社会保険料算定の基礎となる標準報酬月額については、被保険者資格取得時、算定基礎届による定時決定、そして固定的賃金に変動のあった場合の随時改定の各タイミングで検討されます。しかしながら、実務では日頃より、「こんな時はどうすれば良いか?」と判断に迷う場面も少なくないのではないでしょうか?
今号では、日本年金機構の資料をもとに、標準報酬月額の見直し時にありがちなQ&Aをご紹介することにしましょう。
出典:日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」
資格取得時決定:残業時間数について、雇入れ時の見込みと実際に相違があった場合
Q.保険者資格を取得した際の標準報酬月額の決定について、例えば残業代が当初の見込みよりも増減した場合に、標準報酬月額の訂正を行うことができるか。A.被保険者資格を取得した際の標準報酬月額については、固定的賃金の算定誤り等があった場合に訂正を行うことはできるが、残業代のような非固定的賃金について、その見込みが当初の算定額より増減した場合は、訂正することはできない。
《コメント》
資格取得時に届け出た報酬月額と実際の報酬とが大きく異なっていた場合、資格取得時にさかのぼって報酬月額の訂正を行うことができますが、これはあくまで基本給などの固定的賃金に誤りがあった場合の取扱いとなります。残業代は非固定的賃金のため、増減に伴う標準報酬月額の訂正はできません。
定時決定:算定月に給与締め日の変更があった場合
Q.給与の締め日が変更になった場合、変更月では支払基礎日数が通常の月よりも増減することになるが、定時決定の際にはどのように取り扱うべきか。A.給与締め日が変更になった場合は、以下のように取扱う。
①支払基礎日数が増加する場合
支払基礎日数が暦日を超えて増加した場合、通常受ける報酬以外の報酬を受けることとなるため、超過分の報酬を除外した上で、その他 月の報酬との平均を算出し、標準報酬月額を保険者算定する。
②支払基礎日数が減少した場合
給与締め日の変更によって給与支給日数が減少した場合であっても、支払基礎日数が17日以上であれば、通常の定時決定の方法によって標準報酬月額を算定する。
給与締め日の変更によって給与支給日数が減少し、支払基礎日数が 17 日未満となった場合には、その月を除外した上で報酬の平均を算出し、標準報酬月額を算定する。
《コメント》
下記の通り給与締め日、支払い日が変更された場合を例に、具体的に考えてみましょう。
Before
15日締め(給与計算期間は前月16日~当月15日)、当月25日払い
After
月末締め(給与計算期間は当月1日~当月末日)、翌月25日払い
※5月1日より変更
4月25日支払分(3月16日~4月15日分)
5月25日支払分(4月16日~4月30日分)←この部分の給与計算期間が「15日間」
6月25日支払分(5月1日~5月31日分)
この場合、給与計算期間が17日間未満となる5月25日支払分の賃金を加味せず、4月25日と6月25日支払分の2ヵ月の賃金の平均から標準報酬月額を算出します(アンサーの②のパターンの例示です)
随時決定:時給制で契約時間に変更があった場合
Q.基本給(時間給)に変更は無いが、勤務体系(契約時間)が変更になる場合、随時改定の対象となるか。(例)
基本給:1時間 2000円 → 2000円(変更なし)
契約時間 :1日8時間 → 6.5時間(変更あり)
:一ヵ月 20日 → 20日(変更なし)
A.時給単価の変動はないが、契約時間が変わった場合、固定的賃金の変動に該当するため、随時改定の対象となる。
《コメント》
契約時間の変更に伴い、一ヵ月に支給される賃金総額に2等級以上の差が生じる場合には
随時改定の手続きが必要となります。