先日、厚生労働省の労働政策審議会が、厚生労働大臣に対し、女性の職業生活における活躍の推進及び職場のハラスメント防止対策等の在り方について建議を行いました。
建議の中に、「カスハラ」が含まれていることが最近の特徴です。「カスハラ」とはカスタマーハラスメント、つまり顧客等からの著しい迷惑行為、別名クレーマーハラスメントのことです。おもてなしは日本の文化の一つですが、行き過ぎたおもてなしを求める一部の顧客に対しては毅然とした態度を取る必要があります。
以前は会社まかせだったのですが、さすがに看過できないレベルになってきたということでしょう。
今後、この「カスハラ」について、政府からも対策指針などが発表される見込みです。ぜひ今後のニュースに注目していただきたいと思います。
ここでは、カスハラに対して今から会社ができることについて、解説をいたします。
1. カスハラをする方に教育効果が見込めない
他のハラスメント対策と違うことは、ハラスメントを行う方が社外の人間であり、ハラスメントの教育を行うという対策が取れないことです。そのためカスハラを受ける側、つまり社員側が過剰な対応をしないことが重要になります。さらに言えば、このカスハラは比較的弱そうに見える女性や若者に集中する可能性が高いため、このような方ほど教育が必要になります。特に接客の前線に立っている、経験の少ない社員やアルバイトに、万一カスハラされた時に対応できるように教育できているか、今一度見直しください。
2. 基本は上長への報告
とは言っても、そのような方へ教育すべきことは他にもあり、カスハラの教育と言っても時間的な限界があります。基本的には、自分がカスハラを受けていると感じたら、迷わずに上長に報告するということを繰り返し伝えておくということになります。そのためには、ためらわずに報告できる人間関係を現場の社員・アルバイトと上長との間に構築しておくことが肝心になります。普段のコミュニケーションから、職場の問題点などを話し合う機会を多く設けてください。
3. お客様は神様でも、お客様の言葉は神様の言葉ではない
「お客様は神様です」というセリフは、今でも日本の職場に浸透しているように思えます。しかし、行き過ぎた要求をする客はもはやお客様ではありません。ところが、それが「正当な要求」なのか「クレーマーのクレーム」なのかの判断をその場で分別することはとても難しいことです。その要求に違和感を抱きながら、クレーマーであるという確証が持てないことがあります。自分の実力不足でお客様を怒らせてしまったという罪悪感が、結果的に過度な要求を呑んでしまうというケースも少なくありません。
そこでお勧めしたいのは「お客様は神様だけど、お客様の言葉は神様の言葉ではない」という教育です。つまり接客をしている客を分別するのではなく、発している言葉で切り分けるという考え方です。客をクレーマーとして断罪してしまう罪悪感から現場の社員・アルバイトを解放することで、上長へ報告を行うにあたっての心理的なハードルを低くしていきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。カスハラ対策は、現場の社員・アルバイトから考えてみてください。会社全体としては、現場の社員と対応する上長の連携がスムーズにできるようにマインドセットを心掛けましょう。日本の「おもてなし」は美徳であるはずなのに、結果的に日本を疲弊させる原因になってしまっているとしたら、そんなに悲しいことはありません。 間違った「おもてなし」を強要するカスハラモンスターには毅然とした態度を取ることで、おもてなし文化はよりいっそう成熟していくのではないでしょうか。
特定の激しいカスハラに悩む方は、警察や士業などと連携も検討してください。自分の会社や店舗を守るのは責任者の仕事です。カスハラ対策は、責任者が果たすべき重要な仕事の一つなのです。