ルール作りは万全ですか ? 今一度確認したい政府公開の「テレワークガイドライン」
労務


この記事の目次
昨今の働き方改革において、注目される多様な勤務形態。とりわけ、事業所以外での就業を認める「テレワーク」については、一般企業において少しずつではありますが、導入の検討が増えつつあるようです。

新たな勤務制度の導入に先立ち「社内体制の整備」は必須となりますが、現場においては未だ、半ば見切り発車での制度導入が散見され、労務上のトラブルの火種となっていることもあります。

このたび公開された雇用型テレワークに関わるガイドラインをもとに、今一度、社内におけるルール作りに目を向けましょう。以降は、厚生労働省が平成30年3月に新たに公表したガイドラインより重要なポイントを抜粋してご紹介します。

厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」

テレワークであっても、「就業場所の明示」が望ましいとされています


ひと口に「テレワーク」といっても、その実態は様々です。例えば、就業場所については、「在宅」の他、通常の事業所以外のオフィスでの就業となる「サテライトオフィス」や、労働者が柔軟に働く場所を選択する「モバイルワーク」といった3タイプに分けることができます。

テレワークの導入企業の中には、「就業場所は労働者に委ねる」として会社が一切把握せず、自由に働かせている例もあるようです。しかしながら、労働基準法第15条および労働基準法施行規則第5条第1項第1の3号において、「使用者は、労働契約を締結する際、労働者に対し、賃金や労働時間のほかに、就業の場所に関する事項等を明示しなければならない」と定めていることから、「就業場所」についても会社が認める場所を明示しておく必要がある旨、今回のガイドラインに明記されています。

また、単純に労務管理の観点からも、社員がどこで業務遂行しているかを会社が一切把握していない状態というのは好ましいものではありません。

テレワークであっても、会社は労働者に対し、「就業場所として望ましい(就業が可能な)場所」の明示
をするようにしましょう。

「テレワーカーの勤怠管理」は事業主の義務です


通常の事業所と離れた場所での就業に伴い、事業主が頭を悩ませるのは「勤怠管理」でしょう。社内にいれば社員の様子は見て分かりますが、会社を離れてしまえばその行動を逐次把握することは困難です。始業・終業時刻や時間外・休日労働の状況、休憩の時間帯等、最低限事業主が把握すべき勤怠をどのように収集し、管理するかを、テレワーク導入に先立ち十分に検討しておかなければなりません。この点、同ガイドラインより、「通常の労働時間の管理」と「中抜け時間(業務に従事しない時間)」に関する記述を下記に抜粋しておきます。

通常の労働時間の管理について


「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成 29 年1月 20 日策定)に基づいた適切な労働時間管理が必要
→労働時間を記録する原則的な方法は、パソコンの使用時間の記録等の「客観的な記録」によること
自己申告はやむを得ない場合のみ

参考 : 厚生労働「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置 に関するガイドライン」

中抜け時間について


使用者が業務の指示をしないこととし、労働者が労働から離れ、自由に利用することが保障されている
場合には、その開始と終了の時間を報告させる等により、休憩時間として扱い、労働者のニーズに応じ、始業時刻を繰り上げる、又は終業時刻を繰り下げることや、その時間を休憩時間ではなく時間単位の年次有給休暇として取り扱うことが考えられる

テレワーク制度の導入に伴い、勤怠管理の方法の見直しが必要になる会社は少なくないでしょう。特に、タイムカードや出勤簿による従来型の管理方法を採用している場合には、出社しない社員への対応は急務であると言えます。最近では、パソコンやスマホ等から始業・終業の打刻や休憩時間の入力、時間外・休日労働の申請が可能なクラウド型勤怠管理システムの活用がずいぶん広がってきているようです。

労働時間制の導入には「労使協定」や「就業規則への定め」が必要です


テレワークに従事する社員に対し、フレックスタイム制や裁量労働制、事業場外みなし労働時間制等、通常とは異なる労働時間制を適用する場合もあるでしょう。その場合、テレワーク関連の規定とは別に、個々の労働時間制に関わる労使協定の締結や就業規則への定めを適正に行うことが必須です。社労士として一般企業の労務管理に携わると、しばしば、特殊な労働時間制に関わる規定が不十分であるケースを散見します。このあたりのポイントについては、政府のリーフレットにて解説されています。SHARES LABでも今後、別記事にて解説することにします。

参考 :
東京労働局「事業場外労働に関するみなし労働時間制の適正な運用のために」
東京労働局「フレックスタイム制の適正な導入のために」
厚生労働省「裁量労働制の概要」

まとめ


テレワークは、出社勤務への対応が難しい労働者の活用を推進する新しい働き方であり、今後ますます進展する労働力不足の状況下においては積極的な導入が目指されるべきです。とはいえ、テレワークという働き方は、まだまだ中小企業においては未知の働き方と位置付けられているケースも少なくありません。御社にて導入を検討中であれば、一度ガイドラインに目を通し、まずは会社として準備すべきことを把握されておくことをお勧めします。

ご不明な点は、SHARES公認の社会保険労務士までご相談ください。

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