新年度より変更となる雇用関係の数字として、SHARES LABではすでに平成30年度からの雇用保険料率と協会けんぽの健康保険料率をご紹介しています。
参考 :
SHARES LAB「平成30年度雇用保険料率は、平成29年度の料率据え置きの見込み」
SHARES LAB「4月納付分より変更予定 ! 平成30年度の健康保険料率案」
引き続いてご紹介するのは、平成30年度の労災保険料率。さっそく確認しましょう !
平成30年度の労災保険料率は、業種に応じて引き上げ・引き下げあり
労災保険料率については、昨年末、厚生労働大臣より労働政策審議会に対し、「引上げ3業種、据置き31業種、引下げ20業種」「平均労災保険率は1,000分の4.7→1,000分の4.5に引き下げ」の内容で諮問が行われていました。この内容を踏まえ、2月8日の官報において正式決定の料率が公開されました。
詳細は、下記よりご確認いただけます。
参考 : 厚生労働省「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令の施行について」
労災保険料は、年度更新時に雇用保険料と併せて申告・納付することになります。今年初めての年度更新を迎える事業主様は、まずは下記をご一読の上、年度更新の基本を心得ておかれることをお勧めします。
参考 : 厚生労働省「労働保険の年度更新とは」
ここからは、労災保険料率にまつわる“よくある質問”をご紹介することにしましょう。
複数の事業を展開する場合の労災保険料率は、どうやって決める?
企業において、労災保険料の異なる複数の事業を展開するケースは珍しくありません。この場合、労災保険料率はどのように算出するべきなのでしょうか?
結論としては、「その事業所の主たる業態」に対応する業種の労働保険料率によって、保険料が決まります。何を基準として「主たる業態」とするかは、「売上比率」や「人員比率」等の指標が考慮される場合がほとんどですが、このあたりの判断は都道府県によって異なります。売上比率のみが参考にされる場合もあれば、人員比率も含めて総合的に判断されるケースもある等、実態は様々なようです。詳細は、所轄の労働基準監督署に問い合わせをされると良いでしょう。
労災保険料率は、労災事故を起こすと翌年は高くなる?
弊事務所に寄せられるご相談の中には、「労災保険を使うと、次の年の保険料が高くなってしまいますか?」というお問い合わせが少なくありません。この問いについては、必ずしも高額になるケースばかりではないことから、会社規模や業種等を参考に、個別に検討する必要があります。
労災保険には、給付された保険金の額を保険料に反映させる「メリット制」という制度があります。しかしながら、この制度は対象が限られており、具体的には下記の要件に該当する場合にのみ適用されます。
① 事業の継続性
メリット制が適用される保険年度の前々保険年度に属する3月 31 日(以下「基準日」という)の時点において、労災保険の保険関係が成立してから3年以上経過していること。
② 事業の規模
基準日の属する保険年度の前々保険年度から遡って連続する3保険年度中(以下「収支率算定期間」という)の各年度において、使用した労働者数に関して、次の A または B のいずれかを満たしていること。
A:100 人以上の労働者を使用した事業であること。
B:20 人以上 100 人未満の労働者を使用した事業であって、災害度係数が 0.4 以上であること。災害度係数は、以下の計算式で算定します。
災害度係数 = 労働者数 ×(業種ごとの労災保険率-非業務災害率)≧0.4
出典 : 厚生労働省「労災保険のメリット制について」
よって、少なくとも従業員数20名未満の会社において、メリット制は適用されません。
メリット制はかなり複雑な制度のため、まずは上記URLより概要を把握しましょう。SHARES LABでは、稿を改めて解説する予定です。
加えて、有期事業のメリット制については平成24年度より改正されています。建設の事業や立木の伐採の事業に関係する企業であれば、併せて確認しましょう。
参考 : 厚生労働省「有期事業のメリット制を改正します」
まとめ
今号では、新年度から変わる数字として「労災保険料率」をテーマにご紹介しました。本稿を、御社の事業に対応する保険料率の確認にお役立てください。
「労災保険」といってもあまりピンとこない事業主様もいらっしゃるかもしれませんが、万が一の際、従業員の生活を補償するための重要な保険制度です。労災保険について、疑問に感じられることがございましたら、お気軽に社会保険労務士までお問い合わせください。