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「モンスター社員」対策の基本中の基本はこれだ !
意外とよく聞くのは、些細なことですぐに「切れて」しまう社員のことです。大声で怒鳴ったり、理屈にならない理屈や意味のない「べき論」で相手を必要以上に責め立てたりなど、感情的な対応を繰り返す社員がいます。
このような社員は相手を萎縮させ、会社全体の雰囲気を悪くします。やがて関係無い社員まで退職しかねません。ここでは、すぐに相手に対して切れてしまう社員への対応について、解説いたします。
一番いけない「切れ返し」
まず、先にしてはいけないのは相手に対して「切れる」ことです。仕事をする場で感情的になっている時点で、いわば相手は子どもの状態ですから、自分が同じ状態まで下りていく必要はありません。感情的になりたい気持ちもわかりますが、大人な対応を心掛けましょう。
特に相手が部下の場合、「切れ返し」をしてしまった時点で、油に火を注ぐだけではなく、パワハラで訴えられるリスクもあります。同じ対応をした時点で社会は弱い方を守ろうとするからです。
人間なので、理不尽な怒りには怒りで返したくなるのは仕方ありません。しかし、怒りには、必ず期待が裏にあります。その人に「こうあってほしい」という期待が裏切られたから、怒りに変わるのです。しかし、その期待は正当なものでしょうか。怒りの裏にある自分の期待について考えることで、自分を落ち着かせることができるかもしれません。
すぐに「切れ返し」をしてしまう人は、まずいったん落ち着く考え方を身につけるようにしてください。
部下からでも「パワハラ」は成立する
切れる行為とは、会社の雰囲気を乱す行為なので、服務規律違反と言えます。また、いわば相手を威嚇する行為ですので、パワハラの一種とも言えるでしょう。
就業規則にパワハラ規程があることを確認してください。就業規則が無ければ、すぐに作りましょう。パワハラとは、職場の権力を利用した嫌がらせを指しますが、この「権力」とは必ずしもラインの上下関係だけを指すものではありません。部下が技術的な優位性を持って上司や経営者にたてつく場合も、それが過ぎれば「パワハラ」になります。中小企業の場合、人が退職することによって受けるダメージが大きいので、それを利用するケースもあります。上司や経営者からパワハラを指摘することは心理的に躊躇してしまいがちですが、会社を守るためですので、厳格に対応していきましょう。
切れる社員に対して、最初に行うことは注意をすることです。この注意は、必ず書面に残してください。書面には具体的に「何月何日何時に」「どのような場面で」「誰に対して」「どのような行為を行った(言葉を言った)」と後から振り返られるようにすることです。これは後でトラブルになった時に有効です。相手に切れたという認識があれば始末書や顛末書を書かせるのが良いのですが、注意書という形で、客観的な観点で記載して相手に渡しても良いです。相手に渡す時は個室で、かつ後から言った言わないにならないように第三者(人事担当者など)も同席する形で渡すことをお薦めします。
このような注意を行うことが相手への抑止力になれば良いのですが、それでも繰り返すようであれば、懲戒処分も検討しましょう。その時に上の「注意を繰り返した」という客観的事実が有効になります。解雇まで考えるのであれば、証拠を積み重ねることが特に大事です。切れている様子の録音など、トラブルになっても客観的事実を突きつけられる準備を行ってください。
相手の心情に配慮せよ
モンスターが退職しても、また次の社員がモンスターになってしまう、とお悩みの場合は、良い人材がいないと嘆く前に、ご自分のコミュニケーション手法を見直してみてください。
特に経営者の方に多いのは、ご自分の知らないうちに相手の嫉妬を煽っているケースです。自分の成功体験を延々と語っていませんか ? 相手を鼓舞するつもりで発した成功体験が、相手にはただの自慢にしか聞こえていないかもしれません。
嫉妬は人間なら誰でも持っている感情です。普段は、それを大人だからという理由で押さえつけているにすぎません。だからこそ、必要以上に嫉妬の感情を刺激されると、思わぬところで制御できないくらい噴き出てしまうのです。
切れる行動は怒りの感情であり、怒りの感情の裏には期待があることは前にも書いた通りです。「すぐ切れる」モンスター社員には、相手に対する期待、世間に対する期待、自分に対する期待があり、それを裏切られていると感じるから切れているのです。
一見理不尽にも見えるモンスター社員の行動の裏には、期待への度重なる裏切りを感情的にならなければ処理できないという辛い気持ちが含まれています。
嫉妬感情を煽るような表現を控え、相手の期待に配慮することを心掛けることで、モンスターだった社員も変わっていくかもしれません。
まとめ
すぐ切れるモンスター社員に対して、切れ返しをすることは控えてください。大人な対応を心掛けながら、風紀を乱し、パワハラにもあたるような切れ方であれば、書面で注意を行ってください。
同時に、「切れさせやすい」コミュニケーションを取っていないか、見直してみてください。切れる感情の裏にある相手の期待を見つけることは、切れないコミュニケーションを取るうえで非常に有効です。
切れる社員のコントロールは難しいものがあります。特に社内で信頼関係が崩れている場合は、それを自分たちだけで再構築するのは容易ではありません。そのような場合は外部のカウンセラーなど、コミュニケーションに詳しい人に間に入っていただくのも一つの方法です。
特に経営者の方はこのような問題のときに孤独になりがちです。
一人で悩まずに専門家にご相談ください。
参照 : SHARES 社会保険労務士 村田 淳のページ