短期時効消滅で賃金未払いリスクが2.5倍大きくなる!
労務


報道によると、労働基準法にある未払い賃金請求権や年次有給休暇の請求権の期間について見直しがされるようです。

具体的には、両方とも現在の時効は2年ですが、平成32年度より5年に変更される見込みです。なぜこのような改正が検討されているのか、またその影響などについて、解説をいたします。

この記事の目次

1.そもそも「2年で時効」は例外規程


民法上の一般的な債権の消滅時効期間の原則は10年です。それでは、なぜ未払い賃金や年次有給休暇の請求権の時効は2年なのでしょうか。

実は、民法上では日常的に発生する少額な債権などに対して、1年から5年の短期的な時効を認めていました。さらに月給以下(時給、日給など)の単位の期間で定めた使用人の給料の債権は1年で時効となるとされていました。

未払い賃金や年次有給休暇の請求が「少額」かどうかはともかく、労働基準法ではこれらの債権を少額として扱い、かつ民法の規程を延長した時効の設定をしているということになります。ちなみに退職手当の請求権の時効は5年です。退職手当の金額は給与や年次有給休暇に比べて高額になりやすいためと言えるでしょう。

昨年、この民法が改正され、上記の使用人の給料の債権も含め、短期に消滅する時効がほぼ廃止されました。そのため、民法と労働基準法の間に齟齬ができてしまっているので、現在厚生労働省が「2年」という期間を再検討しているということになります。
改正後の民法では、一般債権の消滅時効期間を、以下のように定めています。

①債権者が権利を行使できることを知った時から5年
②権利を行使できる時から10年


この改正後の民法に合わせて、新しい時効が「5年」になる可能性が高いということになります。

2.賃金未払いのリスクが2.5倍になる!


例えば、20万円の基本給で5万円の固定残業手当を支給していたとします。この残業代は計算すると約30時間程度に相当しますが、規程上、固定残業時間の設定がなかったとします。

この状態で「毎月30時間残業している」と主張されて、未払い賃金の争いが起きたらどうなるでしょうか。

まず残業時間の設定が無いので、固定残業制そのものが否定される可能性が高いです。そのため、残業代として払っていたはずの5万円が基本給とみなされます。そのうえで30時間分の残業代を支給するように命じられるでしょう。つまり、25万円を基本給として計算する30時間分の残業代、約6万円が1ヶ月分の残業代として請求されてしまいます。

そして、これまでは6万×24ヶ月(2年)=144万円の請求になるところ、
今後6万×60ヶ月(5年)=360万円を請求される可能性が高くなったということです。一人当たりでこの金額ですので、固定残業制の社員全員に適用していたら、数千万円まで膨れ上がって、会社の存続まで影響しかねません。

3.知らなかったでは済まされない


年次有給休暇については、まだ休んだかどうか明白なのでわかりやすいのですが、怖いのは未払い賃金の方です。しっかり適法に払っているつもりが、実は適法ではなかった、という時に「知らなかった」では済まされません。

先ほどの例では、固定残業時間として認められる残業時間を就業規則や労働条件通知書に書いておけば防げる話です。
しかし、私の経験上、その手間を惜しんでいる会社も少なくありません。
規程の未整備から生まれるリスクが今後は増える可能性がありますので、ぜひ優先順位を上げて対応していただきたいです。

特に残業代については争点になりやすいです。残業代計算の基礎となる賃金、割増率、労働時間管理など適正に行われているか、今一度見直してください。
36協定の未提出も問題となりますので、提出はもちろん、1年に1度の更新まで行われているかチェックをすることをお薦めいたします。

まとめ


いかがでしたでしょうか。
短期時効の消滅によって、他にも書類の保存期間など実務にも大きく影響してくる可能性がありますので、労働法規の時効の変更に注目していきましょう。リスクが大きくなる話なので、就業規則や労務管理の適正化を進めていただくことが肝心です。

自分の会社の就業規則や労務管理が適正かどうか不安な方は、ぜひ一度、専門家である社会保険労務士にご相談ください。

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