【キャリア形成促進助成金】各コースの支援内容を徹底解説!
労務

この記事の目次
キャリア形成促進助成金は、労働者のキャリア形成を効果的に促進するための職業訓練を行い、体系的な人材育成を実施した企業が、受給可能な助成金です。キャリア形成促進助成金は、労働者に対して実施する職業訓練の内容によって、下記の4つに分けられています。

1. 政策課題対応型訓練
2. 一般型訓練
3. 団体等実施型訓練
4. ものづくり人材育成訓練

この記事では、その中でも最もコースの種類が多様であり、助成要件が明確でわかりやすい、「政策課題対応型訓練」について紹介していきます。

目次


1. キャリア形成促進助成金の概要
2. 各コースの支援領域
3. 各コースの特徴・注意点
4. 受給前の留意点

1. キャリア形成促進助成金の概要


政策課題対応型訓練は、成長分野等に関連にする職業訓練や、育休から復帰後の職業訓練、事業の海外展開に伴う職業訓練などを、企業が労働者に対して実施することを支援する助成金です。職業訓練により、労働者のキャリアアップを促し、優秀な人材の育成や技術の継承、企業の生産性の向上を目的とした制度です。

政策課題対応型訓練は下記の8つのコースに分けられています。

1.成長分野等人材育成コース
助成金の対象となる健康・環境・農林漁業等の成長分野に関連する職業訓練を、雇用保険被保険者に対して実施した事業主に支給されます。

2.グローバル人材育成コース
海外関連業務に関連する訓練を、雇用保険被保険者に対して実施した事業主に支給されます。

3.育休中・復職後等能力アップコース
育児休業中または復職後、再就職後に、能力アップのための訓練を雇用保険被保険者に対して実施した事業主に支給されます。

4.中長期的キャリア形成コース
厚生労働大臣によって指定されている専門的・実践的な教育訓練を、雇用保険被保険者に対して実施した事業主に支給されます。

5.若年人材育成コース
雇用期間が5年以下である35歳未満の若年労働者に対して、職業訓練を実施した事業主に支給されます。

6.熟練技能育成・承継コース
熟練技能者の指導力強化や技能継承のための訓練を、労働者に対して実施した事業主に支給されます。

7.認定実習併用職業訓練コース
15歳以上45歳未満の労働者に対して、OJTとOff-JTを組み合わせた職業訓練を実施した事業主に支給されます。

8.自発的職業能力開発コース
労働者の自発的な職業訓練を支援した事業主に対して支給されます。
ページ上部に戻る

2. 各コースの支援領域


政策課題対応型訓練は各コースとも共通して、雇用保険被保険者に対して職業訓練を実施する必要があります。

コース支援する職業訓練
成長分野等人材育成コース成長分野に関連する職業訓練
グローバル人材育成コース海外関連業務に関する人材育成の職業訓練
育休中・復職後等能力アップコース育休・復職後・再就職後の能力アップに関する職業訓練
中長期的キャリア形成コース専門的・実践的な教育訓練
若年人材育成コース若年労働者に対する職業訓練
熟練技能育成・承継コース技術継承のための職業訓練
認定実習併用職業訓練コース厚生労働省の認定を受けた職業訓練
自発的職業能力開発コース従業員が資格取得等のために行う、自発的な能力開発

3. 各コースの特徴・注意点


1.成長分野等人材育成コース
成長分野等人材育成コースは、成長分野における事業をされている事業主におすすめのキャリア形成促進助成金です。
成長分野とは、農業・林業、医療・介護、情報通信業、建設業の一部、製造業の一部など、国を支える重点分野のことを指します。建設業・製造業の事業をされている事業主の方は、10.ものづくり人材育成訓練においても助成金を受給できる可能性があるので、併せてご覧になってください。

成長分野における業務は、ノウハウや技術の継承が重要なものが多く、職業訓練は必須事項です。職業訓練を実施する際に、併せて助成金を受給されることをおすすめします。

2.グローバル人材育成コース
グローバル人材育成コースは、海外関連業務についての従業員の育成を支援する助成金です。海外への事業展開を考えている事業主に、おすすめのキャリア形成促進助成金です。この職業訓練の中には、海外の大学や大学院で実施する訓練も含まれます。

海外関連業務とは以下のようなものです。

■ 海外関連業務
①海外事業拠点における管理業務
②海外市場調査
③提携、販売などの契約業務
④国際法務などの業務

近年グローバル化が進み、事業拡大を目論む多くの企業が海外への事業展開を行っております。その際に企業が必ず行うのが、海外市場調査です。

海外市場調査は、国内で調査した内容が実際に合致していたのかの検証や、国内で調べきれなかった細かな事項を調査するための非常に重要な業務です。これにより、企業の海外進出の是非が決まるといっても過言ではありません。海外展開を考えている事業主の方は、グローバル人材育成コースについて検討してみてください。

