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さて、シリーズでご紹介している「従業員の育休取得」についてですが、今回はいよいよ「子が1歳6ヵ月になるまで育休延長しても、保育園に入園できないため職場復帰できない!」といったケースへの対応策です。実際に従業員からこうした連絡を受けたとき、会社としてどう対処するのが適切なのでしょうか?対応の仕方次第では、労使トラブルにも発展しかねないデリケートな事案です。
万が一の時のために、その取扱いについてはしっかりと検討されておくことをお勧めします!
「では退職してください」はNG!何かしら対策を講じるのは会社の義務です
妊娠・出産・育児というと、どうしても従業員個々の問題といったイメージがあるため、事業主の皆さんの中には「会社としてちゃんと育休を取得させたのだから、個人のためにそれ以上便宜を図る必要はないのでは?」
といったお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
ですが法律上、「3歳未満の子を養育する労働者」について、会社は次のいずれかの措置を講じなければならないとされています。
1 短時間勤務制度
(1) 1日の所定労働時間を短縮する制度
(2) 週又は月の所定労働時間を短縮する制度
(3) 週又は月の所定労働日数を短縮する制度(隔日勤務、特定の曜日のみの勤務等の制度をいいます。)
(4) 労働者が個々に勤務しない日又は時間を請求することを認める制度
2 フレックスタイム制
3 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
4 所定外労働をさせない制度
5 託児施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
(1) 1日の所定労働時間を短縮する制度
(2) 週又は月の所定労働時間を短縮する制度
(3) 週又は月の所定労働日数を短縮する制度(隔日勤務、特定の曜日のみの勤務等の制度をいいます。)
(4) 労働者が個々に勤務しない日又は時間を請求することを認める制度
2 フレックスタイム制
3 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
4 所定外労働をさせない制度
5 託児施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
その他これに準ずる便宜の供与の例として、ベビーシッターの費用を事業主が負担する等が考えられます。
なお、1歳(1歳6か月まで育児休業ができる場合にあっては、1歳6か月)以上の子を養育する労働者については、これらの措置の代わりに育児休業の制度に準ずる措置を講ずることでも差し支えありません。
参照:育児・介護休業法のあらまし - 厚生労働省
会社としては、上記のうちいずれか可能な措置を挙げ、従業員と相談しなければなりません。
仮に会社が何の措置もとらず、一方的に「復帰できないなら退職」とした場合には、会社は従業員の雇用継続のための義務を怠ったことになります。結果、従業員が退職した場合には「会社都合退職」となり、労使トラブルに発展したり、その後の雇用保険関係の助成金受給に影響をもたらしたり、といった可能性があります。
従業員の雇用継続のために、会社が出来ることとは?
大原則として、保育園に入園が出来ないために復帰が不可能となった従業員に対しては、極力誠意ある対応を心がけるべきです。保育園入園の可否は、地域によっては実に切実であり、認可外保育所や保育ママ等を含めても確保が難しい場合もあります。つまり、従業員本人の「働きたい」「復帰したい」という意欲に反して生じてしまう問題なのです。会社としてはまず、従業員本人の「復帰したい」という気持ちを確認した上で、“本人の希望”と“会社としてできること”を照らし合わせ、前向きに打開策を検討していきましょう。場合によっては、下記の取扱いにまで考慮する必要性も出てまいります。
・雇用契約の一時的な結び直し
アルバイトや在宅勤務としての迎え入れが可能であれば、預け先が見つかるまでの間、雇用形態を見直して可能な範囲で勤務できる様、取り計らうことも選択肢のひとつとなります。ただし、雇用形態が変わることにより雇用保険や社会保険に影響が生じるため、十分にリスクを説明する必要があります。
・無給の育児休業を取得させる
育児休業給付の支給は最大1歳6ヵ月までですが、社会保険料については法律上、最長3歳まで労使共に免除対象となっています。会社として状況が許すのであれば、育児休業の延長を認める制度を検討してみても良いでしょう。すでにどこかでお話しした通り、たとえ無給であっても、会社に籍を置いておけること自体、従業員にとっては意義あることかもしれません。
参考:育児休業保険料免除制度
もちろん、会社として無理なことに応じなければならないというわけではありません。ただし、従業員側の要望を受け入れられないときにこそ、誠意ある姿勢が求められます。
従業員としては、「会社はしっかりと考えてくれている」と実感できれば、仮に復帰できず退職となったときにも「辞めさせられた」となることはないと思います。
現場で特に多いのが、労使がそれぞれの主張を頑として曲げようとせず、トラブルになるケースです。双方がしっかりとコミュニケーションをとりつつ、あらゆる方向で可能性を探っていこうという姿勢が最重要となります。
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