働き方改革に伴う関係法律の整備に関わる情報として、今号でご紹介するのは「フレックスタイム制」についてのお話です。
現状「1ヵ月」を上限とする清算期間の変更、それに伴う割増賃金の支払いに関するルールの変更について、現段階で判明している内容を解説します。
この記事の目次
改正労基法施行に伴う「フレックスタイム制」の変更は平成31年4月1日から
働き方改革の推進に向け、先日、厚生労働大臣に対する答申が行われた「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」については、下記をご確認ください。
参照 : 労働政策審議会「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」
上記資料のうち、平成31年4月1日施行予定とされる法律案のひとつに、「フレックスタイム制」に関わる記述があります。
前号にてご紹介した「中小企業における月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予廃止」と併せて、たびたび見送りとなっている労基法改正項目の一つであるため、既にご存知の方も多いかもしれません。しかしながら、施行されれば実務に大きく影響を及ぼす内容ですから、確認されておくことをお勧めします。
何が変わる ? 「フレックスタイム制」の改正ポイント
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」におけるフレックスタイム制についての記載は、要綱8ページ以降をご確認ください。
参照 : 労働政策審議会「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」8ページ
ポイントをざっくりまとめると、概ね下記の通りです。
○ フレックスタイム制の清算期間の上限を3ヵ月とする
○ 清算期間が1ヵ月を超える場合、一週間当たりの労働時間が50時間を超えないようにすること
○ 清算期間が1ヵ月を超える場合で、一週間当たりの労働時間が50時間を超える分について、割増賃金を支払うこと。(ただし、この場合、実労働期間が清算期間に満たない者については、一週間当たり40時間を超える労働時間分について割増賃金を支払う)
○ 清算期間が1ヵ月を超える場合、一週間当たりの労働時間が50時間を超えないようにすること
○ 清算期間が1ヵ月を超える場合で、一週間当たりの労働時間が50時間を超える分について、割増賃金を支払うこと。(ただし、この場合、実労働期間が清算期間に満たない者については、一週間当たり40時間を超える労働時間分について割増賃金を支払う)
フレックスタイム制拡大のメリットとは ?
今回の改正の主軸は「清算期間が1ヵ月⇒3ヵ月」となることによる、フレックスタイム制の拡大であると言えます。
現在のフレックスタイム制では、労働時間の不足分を翌月の総労働時間数に加算することはできても(ただし、加算できる限度はその法定労働時間の総枠の範囲内とする)、法定労働時間数を超える労働分については同様の取扱いができず、あくまで清算期間(1ヵ月)での清算が必要でした。
この点、改正法が施行されると、3ヵ月間の中で労働時間を調整することができる様になります(ただし、週50時間を超える労働時間分については割増賃金の支払いあり)。
清算期間を広く設定することができるようになることで、企業においては、繁忙期と閑散期を考慮した上で、より柔軟な勤務時間の設定が可能になるはずです。
まとめ
労働基準法の改正に伴い、現場においては「ただでさえ複雑なフレックスタイム制が、ますます難しいものになってしまうのでは ? 」といったご懸念が出てくるものと思われます。
第一に「労使双方がルールを正しく理解すること」、その上で上手に制度を運用していくことが大前提です。
この機会に専門家のサポートを受け、御社の働き方改革にお役立て頂ければ幸いです。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 社会保険労務士 丸山博美のページ
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