3.育休中・復職後等能力アップコース
育休中・復職後等納涼句アップコースは、従業員に子供が生まれ、育児休業する方がいる事業主におすすめのキャリア形成促進助成金です。

先日、米FacebookのCEO(最高経営責任者)であるマーク・ザッカーバーグ氏が、育休の取得を発表し大きな反響を呼んでいます。育休は、労働者の生活を支える重要な制度でありますが、企業にとっても負担があるのも事実です。

育休中は、業務を行わないためどうしてもブランクが発生してしまいます。そのブランクを埋めるため、育休取得をした労働者に対して、企業が職業訓練を行う必要があり、これが企業の負担となっているのです。そこで、この助成金を利用することで、職業訓練にかかる負担を最低限に抑えることができ、労働者のブランクの問題も解決することができるので、育休取得の可能性がある労働者がいる場合は是非ご活用ください。

また、労働者の育休取得は企業にとってメリットとなることも多数存在します。育休取得を支援する助成金も、この助成金以外に「両立支援等助成金」という助成金がありますので、労働者の育休取得の支援について是非検討してみてください。(参照記事:「マーク・ザッカーバーグも推奨!企業が育休を支援する4つのメリット」)

4.中長期的キャリア形成コース
中長期的キャリア形成コースは、専門的・実践的な教育訓練として指定されている講座(※専門実践教育訓練)を、従業員に受講させる予定がある事業主におすすめのキャリア形成促進助成金です。

■ 専門実践教育訓練
(1)建築士、看護師、理学療法士、美容師などの業務独占資格
(2)調理師、栄養士、介護福祉士などの名称独占資格
(3)専門学校の職業実践専門課程
(4)専門職大学院

専門実践教育訓練に指定されている資格はどれも、事業によっては必要不可欠な資格であり、訓練を受けていないと業務を行うことができません。上記のような専門的な知識を持つ労働者を必要としているのであれば、是非この助成金をご活用ください。
注意点:訓練費用を従業員に負担させた場合、支給対象外となります。

5.若年人材育成コース
若年人材育成コースは、社内平均年齢が高く若手の育成に力を入れたい事業主や、逆に従業員の年齢が全体的に若く、今後の企業発展のために優秀な人材の育成に力を入れたいと考えている事業主の方におすすめのキャリア形成促進助成金です。

訓練の対象となる労働者は、雇用期間が5年以内であり、35歳未満である必要があるのでご注意ください。

6.熟練技能育成・承継コース
熟練技能育成・承継コースは、社内での若手育成のために、熟練技能者の技能の承継を行うことを考えている事業主におすすめのキャリア形成促進助成金です。このコースは「技能者の指導力強化」、「技能者による技術承継の訓練」、「認定職業訓練」の3つに分かれており、いずれかについて実施することで助成金を受給することができます。

技術の承継には時間を要するため、企業側の負担も大きく、なかなか踏み出せないというのが実情です。しかし、技術職が必要な業務を行う企業では、熟練技能の承継は企業が存続していく上で、必ずぶつかる問題です。企業の負担という問題を解決するためにも、キャリア形成促進助成金を受給して、技能の承継を実施することをおすすめします。

7.認定実習併用職業訓練コース
認定実習併用職業訓練コースは、人材の育成のためにOJTとOff-JTによる訓練を、15歳以上45歳未満の労働者に対して実施することを考えている事業主の方におすすめのキャリア形成促進助成金です。

労働者に対して実施する訓練は、「認定実習併用職業訓練」というものである必要があり、これは事前に厚生労働大臣の認定を受ける必要があるのでご注意ください。また、細かな制約等がありますので、訓練計画を作成する際は、要件を十分ご確認ください。

8.自発的職業能力開発コース
自発的職業能力開発コースは、従業員の自発的な能力開発を支援するためものであり、従業員の能力を高め、企業の生産性を高めることを目的としている事業主の方におすすめのキャリア形成促進助成金です。
このコースでは、自発的である必要があるため、業務命令による能力開発では助成金を受給できません。しかし、社内で推奨する資格を取るために、従業員が自発的に講座を受講し、企業がそれを支援することで、助成金を受給することができます。
このように、企業側から従業員に「可能であれば取ってほしい」と考えている資格等を推奨し、従業員が自発的に訓練を受けることで、人材育成にかかるコストを抑えることができます。
ページ上部に戻る

受給前の留意点


キャリア形成促進助成金は受給要件が細かく複雑なものが多いです。また、受給するまでの手続等で、多くの時間と労力がかかります。キャリア形成促進助成金は、企業の人材育成にかかる負担を抑えるためのものです。助成金の受給のために、必要以上に労力を費やすことはおすすめできません。専門家への依頼などの手段を用いて、助成金申請にかかる時間や労力を最低限に抑えることを推奨します。

記事のキーワード*クリックすると関連記事が表示されます

メルマガ登録(毎週水曜配信)

SHARES LABの最新情報に加え、
経営に役立つ法制度の改正時事情報などをお送りします。