働き方改革を背景に、副業・兼業の解禁に目を向ける企業が少しずつ増えています。厚生労働省のモデル就業規則上でも、従来は原則「副業・兼業禁止」だった記載が改められる等、変化が見られていますね!SHARES LABでも、既に副業・兼業に関わる記事をアップしています。
参考:SHARES LAB
■『副業・兼業容認へ!「副業・兼業の推進に関するガイドライン骨子(案)」が公開されました』
■『副業時代の到来に備え、ダブルワーク時の社会保険加入ルールを総復習』
これまでご紹介した内容は、「雇用する社員に対し、副業・兼業を認める場合の取り扱い」です。今号では、少し視点を変えて、会社が副業・兼業者(他社で本業に従事する人)を受け入れる際の労働時間管理のポイントについて解説することにしましょう。
- 勤怠管理の必要があるのは「本業・副業のどちらにおいても雇用関係にあり、なおかつ管理監督者以外の人」
- 「1日8時間、週40時間」の原則は、事業場や事業主が異なっても通算して適用する
- 副業・兼業者の労働時間管理のケース別対応
- まとめ
勤怠管理の必要があるのは「本業・副業のどちらにおいても雇用関係にあり、なおかつ管理監督者以外の人」
副業・兼業者を雇い入れるといっても、実際にはすべての労働者に対して勤怠管理に神経質になる必要はありません。本業との労働時間の通算、適切な割増賃金の支払い等が必要となる対象は、意外に限定的です。例えば、
・本業は正社員だが、個人事業主として副業を行う
といった場合には、健康管理の観点からの労働時間の適正把握は必要であるとはいえ、労働時間の通算やそれに伴う割増賃金の支払いが生じるわけではありません。
今号で解説するのは、上記の表で「○」となる、本業と副業・兼業いずれにおいても「雇用関係にある」「一般の会社員、アルバイトなど」に該当する例における労働時間の通算規定です。
「1日8時間、週40時間」の原則は、事業場や事業主が異なっても通算して適用する
労働基準法上、労働時間の原則は「1日8時間、週40時間」です。これを超える労働は時間外労働となり、割増賃金支払の対象となります。こうした労働時間に関わる規定は、事業場や事業主が異なる場合でも通算されることになっています。副業としての勤務を希望する労働者を御社で雇い入れる場合、御社が「後から労働契約を締結した使用者」となります。よって、労働者が法定労働時間を超えて労働することになった場合には、御社にて割増賃金を支払う必要が生じる、というわけです。
分かりやすいよう、具体例で考えてみましょう。本業(下記「甲事業場」)で月~金までフルタイムで勤務しており、御社(下記「乙事業場」)では土曜日に5時間だけの就業という場合、御社(乙事業場)での労働はすべて時間外労働の扱いとなり、割増賃金を支払わなくてはなりません。
副業・兼業者の労働時間管理のケース別対応
上記は「一週間」を基準とした例ですが、「後から労働契約を締結した使用者」に割増賃金支払が生じるケースは、1日単位でも同様に起こりえます。例えば、
①「本業で1日8時間、副業・兼業先で1日5時間」の労働契約を締結している場合
この場合、副業・兼業先での労働時間はすべて時間外扱いとなります。