有期雇用契約トラブル予防のためにできる2つのこと
労務



有期雇用契約とは、期間に定めのある労働契約のことを言い、有期雇用契約の労働者は「有期雇用労働者」と呼称されています。

有期雇用で働く人が契約更新を繰り返し、雇用契約の通算期間が5年を超えた場合は期間の定めのない無期雇用に転換できる労働契約法の「無期転換ルール」があります。
無期転換ルールでは、雇用契約の通算期間が5年を超えた労働者から「雇用契約を期間の定めのない契約に変更したい」申し入れがあった場合には、使用者はその申し入れを断ることができません。
無期転換ルールに関しては下記記事をご参照ください。

参照 : 今一度確認したい、有期契約労働者の「無期転換ルール」
参照 : 要確認 ! 無期転換ルール導入に伴う「4つの誤解」と「特例措置」

この記事の目次

雇止めをめぐるトラブル


契約期間の定めのある雇用契約を結んでいる労働者に対して、会社側の認識では「正社員ではないのだし期間満了で雇用を終了にできるだろう」と考えている場合があります。
しかし、労働者の側では「何年も契約を更新してきたし、契約更新も形式的なものだし、ずっと継続して働けるだろう」と考えることが多いです。

この認識の違いから、雇止めをめぐるトラブルが増えてきています。


トラブルを予防するために


雇止めに関するトラブルを予防するために、まずは雇い入れの際に「雇用契約の期間」と「契約の更新の有無」と「更新する場合の基準」を雇用契約書に明示することが必要です。

また、契約の更新の際にも「あなたは雇用契約の更新基準を満たしているから、契約を更新する」旨を労働者に伝えるようにし、労働者側で「自分の雇用契約は形式としては有期契約だけれども、実態としては期間の定めのない雇用契約と同じだ」という誤解を生まないようにすることも重要になります。


類型的な裁判例


仮に、雇止めをされた労働者が「この雇止めは無効だ ! 」と裁判を起こした場合、裁判所の判断は概ね下記のようになっています。

(1) 純粋有期契約タイプ
● 業務内容や契約上の地位が臨時的
● 更新の手続きが厳格に行われている
● 同様の地位にある労働者について過去に雇止めの例が多くある

この場合では期間満了後も雇用関係が継続するものと期待することに合理性は認められません。そのため、原則通り契約期間の満了によって契約関係は終了となり、雇止めの効力は認められます。

(2) 実質無期契約タイプ
● 業務内容が恒常的
● 更新手続きが形式的
● 雇用継続を期待させる会社側の言動がみられる
● 同様の地位にある労働者について過去に雇止めの例がほとんどない

この場合には、雇用契約の実態が期間の定めのない雇用契約と実質的に異ならないと判断されます。よって、ほとんどの裁判で雇止めは認められていません。

(3) 期待保護(反復更新)タイプ
● 業務内容が恒常的で更新回数が多い
● 業務内容が正社員と同一でない
● 同様に地位にある労働者について過去に雇止めの例がある

雇用継続への合理的な期待が認められる契約であるとされ、その理由として相当程度の反復更新の実態があげられる場合です。
この場合には雇用継続への合理的な期待が認められるため、雇止めは認められにくいです。例外的に、会社の経営上の理由による雇止めであれば、正社員の整理解雇とは判断基準が異なるとして雇止めが認められる場合もあります。

(4)期待保護(継続特約)タイプ
● 更新回数は概して少なく、契約締結の経緯が特殊な事例

契約締結時に特殊な雇用契約を結んでおり、雇用継続への合理的期待が当初の契約締結時等から生じていると認められる契約であるとされたものです。この場合には特殊な事情等の存在を理由として雇止めが認めらない事案が多いです。


さて、それでは正当な雇止めをするとして、使用者の方は雇止めをする場合には予告をしないといけないことをご存知でしょうか ?


雇止めの予告


使用者は有期雇用労働契約を更新しない場合には少なくとも契約期間が満了する日の30日前にその予告をする必要があります。
雇止めの予告の対象となる有期雇用労働者は以下です。

(1) 3回以上更新している

(2) 1年以下の契約期間の有期労働者契約が更新または反復更新され、最初に有期雇用契約を締結してから継続して通算1年を超える場合

(3) 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合

また、有期雇用労働者より雇止めの理由について証明書を請求された場合は、遅滞なく交付する必要があります。これは雇止の後に請求された場合も同じです。


明示するべき理由例


● 前回の契約更新時に、 本契約を更新しないことが合意されていたため
● 契約締結当初から、 更新回数の上限を設けており、 本契約は当該上限に係るものであるため
● 担当していた業務が終了、中止したため
● 事業縮小のため
● 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
● 職務命令に対する違反行為を行ったこと、 無断欠勤をしたこと等勤務不良のため


以上、明示するべき理由例は 厚生労働省 雇止めの予告、雇止めの理由の明示、契約期間についての配慮より抜粋


助成金の活用


有期雇用労働者を無期契約にしたときなどに受給できる助成金があります。
雇用転換する際は、ぜひご活用ください。

キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者など、「非正規雇用」の労働者を企業内でキャリアアップ促進するため、事業主に助成する制度です。



まとめ


有期労働契約における雇止めのトラブル予防についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
有期雇用契約でトラブルにならないために、これを機に一度社内の規程をご確認いただければと思います。

また、有期雇用労働者を無期契約または正規に転換することで、助成金を上手く活用することもできます。

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参照 : SHARES HP

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