長時間労働抑制のための大原則と、絶対やってはいけないこと
労務



衆議院選挙が終わり、政権与党が勝利したことで、「働き方改革」が再び加速していきそうです。長時間労働抑制はこの政策の中でも重要であり、今後、罰則付きの法改正が行われることが予想されます。
しかし、長年の長時間労働が染み付いた多くの日本企業では、すぐに働き方を改革できるとも思えません。

そこで、今後来る長時間労働抑制の波にのまれないように、今から企業がどのように対応すべきか、その大原則を解説します。


この記事の目次

やってはいけないこと


ズバリやってはいけないことは、最初にルールを作ることです。
プレミアムフライデーなる政策が定着に苦労しているように、ノー残業デーなどのルールを先に決めて、結果的に定着させている企業を、私は寡聞にして知りません。

仕事の中身を変えずにルールを作ったところで、仕事量に変化はありませんので、結局は現場が疲弊します。効果が無いばかりか、ルールを作る方の管理部門や上層部は「現場が言うことを聞かない」と言い、現場は「上が無茶を言う」という余計な対立を生むことになります。

なぜこんなルールが生まれるかというと、長時間労働の抑制を求める経営者や上司が、その施策を労務担当者や現場に丸投げしてしまうからです。まかされた方としては、先にルールを作って運用する方が早く指示に従ったことになり、管理者にもアピールできます。
このような施策は、仮に長時間労働の抑制ができなくても、「ルールを守らない方が悪い」と責任を転嫁できてしまいます。指示する方としては、結果を急ぐような指示はできるだけ避けなければいけません。

ノー残業デーのようなルール自体が悪いわけではありません。そのようなルールを作る前に、必ずすべきことがあるということです。


長時間労働の抑制のための大原則


そもそも、現在の労働時間を減らそうと思えば、究極的には3つしか方法はありません。

1、売上を下げる
2、人を雇う
3、時間あたりの生産性を上げる


しかし、1と2は会社の存亡にかかわりますので、そう簡単に取れる方法ではありません。そうなると、一般的に取れる施策としては、3の生産性を上げることになります。
生産性を上げるためには、現在の労働時間が長い原因がわからなければ対策は打てません。ルールを作る前に、なぜ長時間労働になるのか、その分析の方がはるかに大事なのです。

ある企業で社員の労働時間の分析をしたところ、報告書の作成に時間をかけていることがわかりました。そこで報告書のフォーマットを簡略化し、また紙の運用をシステム化したことで労働時間が削減した例があります。

また、別の会社では、社員のパソコンの閲覧履歴をチェックしたところ、一部社員が無関係なサイトを長時間見ていることがわかりました。そこで、机の並びを変えて上司から部下のパソコンの状況が見えるようにしたところ、労働時間削減の効果があったということもあります。

もちろん、これらの例で削れる時間は多くはないかもしれません。しかし原因を一つ一つ潰していくことが長労働時間の抑制につながるのです。ルール作りも大事ですが、それ以上に原因の分析に時間を使ってください。


顧客の要求で長時間労働になる ! その対策とは


このような原因の分析をしていくと、必ず出てくるのは「顧客の要求に応えるために長時間労働になっている」というケースです。この場合、現場にまかせていては絶対に解決しません。受注側も発注側もいったん長時間労働を前提にした仕組みができてしまうと、納期と品質を保証しなければならない現場の責任として、それを覆すことができないからです。

この場合、売る方の経営者や上層部から、顧客の経営者や上層部に対しての働きかけが不可欠です。例えば納期が短いところを残業でカバーしているのであれば、現場ではなく、経営者同士で今の納期がどれだけ長時間労働を生み出しているか、それを変えるために納期を延ばすといった施策を取れるか、といった話し合いを提案してみてください。
一見すると非常に難しい提案のように思えますが、そこは経営者同士です。相手も長時間労働に苦しんでいるかもしれず、共感を得られる可能性があります。

長時間労働の問題は、個々の会社の問題ではなく、日本全体の問題です。経営者や上司として、部下を守るという観点から、顧客企業を巻き込んででも長時間労働の抑制に取り組んでいただきたい、と思います。


まとめ


長時間労働の問題は、先にルールを作って強制的に運用しても、改善は見込めないどころか、社内の関係性を悪化させるリスクがあります。 まずは時間をかけてでも、長時間労働になる原因を調査しましょう。複数あると思われる原因に対して、一つ一つ、コツコツと対策を立てるようにしてください。社内だけでその調査が難しいようであれば、社労士などの第三者に客観的な立場で見てもらうように依頼するのも一つの方法です。

また、長時間労働の原因の中には、一つの会社内では解決しないものもあるはずです。顧客の存在が長時間労働の原因であれば、経営者や上層部が相手の会社を巻き込んで解決することも必要です。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 社会保険労務士 村田淳のページ

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