貸与したパソコンを壊された!損害賠償ができるのか、専門家が解説
労務


今やパソコンは仕事上欠かせない大事なツールです。それでいて、決して安いものではありません。仕事でパソコンを貸与していて、それを壊されてしまっては、経営者としてはたまったものではないでしょう。

しかし、パソコンを壊したと言って、社員にその責任を押し付けられるでしょうか。ここでは、特にパソコンを何らかの理由で壊してしまった場合の対応について解説いたします。

この記事の目次

1.全額弁償は難しい。過失の具合による。

高いものを壊してしまったのだから、全額弁償してほしい、というのが経営者側の言い分だと思います。

まず就業規則に「会社に損害を与えた場合は、その損害の金額を請求することがある」と書いてあることを確認してください。それが無ければ、損害を請求することは難しいでしょう。

しかも、事前に損害賠償の金額を定めておくことを賠償予定と言いますが、これは労働基準法上で禁止されています。つまり、「パソコン壊したら20万円」というような規則を作ることはできないということです。
社員に弁償請求できるのは、あくまで事故が起きた後の実損額になります。

それでも、全額弁償を請求できるケースはほとんど無いと思われます。判例では、居眠りによって機械を損傷させたケースで、様々な要因から認められた金額は、損害額の1/4程度でした。
例えばコーヒーをこぼすような軽い不注意による故障では、弁償請求は行き過ぎと判断される可能性が高いと思われます。

2.損害額を給与から引くことはできない。

損害額が出たとしても、その金額を給与から会社が勝手に差し引くことはできません。必ず社員の同意が必要です。
給与から差し引くことができる項目というのは、労働基準法上で決まっており、税金と社会保険料以外では、労使協定などによって労働者との同意が必要になるためです。

損害賠償を請求するにしても、給与から差し引くのではなく、本人から受け取るなどの手続きが必要になります。つまり、本人の納得が無い状態で会社が損害賠償額を受け取ることはできない、と心得ていただきたいところです。

3.パソコンはいつか壊れる。前もって準備を。

パソコンを壊されても、社員に全額弁償させるのは厳しいでしょう。経営者の方から見ると納得いかないかもしれません。
しかしそのパソコンは、これまで会社に利益をもたらして、会社に貢献していたのも事実です。会社はそれまでそのパソコンで利益を得ていたわけですから、破損などのリスクも会社と社員で相応に分担すべき、というのが考え方になります。

経営者ができることは、バックアップを適宜取得しておくこと、予備のパソコンを用意しておいて、いざとなればそちらに切り替えることで、パソコンが動かなったときのリスクヘッジを少しでも考えておくことなのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今あなたがこの画面を見ているパソコンは、数時間後に壊れているかもしれません。それくらいデリケートなものです。パソコンの周りでは蓋のついていない飲み物は置かないなど、扱いには最大限に注意していただくとともに、社員にもその扱い方を教育してください。そのパソコンは与えられたものではなく、貸与されたものであるという意識付けが必要になります。

パソコンが壊れたからといって、その社員に弁償を求めるのは、よっぽどの強い理由が無い限り、お薦めはできません。
それならば、いつか壊れるものと割り切って、保険のつもりでバックアップや代替機のコストをかける方が、弁償するしないで社員と対立するトラブルになるよりも、ずっと実務的にも心理的にも負担にならないはずです。

もちろん、個々の状況によっては弁償請求を行いたいケースもあるでしょう。そんな時はぜひお近くの社会保険労務士にご相談ください。

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