知っておきたい働き方改革の流れ
労務



株式会社港国際ワークスタイル研究所 代表取締役/港国際社労士事務所 代表 近藤由香です。2017年は働き方改革という言葉と、それについての記事やニュースが毎日どこかで流れている、そんな一年でした。

そもそもどうしてこのように働き方改革が叫ばれているのでしょうか。
今一度原点に戻ってみましょう。


この記事の目次

なぜ働き方改革が言われているのか


よく言われていることですが、日本は人口減少時代に突入しています。このままの推移を辿ると2110年には4,286万人までに減少すると言われています。東京や都市部にいると人口の減少と言われてもピンときませんが、地方や郊外に出ると、「人が少ないな」「昔は子供で賑やかだったのに」という印象がある場所も少なくありません。そして人口が減少するということは、働き手の人口が減少するということに直結します。

また、人口減少の一方で、高齢化は進み、2035年には65歳到達者が全体の33.4%、3人に1人となります。また、2060年には39.9%となり、国民の2.5人に1人が65歳以上となるという統計も内閣府から出ています。

また、介護が必要になる年齢は75歳が分岐点と言われています。高齢社会白書によると、要介護になる年齢は74歳75歳未満が3%に対して、75歳以上は23.3%です。75歳から介護が必要になる人数が増加していることが分かります。つまり75歳以上の介護が必要になる人口の人数が大量に増えてくる、ということになるということです。働く方が、介護もしながら働くことが出来る環境を作る事、これが急務だと言えるのです。


国際比較から見る ! 日本の働き方とは


「日本は先進国で進んだ国だ」 このように考えている方も多いですが、国際比較を見ると、実はそのようなことはありません。

例えば、一人当たりの平均年間総実労働時間を比較したデータがあります。日本、アメリカ、イタリア、イギリス、フランス、ドイツ、これらの国で比較したデータがあります。日本単独で見ると、1988年の労働基準法の改正を契機に、労働時間は減少を続けてきました。

2009年には1714時間を記録し、その後若干増加し、2015年には1719時間となりました。国際的に比較をすると、1980年当時はこの6か国中ダントツに日本は労働時間が長かったものの、2015年のデータでは、アメリカが1790時間、イタリアが1725時間、日本が1719時間、イギリス1674時間、フランス1482時間、ドイツ1371時間となっています。アメリカよりは日本は労働時間について少なく、イタリアとほぼ横ばい、ドイツに比べるとはるかに働いているということが分かります。

こんなに働く日本人ですが、どの位生産性が高いのでしょうか ? 労働生産性は、GDPを就労者数で割って考えます。
つまり、働いた人一人当たりが生み出したGDPが、どの位あるかを見ます。実は日本の労働生産性は、OECD35か国中、18位です。上位3位は、ルクセンブルク、アイルランド、ノルウェーです。日本は他国に比べて長く働くにもかかわらず、生産性はいまいちという残念な結果になっているのです。


労働時間削減だけではない ? ! 働き方改革


このように、働き方改革は働き手が減少する中で、日本の国力を下げない、さらにアップさせるために必要であるということが分かります。ここまで言うと、働き方改革は労働時間を削減することがメインとも考えられます。ですが働き方改革は労働時間削減だけではありません。

2017年春に示された働き方改革実行計画によると、同じ仕事であれば同じ賃金を支払おうという同一労働同一賃金、罰則付き時間外労働の上限規制の導入、テレワーク、副業兼業、一度社会に出てももう一度学びなおしをするリカレント教育、病気の治療と仕事の両立など、様々な施策が出されています。その他にも、高齢者の就業促進、外国人材の受け入れ、障害者雇用なども含まれています。


まとめ


人口減少により一人一人が能力を最大限生かすことが必要な時代が来ています。最大限生かすには時間や場所に制約があっては生かせませんし、一つの企業だけで働くという枠も取っ払う必要があります。全ては「一人一人がそれぞれの経験や能力を最大限に活かすことが出来る社会を作る」ことに繋がっていて、企業はそれに沿った施策や制度を整えていく、そのような時代が2018年は本格的に到来すると言ってもよいでしょう。

単に働き方改革をすることが目的ではなく、これからの日本に関わる人々が、一人一人の能力を最大限に活かし、いきいきと溌剌に働く、そんな社会へのシフトが始まっているのです。

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参照 : SHARES HP

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