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近年では、正社員だけでなく、派遣労働者や勤務地限定正社員、パートタイマーなどの様々な形で雇用されている労働者がいます。キャリアアップ助成金は、非正規雇用である彼らのキャリアアップを支援する事業主を、助成するために設けられています。キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金とは、有期契約労働者、短時間労働者、パートタイマー、アルバイト、派遣労働者などのいわゆる非正規雇用の労働者について、キャリアアップ促進のため、無期契約や正規雇用への転換、人材育成、処遇改善などを実施した事業主に対してもらえる助成金です。キャリアアップ助成金は、大きく以下の6つのコースに分かれています。
キャリアアップ助成金の6つのコース
■ 正規雇用等転換コース
■ 多様な正社員コース
■ 人材育成コース
■ 処遇改善コース
■ 健康管理コース
■ 短時間労働者の週所定労働時間延長コース
1.正規雇用等転換コース
正規雇用等転換コースは、就業規則または労働協約その他これに準じるもの(以下、「就業規則等」と言います)に規定した制度に基づき、有期契約労働者、パート労働者、派遣労働者等を正規雇用または無期雇用に転換、もしくは直接雇用した場合にもらえる助成金です。
(1)受給金額
受給できる金額は、以下の通りです。
<受給金額>
①有期→正規:1人当たり50万円(40万円)
②有期→無期:1人当たり20万円(15万円)
③無期→正規:1人当たり30万円(25万円)
※( )内は大企業の場合の金額です。
なお、①~③まで合わせて1年度1事業所当たり15人までもらえます。(②を実施する場合は10人までとなります)
派遣労働者を受入れ先企業が正規雇用労働者として直接雇用した場合には30万円が加算されます。
母子家庭の母等を転換等した場合にも一定の加算があります。
(2)手続きの流れについて
①有期労働契約者を採用し、半年以上雇用します。
②半年以上経過後、転換する1ヶ月前に労働局へ計画を提出した上で、各種転換を実施します。
③就業規則等へ転換ついての規定を定め、労働基準監督署へ届出します。
④転換から半年経過したのちに受給申請をします。
なお、有期から無期への転換の場合は、給与を5%以上アップする必要があります。
このコースでは、有期契約労働者や正規労働者などの定義や労働条件の違いを明確にしておくことがポイントとなります。
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2.多様な正社員コース
多様な正社員コースは、勤務地限定正社員制度を導入し適用した場合、有期契約労働者等を、勤務地限定正社員、職務限定正社員、短時間正社員に転換した場合、正規雇用労働者を短時間正社員に転換した場合などにもらえる助成金です。
(1)受給金額
受給できる金額は、以下の通りです。
<受給金額>
① 勤務地・職務限定正社員制度を新たに規定し適用
1事業所当たり40万円(30万円)
② 有期・無期 → 勤務地限定正社員、職務限定正社員、または短時間正社員
1人当たり30万円(25万円)
③ 正規雇用労働者を短時間正社員に転換、または短時間正社員の新たな雇入れ
1人当たり20万円(15万円)
※( )内は大企業の場合の金額です。
なお、①は1事業所当たり1回のみ、②及び③は1年度1事業所当たり10人までとなります。
①②について、派遣労働者を派遣先で勤務地限定正社員、職務限定正社員または短時間正社員として直接 雇用した場合に15万円が加算されます。
母子家庭の母等を転換等した場合にも一定の加算があります。
(2)手続きの流れについて
①正規雇用等転換コースと同様に、まずは、採用後半年以上雇用します。
②半年以上経過後、転換する1ヶ月前に労働局へ計画を提出した上で、各種転換を実施します。
③就業規則等へ転換についての規定を定め、労働基準監督署へ届出します。
④転換してから半年経過したのち2ヶ月以内に受給申請をします。
このコースも、正規雇用転換等コースと同様に、定義を明確にしておくことがポイントとなります。
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3.人材育成コース
人材育成コースは、有期契約労働者等に、一般職業訓練(Off-JT)、有期実習型訓練(「ジョブ・カード」を活用したOff-JTとOJTを組み合わせた3~6ヶ月の職業訓練) 、中長期的キャリア形成訓練(Off-JT)、育児休業中訓練(Off-JT)のいずれかを行った場合にもらえる助成金です。
(1)受給金額
受給できる金額は、1コースに訓練につき、以下の通りです。
<受給金額>
① Off-JT分の支給額
・賃金助成・・・1人1時間当たり 800円(500円)
※1人当たりの助成時間数は1,200時間を限度
・経費助成・・・1人当たり Off-JTの訓練時間数(*2)に応じた額
