長時間労働是正の背景で、注意したい「持ち帰り残業増」の実態
労務



政府主導の働き方改革の柱の一つである「時間外労働の上限規制」。
両立支援や健康の確保を目的に、導入への準備が進められる本施策の背景で、目下懸念されているのが「持ち帰り残業の増加」です。

2017年10月に実施された連合総研による調査結果から、その実態を検証しましょう。


この記事の目次

正社員の4割が「持ち帰り残業」への対応あり


連合総研が毎年4月と10月に実施する『勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート(勤労者短観)』の2017年10月31日公表分の調査結果によると、正社員の実に5割超が、時間外の「メール・電話・SNSの対応」について「ある」と回答しています。

また、些細な対応だけでなく「業務を持ち帰っての対応(持ち帰り残業)」が「ある」と答えたのは、正社員の4割ほどであることが分かりました。
今後、労働時間の上限規制が導入されることで、この数字はますます大きなものとなっていくことが予想されます。


出典 : 連合総研「第34回『勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート(勤労者短観)』調査結果」

同調査では、時間外に行った業務・作業についての 1ヵ月あたり平均時間数は、「メール・電話・SNSの対応」が3.6 時間、「持ち帰り残業」が 5.5 時間であることも明らかになっています。

この結果を見る限り、時間数としてはさほど多くはない印象を受けますが、週実労働時間数の多い労働者ほど「持ち帰り残業」等も多くこなしていることが分かっています。
今後、社内で労働時間の長時間化是正のメインターゲットや施策を考える上で、こうした前提は注視すべきポイントであると言えます。


「持ち帰り残業」への賃金支払事情


持ち帰り残業については、通常、賃金が支払われていないケースがほとんどです。その理由としては「会社の命令ではなく、労働者が進んで行っていることだから」「労働時間の管理が難しいから」等が挙げられますが、法的にも労働者が自主的に行う(会社の指揮命令の下にない)持ち帰り残業への賃金支払義務はありません。

ただし、会社が労働者に対して持ち帰り残業を指示した場合、もしくは、明確な指示がなくとも業務時間内に終わらない業務量を要求したにも関わらず、社内に残っての処理を禁止した場合等には、持ち帰り残業に伴う労働時間数を適正に把握し、賃金を支払わなければなりません。


「持ち帰り残業」がもたらすリスクとは


現状、持ち帰り残業を黙認している会社は少なくないかもしれません。しかしながら、使用者の管理下にない持ち帰り残業には、放置しておくには危険過ぎる、思わぬリスクが潜んでいることを忘れてはなりません。
真っ先に考えられるのは「情報漏洩」です。会社を離れて別の場所で仕事をする場合、当然のことながら、会社の情報を外に持ち出すことになります。
例えばUSBに重要なデータを入れて持ち帰ったとして、それを紛失したとなれば、どうなるでしょうか?また、過去にはWinny等のファイル共有ソフトによる情報漏洩が問題化したこともありました。

加えて、「労災事故の増加」も懸念すべき点です。労働時間の長時間化により、労働者の健康は確実にむしばまれていきます。過労死は、昨今の労働問題の中でとりわけ重視されていますが、「ウチでは関係ない」と他人事として考えていてはいけません。ひょっとしたら使用者の見えない場所で、発生のリスクが高まっているかもしれないのです。

持ち帰り残業は、使用者の管理下にない労働とはいえ、実際に上記に挙げたことが起こってしまえば、業務との因果関係を否定することは極めて困難であると言えます。会社として実態を把握し、対策を検討しておくことは不可欠です。


まとめ


現状、御社の持ち帰り残業の実態はいかがでしょうか ? 働き方改革の一環として「時間外労働数の減少」を目標とする会社もあるでしょうが、上辺だけの数字で判断するのは禁物です。
持ち帰り残業の状況をも適正に把握し、本当の意味で労働時間の短縮につながるような施策を考えてまいりましょう。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 社会保険労務士 丸山博美のページ

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