長時間労働に悩む事業主に朗報 ! 新設「時間外労働等改善助成金」とは ?
労務

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雇用関係助成金については、毎年4月に新設や統廃合が行われており、例年、年度末が近付くにつれその動向に注目が集まります。一足早いですが、先日実施された労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会にて、平成30年度新設予定の助成金情報が公開されました。働き方改革に関連する「時間外労働等改善助成金」とは、どのような場合に支給されるのでしょうか?

“時間外労働の上限規制”導入に伴い、活用したい「時間外労働等改善助成金」


このたび、来年度より開始が予定される助成金として公表されたのは、「時間外労働等改善助成金」です。中小企業における長時間労働是正支援の一環となるこの助成金は、“新設”とはいえ実は真新しいものではなく、既存の「職場意識改善助成金(時間外労働上限設定コース)」の拡充版としてスタートします。

参照:厚生労働省「職場意識改善助成金(時間外労働上限設定コース)」

現状、恒常的な長時間労働の発生にお悩みの事業主であれば、積極的に活用を検討すべき助成金です。さっそく、現在公開されている概要を確認しましょう。

時間外労働の上限見直しのため、「長時間労働是正に向けた取り組み」を行った事業主に最大200万円支給


「時間外労働等改善助成金」について、現段階で判明していることは、「対象事業主」「助成対象となる取り組み」「助成率」です。詳細は下記よりご確認いただけます。


出典:厚生労働省「「第68回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会_【参考1-5】時間外労働等改善助成金について」

対象事業主


① 時間外労働が月80時間(休日労働を含む)・年720時間を超える特別条項付き36協定を締結し、現に当該時間を超える時間外労働等を複数月(単月に複数名が行った場合を含む) 行った労働者がいた中小事業主
② 時間外労働が月80時間(休日労働を含む)・年720時間以 下の特別条項付き36協定を締結し、現に当該時間の範囲 の時間外労働等を複数月(単月に複数名が行った場合を含 む)行った労働者がいた中小事業主

助成率


助成対象となる取り組みにかかった費用の4/3
(事業規模30名以下かつ労働能率の増進に資する設備・機器等の経費が30万円を超える場合は、4/5を助成)

助成上限


[①の事業主]
平成30年度(又は平成31年度)に有効な36協定において、時間外労働の上限を
月45時間・年360時間以下に設定⇒ 上限150万円
※月45時間を超え月60時間以下の設定に留まった場合⇒ 上限額100万円
※月60時間超月80時間以下・年720時間以下の設定に留まった場合⇒上限額50万円

[②の事業主]
平成30年度(又は平成31年度)に有効な36協定において、時間外労働の上限を
月45時間・年360時間以下に設定⇒ 上限100万円

[①②の事業主共通の割増助成]
上限100万円
①又は②に加え、週休2日制とした場合、度合いに応じて上限額を加算
⇒ 4週当たり 4日増100万円、3日増75万円、2日増50万円、1日増25万円
※上限額合計は200万円

助成対象となる取組


・就業規則等の作成・変更費用
・研修費用(業務研修を含む)
・外部専門家によるコンサルティング費用
・労務管理用機器等の導入・更新費用
・労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新費用
・人材確保等のための費用等労働時間短縮や生産性向上に向けた取組に必要な経費

36協定は適正に締結されていますか?


「時間外労働等改善助成金」では、36協定を軸とした労働時間の見直しが必須となります。本助成金の申請を検討される場合には、まず、36協定の現状を改めて確認されておくことをお勧めします。そもそも、届出や更新が正しくされているでしょうか?対象事業主に該当する内容となっているでしょうか?

加えて、長時間労働の原因と解決策についても、検討を進めていく必要があります。この場合、まず現場の状況を正しく把握した上で、なぜ労働が長時間化してしまうのか、どうすれば長時間化を是正することができるのかを考えていくことが大切です。実態を把握できていない経営陣のみで机上の空論を並べたり、単純に他社の好事例を真似てみたりするだけでは、肝心な問題解決につながりません。必ず「現場」を把握することが先決となります。

また、取組内容が決まったとしても、今すぐに着手してはいけません。手続きの詳細は明らかになっていませんが、「事前に実施承認の申請→承認の決定」の流れを踏むことになると思われます。現段階では検討のみを進めておき、正式に助成金が新設されて以降、マニュアルに沿った手順で取り組んでいきましょう。

まとめ


少し早いですが、今号では、平成30年度新設の助成金に関する情報をご紹介しました。今後も新しい助成金情報が入り次第、随時、SHARES LABでお伝えしていきます。ご相談やご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。


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