特定派遣からの切り替えの必要に伴い、中には、個人事業主の方で労働者派遣事業許可申請を検討しているケースもあるでしょう。法人と異なり、少々情報が不足しがちな個人の派遣許可申請について、そのポイントをご紹介します。
この記事の目次
法人と個人の労働者派遣事業許可申請の違いは「資産要件の見方」
労働者派遣事業許可申請は、法人であれ個人事業主様であれ、その方法は原則同じです。ただし、添付書類が若干異なります。
特に違いがあるのは「資産要件の見方」でしょう。個人事業主様の場合、直近年度の確定申告書の内容から、資産要件を確認することになります。平成30年9月29日までに行うべき特定派遣からの切り替えについては、平成29年度の確定申告書類を添付します。つまり、今秋までに確実に許可申請を通すためには、平成29年度の確定申告時に戦略を練っておくことが必要だった、というわけです。
資産要件の確認に必要な情報を、図で確認してみましょう。
出典 : 国税庁「様式検索_平成 年分青色申告決算書(一般用)(平成25年分以降用)」
出典 : 東京労働局「労働者派遣事業計画書(様式第3号第1面)」
確定申告の際に作成する「賃借対照表」と、派遣許可申請書類の「資産等の状況」は、色分けの通りに対応しています。申請書にある「その他」欄には、「資産額(計)」から「現金・預金」と「土地・建物」の合算額を減じた額が入ります。これらの数字を元に、派遣許可申請に必要な資産要件が満たせているかどうかが判断されます。
原則
基準資産額 ≧ 2,000万円 × 事業所数
自己名義現金預金額 ≧ 1,500万円 × 事業所数
ただし、個人事業主様の場合で特定からの切り替えであれば、配慮措置の適用を受けるケースがほとんどかもしれません。その場合の資産要件は、下記の通りとなります。
小規模派遣元事業主への配慮措置
1つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が10人以下である中小企業事業主(当分の間)
基準資産額 1,000万円以上
現金・預金の額 800万円以上
基準資産額≧負債÷7
「キャリア形成支援制度を有することを証する書類」は「労働条件通知書」が適切
その他、個人事業主様の労働者派遣許可申請時に添付が求められるであろう書類は下記の通りです。
・労働条件通知書(兼雇用契約書)
個人の小規模事業所では、就業規則が作成されていないことが多いですが、その場合にも派遣許可申請は可能です。「キャリア形成支援制度を有することを証する書類」として「労働条件通知書(兼雇用契約書)」に必要な記載のあるものを提出します。
特定派遣の場合、そもそも派遣労働者としての雇い入れではないため、労働条件通知書内に派遣労働を前提とした記述を盛り込むのは???と思われる方もいらっしゃるかもしれません。この点、東京労働局によると、「派遣に関わる記述はあくまで労働条件通知書で確認できるのが原則」との見解とのことです。私が以前、申請時に「派遣先で就業させる場合、別途就業条件明示書にて詳細を通知する」と記載した雇用契約書と就業条件明示書をセットで提出した際、受理はされましたが、担当官は就業条件明示書に「表題にはないが、労働条件通知書として本人と交わしている書類である」旨を追記していました。なので、原則「労働条件通知書」の提出が求められるようです。
※ 緩和された資産要件で申請する場合
・財産的基礎に関する誓約書(様式第16号)
・常時雇用する派遣労働者数の報告(様式第17号)
・労働者名簿(申請月の前月末現在(前月末で把握が困難な場合は前々月現在)のもので、派遣労働者を含む全労働者分)
※雇用保険、健康保険、厚生年金保険に未加入の派遣労働者がいる場合
・雇用保険等の被保険者資格取得の状況報告書
事業所に加え「代表者の自宅」にも実地調査が入ることも
私が代行をさせていただいた個人事業主様の派遣許可申請では、「代表者のご自宅」にも実地調査が入る旨の説明を受けました。その理由としては、「緩和された資産要件(1つの事業所であることが原則)での申請であること」、そして「個人事業主の申請であること」が説明されましたが、すべてのケースでこのような取扱いがされるかは現状、明らかではありません。
自宅への実地調査は「事業を行っていないことの確認」のためとのことなので、単純に住まいである場合には何ら問題なく終了します。
まとめ
個人事業主様の労働者派遣事業許可申請は、法人の申請と比べて圧倒的に数が少ないため、情報収集に苦労されることと思います。許可申請を円滑に進めるためには、実績ある社会保険労務士へのご相談が得策です。
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