遅くとも「5月末まで」の申請を ! 続・「特定労働者派遣事業」から改正後の「労働者派遣事業」への切替手続
労務


労働者派遣法の改正に伴い、いよいよ今年9月に特定派遣が廃止されることを受け、弊事務所には新規の派遣許可申請に関わるご相談が非常に多く寄せられています。
本稿では、特定派遣からの切り替えの場合にいつまでに申請すれば間に合うのか ? 労働者派遣事業許可申請の要件は ? など、気になるポイントを解説します。

この記事の目次

特定派遣からの切り替えは、遅くとも「5月末」までに行いましょう


特定派遣からの切り替えをご検討中のお客様から、特に多いお問い合わせは「いつまでに申請をしなければならないのか」です。この点、現時点での結論としては「5月末までの申請書受理」がデッドラインとお考えいただくのが妥当といえます。
5月中に申請書が受理された場合、通常、許可までの流れは下記の通りです。

5月 申請書受理

6月 労働局内審査(書類審査・実地調査)

7月 厚生労働省内審査 問題なければ下旬に許可証交付

8月 1日付許可


「8月に許可が下りれば、9月の特定派遣廃止に余裕で間に合うのでは」と思われた方、ご注意ください。
都道府県労働局宛に新規の許可申請が殺到していることから、今後、審査に通常よりも多くの時間を要する可能性があります。東京労働局のウェブサイトには、こんな注意喚起が掲載されています。

出典 : 東京労働局「労働者派遣事業関係」

弊事務所による申請代行の際、平成30年2月中の申請書提出の段階では通常のタイムスケジュールでの案内がありましたが(申請書受理月の3ヵ月後となる5月1日付許可予定)、これからはどうなるかわかりません。特定派遣が廃止される9月に許可を得るためには、最低限「通常のスケジュール+1ヵ月(=つまり、5月の申請書受理)」を想定して準備されることをお勧めします。

労働者派遣事業の許可申請のための3大要件とは?


労働者派遣事業の許可申請に必要な要件のうち、申請者にとってネックとなり得るのは、下記の3点をクリアすることです。

参考 : SHARES LAB「平成27年法改正で厳格化 ! 労働者派遣事業許可申請に向けてのスケジュールチェック」

1.資産要件


1) 資産の総額から負債の総額を控除した金額(基準資産額)が、[2,000万円 × 派遣を行う事業所数]以上であること

2) 上記の基準資産額が、負債総額の7分の1以上であること

3) 現預金額が、[1,500万円 × 派遣を行う事業所数]以上であること
※ただし、特定派遣からの切り替えに限り、配慮措置あり
① 1つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が10人以下である中小企業事業主
(当分の間)
・基準資産額 1,000万円
・現金・預金の額 800万円


⇒ 資産要件に関しては、「基準資産の見方」が特殊であったり、申請のタイミングによって「いつの決算期の書類を提出すべきか」が異なってきたりと、判断が難しいと感じられることも。万全を期すためには、労働局もしくは社会保険労務士に確認をとっておくことが必須です。

2.事業所要件


・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)で規制する風俗営業や性風俗特殊営業等が密集するなど事業の運営に好ましくない位置にないこと
・事業に使用し得る面積がおおむね20㎡以上あること


⇒ 上記の他にも、「事業所レイアウト」に関して労働局が求めるポイントがいくつかあります。申請に先立ち、労働局または社会保険労務士に確認しておくと安心です。

3.キャリア形成支援制度


・派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めていること
・キャリアコンサルティングの相談窓口を設置しており、雇用するすべての派遣労働者が利用できること
・キャリア形成を念頭に置いた派遣先提供のための事務手引、マニュアル等が整備されていること
・教育訓練の時期や一定の期間ごとに、一定の教育訓練が用意されていること


⇒ 教育訓練計画の立案で求められるのは、派遣労働者に対する「継続的、段階的な教育」です。下記の記事を参考に、御社独自の教育内容を検討しましょう。

参考 : SHARES LAB「「キャリアアップ措置」は何をすべき ? 労働者派遣事業許可申請対応マニュアル」

労働者派遣事業の許可申請に要する準備期間は「2ヵ月以上」!社会保険労務士の活用がカギ


届出制だった特定派遣と比較すると、許可制の労働者派遣事業の申請は、想像以上にハードルの高いものとなります。前項に挙げた要件を満たさなければならないことに加え、膨大な添付書類を揃えること、申請書を作成することを考えれば、ゆうに1ヵ月はかかります。

また、場合によっては労働者派遣事業の許可申請に先立ち、“+α”の下準備が必要になることもあります。

・社会保険加入状況の整備
・定款、就業規則や労働契約書の整備
・特定派遣届出時からの変更事項に関わる変更届の提出


これらについて対応が必要になれば、準備期間は最低でも1ヵ月は追加になるでしょう。

冒頭では「5月中までの申請書受理」が必要である旨に触れましたが、2ヵ月の準備期間を考慮すると、遅くとも3月には着手する必要があります。本稿執筆の時点ですでに2月も終わろうとしていますから、もう時間がありません。

労働局の申請窓口では、企業の担当者様が、膨大な申請書類に無数の付箋(つまり、不備の指摘)をつけられ、途方に暮れている姿を散見します。今後、特定派遣からの切り替えに取り組まれる場合、労働者派遣事業許可申請に精通する社会保険労務士を活用することで、申請を極力スムーズに進めていくのが得策です。

まとめ


特定派遣からの切り替えには、期限があります。必要な準備期間を考慮し、申請期限から逆算すれば、今すぐにでも許可申請に着手しなければなりません。「このままでは間に合わないかも!」とご不安な場合には、ぜひお早めに社会保険労務士までご相談ください。

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