人は誰しも「死亡」のリスクがあります。現役の会社員が亡くなるというケースはそれほど多くは無いはずで、だからこそ、そのようなことがあった時に、会社としてどのようにするのか、押さえておく必要があります。
あまり起きてはほしくないですが、それは突然やってきます。
そんな時も慌てないように、社員が亡くなった時の会社の対応について解説をいたします。
1. 死亡はもちろん退職。通常社員と同様に退職の手続きを。
まず、「雇用保険被保険者資格喪失届」、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」の提出が必要になります。後者については健康保険証(被保険者分、被扶養者分)または健康保険被保険者証回収不能・滅失届を添付することになります。
社員が死亡となると、引継ぎや顧客対応に時間を取られて、こういった事務手続きがおろそかになりがちです。これらの届出について、雇用保険は死亡日翌日から10日、社会保険は5日以内に提出することになっておりますので、確実に提出するようにしてください。
住民税を給与から控除している場合は「特別徴収に係る給与所得異動届出書」を納付している市区町村に翌月10日までに提出します。
また、死亡者の年末調整を実施して、還付徴収を行う必要があります。「源泉徴収票」を遺族に渡してください。
2. 弔慰金規程、退職金規程に基づき、最後の金額を支給する。
弔慰金規程、退職金規程がある場合は、その内容に基づいて金額を支給します。弔慰金については、通常課税扱いにはなりません。(高額な場合は一部の金額が退職金扱いになることがあります。詳細は税理士や税務署へご確認ください。)
弔慰金を支給することは会社の義務ではありません。
しかし、その都度決めてしまうと、人に値段をつけているようで、気持ちの良いものではありません。そのため、結婚などの慶事も含めた慶弔金規程を早めに作ってしまうことをお勧めします。
また、生前分に発生している給与が一部でも未払いになっていれば、その給与を支給します。
締め日に亡くなったのでなければ、その給与は日割りにしても構いません。
3. 生前給与からの法定控除を忘れずに。
生前給与を支給する際には法定控除が発生しますので、ご注意ください。雇用保険料は支給した総額に対して、一般社員と同様に控除します。
また、社会保険料はあくまで前月末時点の在籍状況から、控除するかどうかが決まります。
つまり、当月分を翌月支給する会社で、月末より前に亡くなった場合は、社会保険料の控除の必要はありません。
月末以降に亡くなった場合は、支給日時点で亡くなっていたとしても、社会保険料が発生することになります。
所得税は支給日時点で控除するしないを判断します。
死亡後に支払われる給与は相続税の対象であり、所得税の対象とはなりません。
※死亡者の年末調整は9月15日の給与を最終給与として実行します。
なお、住民税は通常の退職者と同じく、異動届を作成する際に、一括控除するか、普通徴収に切り替えて遺族が納付するか、という選択となります。
考え方としては、給与は生前に発生したものに対して支給されるので、法定控除は通常通り行われるということになります。
所得税だけが、死亡することによって相続税に切り替わるので、あくまで給与からは控除不要になる(相続税として相続した側が支払う)、という解釈です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。社員の死亡時にも粛々と退職の手続きを行い、規程にのっとって支給金額を支給して、その金額から必要に応じて法定控除をしてください。
ここで慌ててしまうと、悲しみに明け暮れる遺族にも負担をかけてしまいます。
会社の方で慎重に処理を進めていくように心掛けてください。
ご質問はお気軽に各役所または社会保険労務士にお尋ねください。