募集・採用における「正しい年齢制限」の方法とは?
労務


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最近では若手起業家がぐんと数を増し、その活動も実に活発化してきています。若手ならではの新しいアイディアや抜群の行動力には、彼らをサポートする士業の立場として常々感心させられるものです。

さて、そんな若き起業家からしばしば寄せられるのが、
「事業拡大に向けて人を雇いたい。出来れば自分たち経営陣と同世代の人が良い」
といったご相談。

募集・採用において、現行法上、年齢制限をすることは可能なのでしょうか?
また、このような場合、そもそも本当に、“若手採用”にこだわる必要があるのでしょうか?

今一度、検討していくことにいたしましょう。

募集採用に伴う年齢制限は原則NG、ただし例外もあり

ひと昔前までは当たり前だった「○歳~○歳まで」等の求人広告上の文言は、近年ではすっかり姿を消しています。この背景には平成19年10月に施行された改正雇用対策法があり、現状、労働者の募集・採用にあたっては年齢制限を設けることができなくなっています。

ただし、例外的に年齢制限が認められるケースというのもあります。雇用対策法施行規則第1条の3第1項では、「例外となる場合」について下記の通り定めています。

<例外事由 1号>
定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

<例外事由 2号>
労働基準法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている場合

<例外事由 3号 イ>
長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

<例外事由 3号 ロ>
技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、 期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

<例外事由 3号 ハ>
芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合

<例外事由 3号 ニ>
60歳以上の高年齢者または特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる者に限定して募集・採用する場合


・・・と、法律条文ではあまり頭に入ってこない感じではありますが、具体的な例がハローワークのリーフレットで詳しく紹介されていますので、採用関連業務に従事する方はぜひご一読ください。

リーフレット:『その募集・採用 年齢にこだわっていませんか

若手に限定した募集が出来る例としては、概ね下記の2パターン、

<パターン1>
子役などの必要性からどうしても子供である必要がある場合

<パターン2>
「キャリア形成促進助成金(若年人材育成コース)」や「三年以内既卒者等採用定着奨励金」、「トライアル雇用助成金」等の雇用保険関係の助成金において、特に雇用が奨励されている年齢層や未経験者が対象となる場合

に、集約することができそうです。

「年齢制限」にとらわれないことで、新たな転機を迎えることも

現状、法律通りに募集・採用時の「年齢制限」を撤廃している企業でも、ふたを開けてみれば「選考段階では年齢を重視している」といった例はまだまだ見受けられます。特に、経営陣が比較的若手で占められている会社で、こうした傾向が強いように思われます。

確かに、スタッフを皆同世代に揃えることで、互いに打ち解けやすい、同じ勢いで高みを目指していきやすい等のメリットがあります。
しかしながら、“事業としての成長を目指す”といった意味では、創業当初の和気あいあいとした“内輪ノリ”からいち早く脱し、多様な視点や価値観を事業展開に反映させていくこともまた必要であるとも言えます。

異なる年齢層のスタッフを迎えることで、企業として、より一層広い視野で成長戦略を練ることができるようになるかもしれません。加えて、若年層に不足しがちな経験やノウハウを新規採用の年長スタッフが補う、といった事例も現場ではよくあるようです。
「我が社の新規採用者は○歳以下でなければならない」等のつまらない思い込みは、時に成長の妨げにもなり得ます。

戦略的な採用を考える上では、あくまで「人員増強を経て、今後会社がどんな展開をしていきたいか」「新たなスタッフに何を求めるか」を主軸に、求人広告のあり方を検討するのが得策であると感じます。
また、実際の募集時に思いがけない人材からの応募があったとしても、あらゆる可能性を前向きに検討できる柔軟な思考もまた、必要ではないでしょうか?

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