新たな外国人労働者「特定技能」は従来の「技能実習生」とは別物です!
労務


我が国の少子高齢化による人手不足の解消への解決策のひとつとして、外国人材の活用が話題になっているところです。 皆さま方もメディアでセンセーショナルなニュースはよく耳にされるかと思いますが、情報が錯綜している感もあり。ここでちょっと整理してみたいと思います。

この記事の目次

1.外国人技能実習制度は本当にブラックなの?

よく耳にする「外国人技能実習生が失踪した!」というニュース。
あるいは、日本の企業で過酷な労働を強いられて可愛そうだ、というニュース。本当にこの制度はブラックなんですか?という質問をよくいただきます。 メディアではネガティブは報道ばかりされますが、母国に帰り活躍している若者を私は大勢知っています。

まず、最初に明確にしておかないといけないことがあります。現在、日本の国内に不法残留の外国人が6万人以上いるという法務省の統計。これは決して技能実習生が失踪した人数ではありません。不法残留いわゆるオーバーステイの外国人がなぜこんなに大勢いるか、というのはまた別の事情ですので、次の機会にお話します。

技能実習制度というのはけっこう昔から存在したのですが、一昨年法律が施行され、現在は独立した「技能実習法」のものに運用されています。技能実習法はひとつの労働法です。 この制度のもとに、主にアセアン諸国から実習生を招致し、日本の技術を指導し、彼らにも賃金を支払い、現場で働いてもらっています。外国の労働法を勉強してみると、意外なことに気が付きます。実はアセアンのある国には珍しい労働法があります。「自国民を外国に派遣して働かせるための法律」。直訳すればそのような名称です。

日本とは正反対に人口における若者比率が高いのです。ですので、その国も若者が外国で働くことを認めているわけです。決して我が国が無理矢理引っ張ってきているわけではありません。その国で認められた人材育成機関があり、外国へ送り出します。日本の企業は彼らを受け入れ技能を学んでもらうと同時に作業もしてもらっているわけです。 貨幣価値の差がありますから、気持ちよく働いて母国に戻って活躍してもらう、というのが制度趣旨です。

「技能実習法」は厳格な労働法です。受け入れている企業は主に「団体監理型」という制度を利用していますので、監理団体つまり協同組合のような機関に現地で求人をしてもらい人材を紹介してもらう、という採用法を徹底しています。そして、一度技能実習生として日本で勤務した外国人はもう再来日は出来ない制度です。なぜなら技術をアセアンに持ち帰ることが制度趣旨なわけですから、実習が終わったらさっさと帰国してもらいます。現在では1年、3年、5年の労働と決められています。

さて、アセアンに技術を持ち帰るというものの、また日本で働きたい、という声が少なからずあったのも確かです。そこで、今回の「新たな資格」が創設されました。

2.新たな在留資格「特定技能」について

昨年末、慌ただしく成立した新たな制度。名前は似ていますが、まったく技能実習制度とは別物です。
どこが別物って? 監理団体に紹介してもらう必要がなくなったのです。受け入れ先の企業にとっても協同組合に毎月の「監理費」を払う必要がなくなりました。でも、何をしてもいいわけではありません。
気を付けなければならないのか下記の3点。

①自由に採用できるようになった反面、危険も伴います。もし誰かに人材を紹介してもらうなら、労働局から許可を得た職業紹介事業者を利用しなければなりません。人材は当たり前ですが生身の人間です。モノではありませんので許可のない者が業として他人に「人」を紹介することは、手数料が有料無料に関わらず職業安定法違反となります。いわゆるブローカーのような者たちを跋扈させないことがこの制度の重要な注意点です。


②もう一点は、受け入れ企業もどんな会社でもいいわけではありません。「受入れ機関」として入管にノミネートしなければなりません。いくつかの要件はありますが、説明が長くなりますので詳細は次の機会にお伝えします。要は、外国人材を適切に雇用できるだけのリソースがあるか、ということです。まったく外国人を受け入れた経験のない企業では外国人労働者をサポートできないことが危惧されるからです。


③来日する外国人にも要件があり、技能と日本語能力の試験があります。ただし、以前に外国人技能実習生として日本で3年過ごした経験のあるいわゆる「卒業生」組の人たちはこのテストが免除されます。以上のことから「特定技能」がどんな外国人なのかイメージができると思います。考えられるケースとして、まず、元技能実習生だった人。もう一つが日本の大学で学ぶ外国人留学生で、ホワイトカラーとして就職するのではなく「技能」を持つ人材として日本の企業に「就職」するパターンです。



出典:法務省「新たな外国人受け入れについて」

3.この制度ほんとうに大丈夫なのか。

前述のとおり、「特定技能」の労働者を採用するためにはそれなりのリソースが必要です。外国人サポートをできる支援体制があるか、という点。技能実習生なら監理団体がお世話してくれていたのですが、この「支援」というスキームが見えず、自社で空港への出迎えやら通訳などできる企業なら問題ないでしょう。もしできなければ「登録支援機関」として入管に登録された法人・個人にこの「お世話」部分だけを外注する形となります。これが「特定技能支援計画」というものです。

自社で支援するか、外部機関に委託するか。どちらかの方法で「支援計画」がないと受け入れを認められません。 そしてもうひとつは「特定技能雇用契約」という外国人向けの「労働条件」と「在留資格」の両面に配慮した「契約書」を作成する必要があります。技能実習生のように1年間の雇用が約束されているわけではありませんので、きちんと雇用契約を交わさないと、日本にとってもアセアン諸国にとっても残念なことになります。

「支援計画」を所掌するのは入管。「雇用契約」を所掌するのは厚労省です。
すいぶんややこしい話になってしまいました。我が国の労働市場が今後どのような展開になるのか、誰もフタを開けてみないと分かりません。多様な人材が来てくれて賑やかで嬉しい反面、彼らに転職の自由があるということは、万が一、失業したらどうなるのか…と考えると恐ろしい面もあります。

「技能実習」と「特定技能」とは似て非なるものだとご理解いただけましたでしょうか?詳細はまた続きを書かせていただきます。

以下、CMのようで申し訳ないのですが、弊所では外国人材導入のご相談や支援も行っております。これから「国際労務」の専門家の存在が大きくなる時代だと思います。

参照:
■SHARES 社会保険労務士 吉澤佐代子のページ
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