使用者と労働者の間でトラブルになったときに厄介なのが、第三者が介入してくるケースです。特に労働者側の親が介入してくると、感情を優先させて子を守りにかかるので、なかなか建設的な話し合いに発展させることができません。
ここでは、特に「親」を想定しながら、労使間トラブルに第三者が一方的に入ってきたときの対応について解説をいたします。
1.最初が肝心。「本人でなければ話ができない」の一点張りで良い
基本的に、仕事をしている以上は一人の大人ですので、その親と言っても会社にとっては第三者です。いくら話し合いを求めてきても、それに応じる義務は会社にはありません。「本人でなければ話ができない」と一点張りで結構です。
よく保証人として、親の名前を記載させることがありますが、これも社員本人の身分を保証しているだけで、本人の代理人ではありません。
最初が肝心です。途中から本人を出せと言っても、ならばなぜ今までは聴いていたのだ、という反論を許してしまいます。「本人でない人間が言っても埒が明かない」という雰囲気を作って、第三者の介入を防ぎましょう。
2.それでも引き下がらなければ録音を。「営業妨害」を訴える。
とは言っても、相手の頭に血がのぼっていると、簡単に終わらせることはできないかもしれません。何度本人でなければ話ができないと言っても聞かなければ、「録音します」と宣言してください。
最近ではスマートフォンで簡単に録音ができるようになりました。いざという時に録音ができるように、その操作方法を確認しておくことをお勧めします。
「営業妨害です」という主張は有効です。このようなケースでは、訴える側にリスクが無いと認識しているから強く出られるのです。
自分にとってリスクがあるとわかれば、「〇〇(弁護士、労働組合など)に訴えてやる!」と捨て台詞をはいて引き下がる可能性は高いです。親が出てくるようなケースで、本当に訴えられて困ったという話はあまり聞きません。
3.親向けの説明会やパーティーを行う
そもそも、会社に親が訴えてくるような場合、親が子どもの会社に最初から不信感を持っていることが多いです。
子どもには有名な会社に入ってほしい、という願望を持つ親は少なくありません。もちろん、会社の知名度とそこで働く価値というのはまったく関係ないのですが、知名度が低いというだけで、一部の親は「よくわからない会社が自分の願望を潰した」という理不尽な不信感を会社に持ってしまいます。
ある会社では、内定者の親向けに会社の説明会を行いました。あるいは飲み会やパーティーをセッティングして、親も招待しても良いでしょう。そこで会社の理念やビジョンの説明を行い、自社の魅力を親にも刷り込むのです。
親と事前に接点を作っておくことが、親のモンスター化の予防として役に立ちます。顔と人柄がわかっている人に対して、理不尽なクレームは入れづらいはずなのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
会社と労働者がトラブルになった時、親が介入して良い方向に話が進んだケースを、私は寡聞にして知りません。第三者の介入は毅然とした態度で防ぐことが基本線になります。
度が過ぎれば営業妨害や脅迫行為とみなして、しかるべき機関と連携を取る、ということも選択肢には入ってくるでしょう。
一方で小さな会社というのは、社長や社員の魅力で成り立っていることが多く、その魅力が親に伝わっていないのは、とても勿体ないと私は思います。
モンスター化の予防はもちろん、会社の味方を増やすという観点でも、社員だけではなく、ぜひ社員の親とも積極的にコミュニケーションを取ってみてください。
今回は親が介入してきたケースを想定して記事を書いていますが、いざトラブルとなると、そのトラブルに関係ある無しにかかわらず、様々な第三者が登場することもあります。
労使間のトラブルで登場人物が多くなったら、その整理のためにも専門家である社会保険労務士にご相談をすることをお勧めいたします。