起業したての会社の役員に社会保険の加入は必要か。役員の社会保険について、専門家が解説。
労務


役員と言うと、高給取りなイメージがあるかもしれません。しかし、スタートアップの企業であれば、無報酬や低額で役員として事業を営んでいる方も少なくありません。そのような企業では、社会保険料も大きな負担となります。

ここでは、起業したての方が受ける役員報酬と社会保険料の関係について、解説をいたします。

この記事の目次

1.法人であれば社会保険加入は必須。だけど報酬がなければ加入は不要

まず、前提として「法人」であれば、1人社長でも社会保険への加入は必須になります。ちなみに社会保険とは、ここでは健康保険、介護保険、厚生年金保険を指します。労働保険(雇用保険、労災保険)は雇用される人がいてはじめて加入が必要になります。1人社長であれば、社会保険加入は必要だけど、労働保険加入は必要ないということです。

ただし、報酬が無いということであれば、そもそも支払える社会保険料が無いということになるので、加入の必要はありません。正確には、加入を申請しても断られる、ということになります。

2.実態として、その会社の業務に従事しているかもポイント

役員といっても実態は様々と思われます。特に複数の会社の役員を兼任していたり、会社にお勤めでありながら、別の会社の役員であったりというケースもあります。

実は、このあたりの加入義務について、明確な決まりはありません。社員の場合は、正社員の3/4の労働時間であれば加入義務があるという明確な基準がありますが、役員の場合は、そもそも労働時間という考え方が合わないので、この基準に従う必要もありません。

要はその会社の業務に実際に従事しているかどうかが問われます。例えば、創業者が引退して業務を退いているが、役員報酬を恩恵的に支払っているケースがあります。この場合は業務に従事していると言えないので、社会保険に加入させる必要はありません。

基準が無いので、迷うケースがあれば、年金事務所へ加入の必要があるか個別にご相談されることをお勧めいたします。

3.低額な報酬で社会保険料を節約する

最初に無報酬なら社会保険の加入は必要ないと書きましたが、社会保険に入っていないということは、同時に国民健康保険と国民年金への加入が義務になります。日本は皆保険制度なので、保険に入っていないという状態を許しません。

国民健康保険は昨年の収入をベースに保険料が決まりますので、脱サラして起業する場合、支払うべき国民健康保険料は会社員時代の収入がベースになるはずです。つまり高額な国民健康保険料を無報酬の状態で支払う必要が出てきます。

社会保険料は受け取る報酬額から計算されます。つまり、法人を設立するのであれば、低額でも役員報酬を設定して、安い報酬から社会保険料を支払う方が、社会保険料の負担という点でお得になる可能性が高いということになります。

法人設立の際、報酬の設定は社会保険料の負担も考慮に入れながら検討することをお勧めします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
法人の役員が社会保険に加入するかどうかは、報酬があるか無いかと、その就労実態で決まります。当人が何かしらの保険に入る必要がありますので、できるだけ報酬を設定して社会保険に加入した方が、負担は少なくなるケースが多いと思われます。

起業したての社会保険加入については、本業でやることが多くて、ついつい後回しになりがちです。しかし、社会保険の加入は法律の要請というだけではなく、会社やご自分のお財布を直撃する切実な問題であることも事実です。ぜひ早目にご検討ください。

起業したての忙しい方であれば、検討する時間ももったいないのではないでしょうか。
それであれば、お気軽にお近くの年金事務所や社会保険労務士にお問い合わせください。

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