有給休暇をお金に換えたい! 有給休暇の買い取りに関する疑問を専門家が解説
労務


有給休暇が発生しても、その効力は2年間というのが労働基準法の決まりです。つまり、せっかく発生した有給休暇の権利も2年経つと消えてしまいます。会社員の方であれば、消えてしまうくらいなら、せめてお金に換えてほしいと思った方も少なくないでしょう。
では、実際に有給休暇の買い取りは認められるのでしょうか、有給休暇をお金に換えるルールについて、解説をいたします。

この記事の目次

1.有給休暇は原則買い取りできない


そもそも有給休暇とは、労働者が心身をリフレッシュさせるために認められた権利です。その権利をお金に換えてしまえば、リフレッシュできずに生産性が下がることになります。有給休暇の買い取りというのは、有給休暇そのものの制度の主旨にそぐわないのです。原則として有給休暇の買い取りはできないと認識してください。

そもそも、この買い取り制度が認められた場合、この買い取りを前提とした賃金制度ができてしまう可能性があり、有給休暇制度が有名無実のものになってしまうかもしれません。会社員なら一度は考える有給休暇の買い取りも、制度にしてしまうと労働者にとって非常に危険な制度になることはおわかりいただけると思います。

2.有給休暇の買い取りが認められる場合もある


ただし、例外的に認められるケースもあります。まず、法定の有給休暇の付与日数を超えた部分の買い取りです。法定の付与日数とは、以下のリンクの通りになります。
参照 : 法定の付与日数

この日数を上回る有給休暇制度を実施していて、その上回った部分を買い取ることは可能です。
また、退職や時効による有給休暇の消滅により、使えなかった分の有給休暇を買い取ることもまた認められます。既にその有給休暇が使えず、買い取っても有給休暇制度の主旨に反しないことは明らかだからです。

どちらも就業規則でその制度を明示しておく必要があります。
なお、買い取った金額はいわゆる賞与の扱いになります。賞与支払届の提出が必要になりますので、ご注意ください。

3.積立休暇制度の利用で、有給の不満の解決を


現在の日本における会社員の有給休暇の取得率は50%程度です。約半分は使われずに消えてしまうのが現状です。買い取りができないのは理解できても、権利を使い切れないのでは、不満が溜まるのも無理ありません。

そこで、使い切れなかった有給休暇を貯めておいて、いざ傷病などで有給休暇を使い切った後でも休まざるを得ないような場合のみ使えるような積立休暇の制度を取ってはいかがでしょうか。有給の未消化というのは、病気などのリスクが上がっているとも言えるでしょう。積立休暇の制度があることで、リスクが上がっている状態でも雇用が保証されているということになり、職場の定着率アップが期待できます。

積立休暇の制度は、有給休暇の移行であることから、有給であった方が説明はしやすく、社員の納得感も高くなります。一方で有給であることは経営の負担にもつながりますので、積立休暇には上限日数をつけても良いでしょう。

まとめ


いかがでしたでしょうか。
有給休暇の買い取りは原則認められませんが、退職や時効の消滅など、有給休暇の制度の主旨に反しないようなケースでは認められるときもあります。
また有給休暇の時効消滅時に、その日数を別の休暇制度に移行させるなどで、社員の納得感を得る方法もあります。

とは言っても、有給休暇はそもそも労働者の心身を休めて生産性を上げるためにあります。まずはきちんと有給休暇を消化させることが大原則です。有給休暇の買い取りは最後の手段であると心得てください。

有給休暇の制度は法の要請と、自社の働き方と両方を勘案して作成しなければいけません。どのような制度にすべきか、どのような運用にするのか、迷ったら専門家であるお近くの社会保険労務士にぜひご相談ください。

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