが高まります。一方で企業側としては、労働者の定着が図られることにより人材管理がしやすくなる、労働者の勤労意欲の高まりが企業成長をもたらすといったメリットが期待できます。
つまり、「多様な正社員」の導入が、労使双方にとって魅力的な選択肢となり得る、というわけです。

また、企業においては、今後ますます進展する少子高齢化において「人材の確保」が困難になることが問題視されています。
政官民の有識者らによる「働き方の未来 2035」報告書 によると、こうした状況を打破するカギは「多様で柔軟な働き方を認めること」とのこと。

つまり、従来型の正社員の姿にとらわれない、労働者がそれぞれに合った働き方で活躍できる環境の整備を進めることが、これからの日本企業における課題となってくるのです。
「多様な正社員」という新たな雇用区分を設けることは、まさに企業が働き方の多様性を実現する第一歩と言えるのではないでしょうか ?


「多様な正社員」導入時に役立つリンク集


「多様な正社員」の導入を促進するために、政府から様々な情報ツールが提供されています。概要や導入のポイント、事例を理解するために、参考にしてみてください。

厚生労働省「多様な人材活用で輝く企業応援サイト」
「多様な正社員」を実際に導入している企業の事例や、パート・契約社員・派遣社員などの正社員化、処遇の改善、人材育成など、非正規雇用労働者のキャリアアップに向けた取組みを行っている企業の事例を紹介しています

厚生労働省『「多様な正社員」について』
多様な正社員導入のためのモデル就業規則と、円滑な導入・運用に向けたパンフレットを提供しています



まとめ


会社の規模感や業務内容、就業の状況等にもよりますが、多様な正社員制度を導入することで、企業における“適材適所”が実現されるケースは多々あるように感じられます。
また、何より「働く人のモチベーションアップが図られる」ことが、労働者のみならず、会社にとっても制度導入最大のメリットとなるように思います。

今号では概要のみのご紹介にとどまりましたが、今後も引き続きSHARES LABにて、多様な正社員制度導入のポイントや注意すべき点、実際の事例等のテーマを取り上げてまいります。
「多様な正社員」という制度をあらゆる観点から考察し、御社における導入の可能性を見極めるための一助となりましたら幸いです。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 社会保険労務士 丸山博美のページ

記事のキーワード*クリックすると関連記事が表示されます

メルマガ登録(毎週水曜配信)

SHARES LABの最新情報に加え、
経営に役立つ法制度の改正時事情報などをお送りします。