【働き方改革】高度プロフェッショナル制度の対象業務、厚労省が素案公開
労務


働き方改革関連法案の成立により、2019年4月からの導入が決定している「高度プロフェッショナル制度」。
第148回労働政策審議会労働条件分科会では、労働者側にとって最大の関心事となる「年収」「対象業務」に関わる議論が進められています。

この記事の目次

そもそも「高度プロフェッショナル制度」とは?

「脱時間給制度」とも言い換えられる高度プロフェッショナル制度とは、労働時間ではなく「成果」による評価制度のこと。
このたびの働き方改革では、「時間外労働の上限規制」の導入が予定される一方で、高度な専門知識を有し、一定水準以上の年収の労働者を労働時間の規制対象から外される見込みとなっています。
多様な働き方のひとつとなる高度プロフェッショナル制度ですが、一方で「長時間労働や過労死を助長する」などの批判もあり、今後の動向が注目されてきました。

どうなる?「高度プロフェッショナル制度」の「対象業務」

先月開催された第148回労働政策審議会労働条件分科会において、厚生労働省からは高度プロフェッショナル制度の導入フロー、対象業務、そして年収要件などの素案が公開されました。 高度プロフェッショナル制度の対象となる5業務について、対象となる業務・対象とならない業務の具体例が示されています。

(1)金融商品の開発業務

金融取引のリスクを減らしてより効率的に利益を得るため、金融工学のほか、統計学、数学、経済学等の知識をもって確率モデル等の作成、更新を行い、これによるシミュレーションの実施、その結果の検証等の技法を駆使した新たな金融商品の開発の業務


※対象外業務
・ 金融サービスの企画立案又は構築の業務
・ 金融商品の売買の業務、資産運用の業務
・ 市場動向分析の業務
・ 保険商品又は共済の開発に際してアクチュアリーが通常行う業務
・ 商品名の変更のみをもって行う金融商品の開発の業務
・ 専らデータの入力・整理を行う業務

(2)金融商品のディーリング業務

● 投資判断に基づく資産運用(指図を含む。)の業務
(資産運用会社等におけるファンドマネージャーの業務)
● 投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務
(資産運用会社等におけるトレーダーの業務)
●証券会社等におけるディーラーの業務
(自社の資金で株式や債券などを売買する業務)


※対象外業務
・ 有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断を伴わない顧客からの注文の取次の業務
・ ファンドマネージャー、トレーダー、ディーラーの業務の補助の業務
・ 金融機関の窓口業務

(3)アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)

有価証券等に関する高度の専門知識と分析技術を応用して分析し、当該分析の結果を踏まえて評価を行い、これら自らの分析又は評価結果に基づいて運用担当者等に対し有価証券の投資に関する助言を行う業務


※対象外業務
・ ポートフォリオを構築又は管理する業務
・ 一定の時間を設定して行う相談業務
・ 専ら分析のためのデータ入力・整理を行う業務

(4)コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)

企業に対して事業・業務の再編、人事等社内制度の改革など経営戦略に直結する業務改革案などを提案し、その実現に向けてアドバイスや支援をしていく業務


※対象外業務
・ 調査、分析のみを行う業務
・ 調査、分析を行わず、助言のみを行う業務
・ 専ら時間配分を顧客の都合に合わせざるを得ない相談業務
・ 個人顧客を対象とする助言の業務

(5)研究開発業務

新たな技術の開発、新たな技術を導入して行う管理方法の構築、新素材や新型モデル・サービスの開発等の業務


※対象外業務
・ 作業工程、作業手順等の日々のスケジュールが使用者からの指示により定められ、そのスケジュールに従わなければならない業務
・ 既存の商品やサービスにとどまり、技術的改善を伴わない業務

出典:厚生労働省「第148回労働政策審議会労働条件分科会_高度プロフェッショナル制度の対象業務(素案)」

総じて「他者からスケジュール管理を受ける業務」「関連業務であっても専門知識に基づく判断や業務遂行を要しない業務」が対象外となり、対象業務に従事する範囲は限定的となりそうです。また、「個人向けのコンサルティング業務」が対象外となる点も特徴的といえます。

それぞれの詳細については、素案をご確認いただければと思います。

「高度プロフェッショナル制度」の対象となる「年収要件」

高度プロフェッショナル制度の対象者の年収について、法律上は「平均の3倍を相当程度上回る水準」とされており、具体的には「1075万円以上」が想定されているとのことです。
この年収要件については、そもそもの年収額が妥当かどうかの他、年収要件に含められる手当の範囲等、今後細かな点を含めて議論が続けられる見込みとなっています。

まとめ

高度プロフェッショナル制度の詳細については今後更なる調整を経ることになりますが、対象となる労働者は限定的となりそうです。 企業においては、制度の趣旨や対象範囲を正しく理解し、正しく運用できるよう準備を進める必要があります。

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