業種によっては、成績でその月の給与が決まる制度を採用している会社もあります。営業職の方では、特に多いのではないでしょうか。
「歩合給」「コミッション」などいろいろな言葉がありますが、意味合いとしては似ていて、要は成績に比例して支給される給与項目を指します。
その中でも「完全歩合給」「フルコミッション制度」という言葉が出てきたら要注意です。
すべての給与が仕事の成績によって決まるという制度で使われる言葉ですが、そもそも雇用契約では、このような制度は認められないからです。
ここでは、よくある完全歩合給に対する誤解や、歩合給に対する注意すべき点について解説いたします。
1.完全歩合制で雇用するのは違法!今の契約が適正か、労使とも見直しを。
「完全歩合制」「フルコミッション」で検索をして、その採用条件をよく見てください。一般的に、そこには「業務委託」と書いてあります。つまり、雇用契約ではないのです。雇用契約と業務委託契約では、指揮命令権の有無が大きく違います。
業務委託契約の場合は仕事のやり方、進め方を決める権利は業務を受託している側にあります。
雇用契約の場合、会社は生活ができる程度の給与を払う必要があります。
最低賃金法の賃金を上回ることはもちろん、労働基準法の第27条や通達により「出来高払制の労働者について、労働時間に応じ一定額の賃金を保障しなければならない」とされています。
保障とは一般的に平均賃金の60%くらいと言われています。
そのため、完全歩合制で雇用をして、その月の営業成績が悪かったので給与無し、というのは労働基準法違反ということになります。
2. 有給休暇の付与方法に注意
業務委託契約の場合、雇用ではないので、有給休暇は発生しません。しかし、歩合給のある雇用契約の場合は、通常の社員と同様に有給休暇が発生します。
問題は有給休暇の賃金をどのように計算するか、ということです。
原則はその賃金算定期間に得た歩合給分をプラスする必要があります。
つまり、歩合給として稼いだ金額をその月の労働時間で割って、1時間あたりで稼いだ歩合給を算出してから、有給取得した時間数をかけて算出をします。
例を挙げます。
1日の所定労働時間が8時間、歩合給が180,000円、その月に働いた労働時間が残業含めて180時間だった場合、
1時間あたりの歩合給が1,000円、1日の有給休暇の賃金は8,000円ということになります。
つまり、毎月歩合給が変わるということは、有給休暇取得時の賃金も変わるということです。
その他、平均賃金を支払う、社会保険の標準報酬月額を元にするという方法もあります。
標準報酬月額を使う場合は、就業規則への記載の他、労使協定が必要になりますが、比較的、上記のような計算の煩わしさから解放されるとも言えるでしょう。
3. 残業代の計算では「1ヶ月分」か「2ヶ月分」かで大きく違う
歩合給も残業代割増の基礎賃金に含む必要があります。毎月歩合給を支給しているということは、残業代割増の基礎賃金も毎月変わるということです。
一方で残業代割増の基礎賃金には「1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」は含まなくても良いことになっています。
つまり、歩合を1ヶ月毎に支給するのか、2ヶ月以上の期間の単位で計算して支給するのかによって、残業代の計算に大きく影響してくるということです。
経営者の立場で言えば、残業代を抑えるには、歩合給は2ヶ月以上の単位にする、または賞与で支給した方が良いということになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。「完全歩合給」で働いていて、かつ雇用契約のようにいろいろ指示されながら働いている方は、一度入社時の契約書を見直してみてください。
また、歩合給の方が有給休暇や残業を行った場合、その賃金の計算が適切か、ぜひ一度見直していただきたいと思います。
今の歩合給での働き方、賃金の支給方法で疑問に思った方は、ぜひお近くの労働基準監督署または社会保険労務士にお気軽にお問い合わせください。