働き方改革の柱の一つである「同一労働同一賃金」に関連し、非正規・正規間の待遇差を巡る訴訟が各所で起こされています。
関連法の改正が進む中、司法はどのような判断を下しているのでしょうか ?
先日、またひとつ、ある訴訟への判決が言い渡されました。
この記事の目次
同一労働同一賃金の観点から、契約社員への手当の支払い命令が下される
9月14日に判決が出されたのは、日本郵便の契約社員3名による待遇差訴訟。
正社員同様の業務に従事する契約社員に対する、年末年始勤務手当や早出勤務手当、住居手当等の各種手当の不支給、病気休暇等の各種休暇の付与がないことについての違法性が問われた事案でした。
これについて、判決では「正社員の年末年始勤務手当の8割、住居手当の6割相当額の損害賠償命令」と「病気休暇等の各種休暇の付与がないことが不法行為に該当する」と判断され、原告側の勝訴となりました。
現行の労働契約法によると、正規雇用労働者と短時間労働者・有期契約労働者との間の待遇差については、「職務内容(業務内容・責任の程度)」「職務内容・配置の変更範囲(いわゆる「人材活用の仕組み」)」「その他の事情」の観点から、不合理であってはならないとされています。このあたりの解釈は、実態を踏まえて個別に検討されることとなり、司法判断は“合理性の有無”や“実態”に応じて異なる結果となっています。
参照 : 東京弁護士会「LIBRA 2017年2月号」より「近時の労働判例_第48回 大阪高判平成28年7月26日(ハマキョウレックス事件)」
参照 : 東京弁護士会「LIBRA 2017年4月号」より「近時の労働判例_第50回 東京高裁平成28年11月2日判決(長澤運輸事件)」
今一度確認したい、同一労働同一賃金ガイドライン案
企業における同一労働同一賃金を考える上では、改めて「同一労働同一賃金ガイドライン案」を確認しておくことが不可欠です。
既にSHARES LAB 「今後は「パートにも賞与支給」 ? 話題の『同一労働同一賃金』を考える」にてご案内した資料ではありますが、再掲しておきます。
参照 : 首相官邸『第5回 働き方改革実現会議』議事次第 資料3 同一労働同一賃金ガイドライン案
正規・非正規の労働条件を検討する場合、単に「雇用区分の違い」のみで待遇に差をつけるのではなく、「働き方の実態」に応じた適切な判断が求められます。また、あくまで「合理的な理由」があれば、必ずしも両者を同等の処遇とせずとも問題となりません。
非正規雇用労働者の処遇改善に有効なキャリアアップ助成金
同一労働同一賃金の実現に向け、有期契約労働者や短時間労働者、派遣労働者等の処遇改善やキャリアアップに活用したいのが、おなじみの「キャリアアップ助成金」です。
キャリアアップ助成金というと、比較的多いのが「正社員化コース」に関するご相談ですが、それ以外にも7コースが展開されており、非正規雇用の労働者向けに新たな取り組みをされる際には活用されることをお勧めします。
参照 : 厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内」
ちなみに、正規雇用の労働者向けに人材育成やキャリア形成支援制度の導入を行う場合には、キャリアアップ助成金ではなく、人材開発支援助成金の活用をご検討いただくことになります。
こちらは平成29年4月1日より、従来のキャリア形成促進助成金から名称・内容が変更された助成金制度となりますので、お間違えのないようご注意ください。
参照 : 厚生労働省「人材開発支援助成金(旧キャリア形成促進助成金)」
まとめ
従来、待遇差があって当たり前だった正規、非正規の関係性が少しずつ変わろうとしています。同一労働同一賃金が目指される中、今号でご紹介したような待遇差訴訟は、今後ますます数を増していくでしょう。
会社側には、これまでの正規・非正規に対する常識を改め、両者の処遇を今一度見直すことが求められます。
御社における正規・非正規の再定義と、それぞれが担う業務範囲や責任、権限の確認、それに基づく雇用契約書や就業規則の改訂等、今取り組むべきことの洗い出しと着手を早急に進めましょう。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 社会保険労務士 丸山博美のページ
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