「モンスター社員」対策の基本中の基本はこれだ !
労務



「モンスター社員」という言葉をよく周りで聞くようになりました。何やらおどろおどろしい名前ですが、会社にとって好ましくない、問題のある社員を一般的には差します。
私は社労士として、様々なタイプのモンスター社員の話をお伺いしてきました。

会社の外から見ると信じられないような話も多く、時には滑稽に聞こえることもあるのですが、経営者や人事の担当者から見ると、実は相当深い悩みであります。
モンスター社員と言っても様々なタイプがあり、一言で対策を説明できるものではありません。ここではモンスター社員対策の基本中の基本、どのタイプでも共通して認識しておくべきことを解説いたします。


この記事の目次

モンスター社員の定義


モンスター社員という言葉自体は、2000年代に「モンスターペアレンツ」といった言葉の派生で作られたものと推測します。
この言葉にはっきりとした定義が無いため、私は「会社に客観的に見て損害を与える行動を、仕事とは別の目的で行い、それを改めようとしない社員」と説明をしています。

「仕事とは別の目的で行い」という点がポイントです。例えば仕事が遅い社員の場合、その原因が本人の能力であれば、仕事そのものはやろうとしているので、モンスター社員というより「ダメ社員」といった方が良いでしょう。一方で露骨なサボりで遅いのであれば、サボって仕事以外のことをしているのですから、「モンスター社員」と言えます。

なぜこの区別をするかというと、「ダメ社員」か「モンスター社員」かによって、アプローチが変わってくるからです。ダメ社員であれば、最初の対策は教育でしかありません。あれこれ教育をして、どうしようもなくなった時に、配置転換などの施策があることになります。

一方で「モンスター社員」の場合は教育よりもルールで縛る方が先です。また、タイプによってはコミュニケーションの取り方で態度が変わることもあります。まずは、目の前の問題社員が「ダメ」なのか「モンスター」なのか、見立てを行いましょう。


モンスター社員が一人いることの損害


モンスター社員が一人いると、どれくらいの損害が出るのでしょうか。まず、その方の人件費です。払っている給与だけではなく、会社負担の社会保険料からその方の席にかかる賃貸料、利用するパソコンなどの諸費用など、細々したお金がかかっていることを忘れてはいけません。人件費の計算方法は業種によって変わってきますが、私は会社員時代、このような人件費をその人の給与の1.5倍で計算していました。
30万の月給の方なら人件費は45万円です。まずはこの分が無駄になっています。さらに深刻なのは、その方がいることで周りに影響が出るということです。

もしも、モンスター社員の存在に嫌気がさして退職する社員が一人出たらどうでしょうか。その方が生むはずの利益を逸し、かつ新たに採用する費用がかかります。全体の士気が下がるようなことがあれば、ちょっと計算ができないほどの損害が出ることになります。

ざっくりですが、モンスター社員が一人いることによる損失額は100万円/月はあるのではないでしょうか。特に企業規模が小さくなるほど、その損失の割合は大きくなります。
少なくない金額が毎月流出しているという前提で、モンスター社員対策は早めに取り組んでいただきたいところです。


対策の基本は就業規則


モンスター社員対策の基本は就業規則を作成して、厳格に運用をすることです。これだけはどんなモンスターでも絶対に外せません。労働各法は、戦後直後の「資本を持つ使用者」と「搾取される労働者」という対立関係を前提に、労働者を守るようにできています。

つまり例えモンスターであろうとも、いざとなったら法律は理不尽なほど労働者を守るのです。モンスター社員の中には、そのことを知っていて悪用するタイプの者もいます。
会社のルールとなる就業規則は、モンスター社員から会社と他の社員を守る唯一の盾と認識してください。

私が現場で良く見るのは、いろいろなサイトからダウンロードしてきたモデルの就業規則をそのまま利用している会社です。無いよりはましなのですが、そのような会社のほとんどで、実際の運用と就業規則に記載されている内容が異なっています。

このような場合、いざモンスター社員とトラブルになった時、有名無実化している就業規則に記載されたルールが裁判などで認められず、結果的に社員側に有利な判断が出ます。せっかく盾を持っていても手入れしていなければ、肝心の守りの役割を果たせないのです。会社に合った就業規則を作り、それを運用していくことで、初めて「盾」としての効果が出てくると心得てください。


まとめ


問題をたびたび起こす悩ましい社員については、まず「ダメ社員」なのか「モンスター社員」なのか切り分けましょう。
そのうえでモンスター社員をそのままにしておくことの損害を認識して、まずは就業規則の作成、見直しを、専門家も入れてじっくりと行ってみてください。

モンスター社員の存在は会社全体の生産性を大きく引き下げ、会社の存亡にまで影響しかねません。難しい問題ではありますが、早めに行動を起こしましょう。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 社会保険労務士 村田 淳のページ

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