「そういえば、しばらく見直していないな」という会社は要注意です。ひょっとしたら、従業員の給与が最低賃金以下の違法状態となっているかもしれません。
平成28年度は、全国的に最低賃金が大幅引き上げの見込み
厚生労働省のホームページでは、第46回中央最低賃金審議会によってまとめられた「平成28年度地域別最低賃金額改定の目安」が公表されています。
これによると、今年度の各都道府県の最低賃金引上げ額の目安については、 “Aランク25円、Bランク24円、Cランク22円、Dランク21円”とされており、いずれも最低賃金が時給で決まるようになった 平成14年度以降で最高額となる引上げが見込まれているとのことです。
(参考)各都道府県に適用される目安のランク
ランク | 都道府県 |
---|---|
A | 千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 |
B | 茨城、栃木、埼玉、富山、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島 |
C | 北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、山梨、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、香川、福岡 |
D | 青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 |
平成28年度地域別最低賃金額改定の目安について(厚生労働省)より抜粋
最低賃金の大幅引き上げを受け、会社が留意すべきは「最低賃金以上の給与の保障」です。時給制のパート・アルバイトについてはもちろん、月給制の正社員についても時給換算し、1時間あたりの賃金が都道府県の最低賃金を上回るかを確認しましょう。
例えば東京都の場合、平成27年10月からの最低賃金が907円となっており、今年の10月以降はさらに25円の引き上げが見込まれていますから、最低でも「時給932円」の基準をクリアする必要があります。
意外と盲点となる「固定残業代」
最近では、基本給とは別に、固定残業代を設定している会社が増えていますが、当然こちらにも最低賃金が適用されます。
東京の場合、平成28年10月以降、いわゆる「残業代(1時間あたり)」は最低でも下記の賃金を上回るようにしなければなりません。
ただし、法定時間外労働1時間あたりの時給は個々の労働者の時給に応じて正しく計算される必要があります。単に「1165円」の基準をクリアすれば良いというわけではありませんので、くれぐれもご注意ください。
従業員個々の給与が最低賃金以上かどうかを確認する方法として、厚生労働省ホームページでは下記の通り解説していますので、参考にしてみてください。
参照 : 厚生労働省『最低賃金額以上かどうかを確認する方法』
年に1度は給与テーブルの見直しを!
今回ご紹介した通り、最低賃金は毎年10月に改定されていますので、これに合わせて従業員の給与を総点検するようにしましょう。
仮に、労使双方の合意により、最低賃金額より低い賃金での労働契約が交わされていたとしても、それは法律によって無効とされ、自動的に最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
また、固定残業代については、小さな会社の場合、社長が「ウチは毎月2万円残業代を出すよ」などと感覚で決めているケースもあるようですが、これは厳禁。従業員個々の時給に合った額を算出し、設定する必要があります。併せて、固定残業代として何時間の時間外労働が想定されているのかを明確にしておくことが重要です。