【一般職業訓練、有期実習型訓練、育児休業中訓練】
・100時間未満 10万円( 7万円)
・100時間以上200時間未満 20万円(15万円)
・200時間以上 30万円(20万円)
【中長期的キャリア形成訓練】
・100時間未満 15万円(10万円)
・100時間以上200時間未満 30万円(20万円)
・200時間以上 50万円(30万円)
※負担した実費が上記を下回る場合は実費を限度とし、1事業所あたり年間500万円が上限です。
② OJT分の支給額
・実施助成・・・1人1時間当たり 800円(700円)
※1人当たりの助成時間数は680時間を限度
※( )内は大企業の場合の金額です。
OJTとOff-JTを合わせた場合、最低1割以上はOff-JTでなければならず、また、最低20時間以上の訓練が対象となります。カリキュラムの内容は、マナー研修など基礎的なものではなく、受講者のキャリアアップにつながるある程度専門的な内容でなければなりません。
(2)手続きの流れについて
①訓練のカリキュラムの内容を確定し、訓練受講の1ヶ月前に労働局へ計画を提出します。
②訓練を実施します。
③訓練開始後1ヶ月以内に開始届を提出、訓練終了後2ヶ月以内に受給申請をします。
なお、有期実習型訓練の場合、訓練の実施前に、キャリアコンサルタントのコンサルティングを受けさせる必要があります。
このコースでは、各種訓練が、受講者のキャリアアップの促進につながるか?が対象となるかの重要な判断基準となります。
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4.処遇改善コース
処遇改善コースは、全有期契約労働者、雇用形態別や職種別など一部の有期契約労働者等の基本給の賃金テーブル等を2%以上増額改定し、昇給させた場合にもらえる助成金です。
(1)受給金額
受給できる金額は、以下の通りです。
<受給金額>
① すべての有期契約労働者等の賃金テーブル等を増額改定した場合
1人当たり3万円(2万円)
② 一部の賃金テーブル等を増額改定した場合
1人当たり1.5万円(1万円)
※1年度1事業所100人までとなります。
※ 上記において、職務評価の手法の活用により処遇改善を実施した場合に20万円(15万円)が加算されます。
※( )内は大企業の場合の金額です。
(2)手続きの流れについて
①賃金テーブルを用意し、3ヶ月以上運用を行います。
②3ヶ月の運用後、増額改定の1ヶ月前に労働局に計画を提出します。
③増額改定、増額改定後の賃金テーブルで半年以上賃金を支給したのち2ヶ月以内に受給申請をします。
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5.健康管理コース
健康管理コースは、有期契約労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を、就業規則等に新たに規定し、延べ4人以上実施した場合にもらえる助成金です。
(1)受給金額
受給できる金額は、以下の通りです。
<受給金額>
1事業所当たり 40万円(30万円)
※1事業所あたり1回のみです。
※有期契約労働者等の労働時間が、正規雇用労働者のおおむね3分の4以上の労働時間である場合、対象外となります。
(2)手続きの流れについて
①健康診断実施の1ヶ月前に労働局へ計画を提出します。
②延べ4人以上の有期雇用労働者等に健康診断を実施します。
③健康診断実施後2ヶ月以内に受給申請をします。
正規雇用労働者に健康診断を行っていない場合、対象とならなくなってしまうので、注意が必要です。
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6.短時間労働者の週所定労働時間延長コース
このコースは、週所定労働時間25時間未満の有期契約労働者等を週所定労働時間30時間以上に延長した場合にもらえる助成金です。
(1)受給金額
受給できる金額は、以下の通りです。
<受給金額>
1人当たり10万円(7.5万円)
多様な正社員コースの人数と合計し、1年度1事業所当たり10人までとなります。
※( )内は大企業の場合の金額です。
なお、週30時間となり、基本的には社会保険に加入させなければなりません。
(2)手続きの流れについて
①所定労働時間延長の1ヶ月前に労働局へ計画を提出します。
②延長を実施し、実施後2ヶ月以内に受給申請をします。
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まとめ
キャリアアップ助成金は受給要件が細かく複雑です。また、各種コースの申請には、就業規則、出勤簿、賃金台帳、雇用契約書など様々な書類を添付しなければならないため、多くの時間と労力が必要となります。社労士はこうした書類にも精通していますので、ご不安な方は社労士にご相談してみてください。
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